淫獣聖戦 偽典 「繭地獄」 17

 その頃、鬼麿と麻衣の交歓は未だ続いていた。麻衣はいいところまで高まるのだが、未だ絶頂を迎えていなかった。これは、経験が浅いこともあり、それほど不自然ではない。ただ鬼麿が果てないことは、麻衣の具合の良さを鑑みれば、その持続力は驚異的に思える。しかし、実はそうではなかった。
 鬼麿は、苛まれていた。麻衣の淫裂は、感触と言い、締め付けと言い極上の一品で、鬼麿は何度も高みに押し上げられていた。しかし、精を放つ寸前に逸物の根が強烈に締め上げられ、爆ぜるに爆ぜられず、むなしく空腰を使っていた。初めはそれが、麻衣の女淫の喰い締めかと思ったが、実は葛太夫に填められた金色の環、緊箍によるものだと分かった。
 なんてことしてくれるんだ。鬼麿は麻衣とのお膳立てをして貰ったことも忘れ、太夫を恨んだ。麻衣がまぐあいで次々と快感を送り込んでくるのに、最終的に果てられないもどかしさは筆舌に尽くせず狂わんばかりだ。何とかしようにも、後ろ手に縛られ、口を塞がれた状態では、そのことを麻衣にすら伝えられない。しかも、麻衣は谷崎美和を殺すと言われ、行為をやめられない。麻衣は、高まっているように見える鬼麿が、一向に射精しないことを不審に思いながら、それは自分がなにかしら未熟な所為だと判じていた。その真の理由が緊箍に有るなど思い付かない。そのとき、鬼麿が小刻みに腰を痙攣させた。
「ああっ。んふぅ」
 ようやく来たと思った。麻衣は素早く腰を大きく浮かし、蜜壺から鬼麿自身を抜きはなつ。しかし、鬼麿はまたしても精を放つことはなかった。
「むぅーーーっ」
 鬼麿は麻衣が離れたことで、支えを失い平臥してしまう。それでも力を失わず、天を突く屹立が麻衣の眼に頼もしく映った。いずれにしても、ここでやめるわけにはいかない。麻衣は意を決して、立ち上がると鬼麿を跨いだ。ゆっくりと腰を下ろし、切っ先を濡洞に突きつけた。
「んっああぁーーっ」
 鳥肌が立った。それ程甘美だった。向きが変わったのか別のところに当たる。
「ふぅーーっ。んっーふぁ。あふっ」
 麻衣は大きく開脚して、腰を上下させていた。とろんと半開きで、だらしなく開いた唇を、しきりに舌が舐めまくる。肉欲にまみれ、正気を失っている。
「大きい。奥に当たるのぅ。んぁーっ」
 余りの気持ちよさに、脚の力が抜け、鬼麿の上に重なり伏した。それでも、麻衣はようやく掴んだ、この切っ掛けを離すまいと、肩で鬼麿の胸を押しつつ、腰を蠢かす。それは既に性技に長けた熟女のような腰つきで、浅ましく淫らに動かぬ男根を貪るようだった。
「んっーふぁ。あっーふぁ。気持ちいいぃーひ。あーはぁん」
 喘ぎと共に、腰の回転数が上がっていく。
「あっ、あっ、んっあ、いや、だめになっちゃう。いや。だめ」
 そのとき沈黙を守っていた、鬼麿が身動ぐように腰を突き上げた。
「いや、だぁ・・・だめ。ああ。あっあ。イクっ。イクぅーーんっ」
 麻衣は一際高く叫ぶと、精を受けられぬ、物足りなさを訴えるように、肉壺をきゅっと締めつけ、そして失神した。

「ううぅん」
 亜衣は気が付くと、桂に体を持ち上げられていた。既に結合は解けていたが、未だ全身が気怠い。さきほどの余韻が醒めやらず、まだ躯の芯で熾火が燻っていた。頭はまだ白く濁ったようで、今ですら夢なのか現(うつつ)なのか判然としない。
 すごくよかった。あれが、真のセックスなんだわ。
 亜衣は自分の性の概念が、根底から覆された気がした。今まで、性交はあくまでも子供を作るための行為で、結婚して愛し合った男女が合意の上で行う神聖なもの、そう思い続けてきた。
 その金科玉条を破ったのは、桂との交合でもたらされた、快感と幸福感の衝撃波だ。快感は、強制オナニーでも得られた。しかし、あの気持ちよさは別物だ。なぜ、あんなに気持ちいい必要があるのだろう。別に何も感じる必要が無いではないか。神が男女の営みに快感を付加したのは、もっと積極的な理由、子孫という結果を得るための原因ではなく、行為自体が賛美され推奨されるものではないのか。
 さらに問題は幸福感だ。愛の無いセックスでは、幸福感は得られない。だから如何に気持ちよくてもだめなのだ。そう思っていたのに、陶酔するほどの満足感。これは幸福感ではないのか?今まで、男という存在を忌避していた自分は間違っていた。それがこの桂という男によって、反証されてしまった。亜衣は感謝すら込めて、桂を抱きしめた。
「ふっ」
 桂は片方の口角をやや引き上げ、酷薄そうな笑みを浮かべつつ、亜衣のやや柑橘系が混じった甘い匂いの源、首筋を舐め上げる。
「はぅ・・・っ」
 躯を支える手が触れている脇腹すら、ちりちりと愉悦を巻き起こす。全身が凡て性感帯となっている。どこを触られても心地よく、亜衣の惑乱に拍車が掛かる。
「亜衣。どうやら先程のまぐわいで、アクメの高みを垣間見たようだが。あのような技はまだまだ序の口に過ぎぬ。本当の絶頂と言うものを知りたくはないか」
 もっと気持ちいいことがあるの?その余りの危やうさに、脳は肯定の言の葉を紡がなかったが、既に馴らされた肉体は持ち主を裏切って首肯していた。
「教えて欲しくば、口上を述べよ」
 亜衣は数秒の葛藤の末。肉体に従うことにした。
「桂先生。どうか、最高の絶頂を亜衣に教えて下さい。お願いします」
 亜衣はおもねるように、上目遣いに見ながら、乳首を桂の胸に擦り付ける。
「ふふふ。よかろう。あちらを向いて、四つん這いになれ」
「はい」
 それがどんな屈辱的な体勢か分からぬ亜衣ではなかったが、もはや逆らうことなど思いもよらず。素直に体を入れ替える。
「頭を下げて、尻を上げろ」
 流石に花園の凡てをあからさまにする姿勢に、身を捩りながら、しかし従順に上体を伏せた。
「なんだ、どろどろだな」
「ひっ。いやぁ・・・っ」
「このままでは入れる気にならんな。拭いてやろう」
 亜衣は、屈辱と羞恥に身を震わせながら、来るべきもののために耐える。
「すみません」
 紅潮させた顔を、がっくりとうなだれる。桂は、自らが吐き出した、白濁と亜衣の蜜を手拭いで拭いてゆく。
「はう」
「おとなしくしろ」
 ばしっと尻を叩かれる。ひっ、悲鳴を漏らしてまう。桂は、淫唇に指をかけ無造作に開いた。蜜壺に指ごと手拭いを差し込み、半周捻る。亜衣は下唇を噛んで耐えた。手拭いを外すと、一瞬むき出しの蜜壺が見える。隠す飾り毛が無く充血した鮮紅色がとても綺麗なのだが、まもなくじゅくじゅくと蜜で濡らし始めた。
「いくら拭っても、キリがないな」
「あっ・・・」
 淫裂を一気に舐め上げられた。
「あぅ・・・いやぁ。あっあっ」
 前膣庭を数周嘗め回すと、尖らした舌を蜜壺に突き立てる。長い舌を、軽く出し入れされると、頭がかき回されるような錯覚を憶え、前から回された指でクリトリスを挟まれると稲妻が走る。
「あっあん、だめぇ」
 甘く爛れたよがり声を上げて、イキ癖が付いたのか、これだけのことで軽く達してしまう。
「これしきで、アクメに達するとは、先が思いやられるぞ」
 どっと蜜を吐いて、しとどに濡らしてしまう。
「あっ。いや。そ、そこは」
 桂の指が、菊門に達したのだ。両手で雄大な臀たぼを広げ、肛門をあからさまにする。ふっーー。息を吹きかけられると、びくびくと痙攣してしまう。
「ここを使ったことがあるのか」
 亜衣は、ぶんぶんと首を振る。それは、亜衣にとって一番知られたくないことだった。
「あぁ・・・あ」
 桂は、ねぶった指を突き立てる。捻るように力を加えると、第二関節まで吸い込まれた。
「いやぁ。お尻は、お尻は。変になる」
「この締め付け、使い慣れては居ないものの、初めてではないようだが」
 そう言われた亜衣は、数ヶ月前の光景を思い出した。そのまま桂は、螺旋状に指を使う。
「ひぃーーー」
「それそれ、ケツの穴を使ったことがあるだろう。正直に答えねば、邪鬼に下げ渡すぞ」 亜衣は周章狼狽した。
「う、ウナギのような魚に」
「魚?」
 亜衣は、恥ずかしさで涙を流しながら頷く。
「ああ、ホト魚か。どうであった」
 亜衣は、カーマ達に水攻めに遭わされたのが、よほど嫌だったのか、首を打ち振る。
「くっ、苦しいだけで、憶えてません。お願いです、指を、指を抜いて下さい」
「だめだ、尻を攻めると連動して、淫裂が締まる。味合わせて貰うぞ」
「あひぃ・・・っ」
 背後から一気に蜜壺を貫かれた。にっちゃ、んっちゅとぬかるんだ音と共に、亜衣の熟れ頃を迎えた砲弾型の豊胸が震える。桂は脇から片手を回し、手に余る乳房を揉みしだく。
「はぁ・・・ふぁんぁあ」
 亜衣は下ろした髪を振り乱して、快感に溺れる。小粒の苺のような乳首を扱かれると、悲鳴混じりの嬌声を吹き溢す。そのときだった。
「お尻だめえ。ぁあっあっ・・・はゃあいやあ」
 腰に合わせて、菊門に突き立てた指をピストンさせる。亜衣は、苦しさが燃える快感とも呼べない官能に還元され、何がなんだか分からなくなり、痙攣しつつ尻たぼを締める。「ふふふ。ここの味も憶えたようだな。流石は優等生」
 桂の嘲りも、もはやまともに反応できず、はあはあと肩で息をしながら、全身を桃色に染め上げてゆく。躯は玉の汗を浮かべて、滑光り出した。桂は亜衣の反応の良さに気を良くすると、腰を揮う。堅かったアヌスもぷっくりと膨らみ、指を難なく飲み込む。
「頃合いだな」
「ああぁん」
 腰を止め、雄根を引き抜かれた亜衣は、物足りなさで媚びた声を出して誘わずにはいられない。
「あっ、そこは、違う。だめよ・・・いやっ・・・痛いの。ひぃぃーーーっ」
 桂は、愛液に十分濡れた屹立を菊穴にねじ込こもうとしたのだ。流石にきつく、指のようには行かない。
「息を吐け。息を吐くんだ」
 桂の怒声に脅され、嫌々ながら遵う。未だきついものの、十分ほぐされていた括約筋は、徐々に亀頭部を飲み込み始める。そこでぐっと桂が押し込んだことで、カリが通り抜けた。関門を過ぎたのか、ずっ、ずずっとあとは陰茎がめり込んでいく。
「あぁぁぁぁ」
 亜衣はすすり泣きをはじめた。
「おおお。凄い締まりだな。食い千切られそうだ。業も強ければ、ここも堅いな」
 完全に押し込んだ桂が感嘆した。若く、柔軟性も有ったのか、裂けることもなく、桂のモノを飲んでいる。
「あぁ。抜いてぇ、抜いて下さい」
 亜衣は暗澹たる気持ちになっていた。前の穴で失神するほどの快感を覚え込まされ、後門さえ貫かれてしまった。まるで獣だわ。後ろから犯されて、自分はと女々しく泣くしかできない。今まで男にも遅れを取ったことない亜衣は、被征服者として、その存在意義すら揺らいできたように思え、嘘寒さに身震いした。それに、今は無理矢理の拡張感で、ただただ苦しさに苛まれてはいるのだが、何となく、その先が有るような、そこに手が届いてしまう気がするのだ。
 その予感が、実感に変わる時が来た。あきらめにも似た諦観が、幸か不幸か緊張していた躯からやや力を抜いたのだ。このときを待っていた桂は、ゆったりと抜き始めた。カリが腸壁をこそぎ落としてゆく。圧迫感から解放されるだけでなく、ぞくぞくと異様な感覚の奔流が背筋を走り抜ける。
「うっ」
 再び突き入れられると、それが再び苦しみに変わる。抜き差しされるにしたがって、氷を抱いて熱湯に入るような、背反する感覚が亜衣を惑乱させる。そして、桂が胸を掴んだ瞬間だった。
「あひぃーーーっ」
 脳に圧縮充満した痛苦が、一気に昇華して凄まじい快感に切り替わった。亜衣は自分がどうなった分からなかった。一瞬で後頭部を強打したようなショックと共に、躯が炎に焼き尽くされた。一〇秒程で頂点は過ぎ去ったが、亜衣はトロンとした表情で、どっと汗を吹き出した。
「あぁぁあ。あっはぁふあ」
 忘れていたように、呼吸を取り戻す。
「どうだ、亜衣。これがアナル・コイタスの絶頂だ」
 グイと髪の毛を掴んで、顔を向けさせる。
「よかったか?」
「ふあ、はっ、はい。馬鹿に、頭がおかしくなっちゃう」
 亜衣は、涎をだらだらと垂らし、白痴になった如く蕩けきった笑みを湛えている。
「まだまだ、これからだ。我はまだ果てておらぬ、続けるぞ」
「あふぅ・・・あっあっひぅ」
 大きく張り出した臀部を両の手で掴むと、先程に倍する速度で抉り込んでいく。亜衣はこの先にまだ未知の高みが有ると言われ、信じられない思いだったが、麻薬を使われたように喉がひりつき、心底からそれを渇望していた。
「はふ、はあぁっはあぁん」
 亜衣は着実に尻の良さを、躯に刻み込まれていった。
「ま、また、お尻で、嫌なのに、お尻がイイのぅ。い・・・イクっ、ひぃーー」
 ヴァギナは徐々に高まり、絶頂が長く後を引く。アナルは苦しさから一瞬で振り切ったように絶頂に達し、あっと言う間に醒めてゆく。例えるとすれば、薪が燃えるのと、ガス爆発の差だ。より純粋な酸化現象なのかも知れない。度重なるアクメで、やや括約筋が広がってきたのを感じ取った桂はほくそ笑んだ。
「はぅ」
 亜衣は、尻に刺さった肉棒が一回り大きくなったように思えた。実は・・・。
「ああ、前もなんて。こすれちゃう、あぁ、だめ、き、気持ちいい」
 指だろう、潤み切った蜜壺にもじゅぼじゅぼと、ピストンされる。亜衣は、自ら誘うように、腰を動かす。張りつめた乳房が揺れ、乳首が床を這う。毛穴が開ききりながら、それで居て鳥肌が立つ。交感神経すら混乱しているのだ。
「くぅ・・・」
 腕が後ろに引っ張られ、両胸が根本から括られ、尖りきった乳首が摘まれていた。もちろん膣にも刺さっているのだから、いくら何でも。そう攻められている箇所が多すぎるのだ。しかし、既に正気からはほど遠い亜衣には、何の違和感も感じられなかった。が、そこには、桂の姿はなかった。いつしか攻め手の身体は緑に輝き、何本もの触手が、うねうねと亜衣の全身にまとわりついていた。
 葛太夫は、人間離れした腰使いで菊門を犯しながら、指触手を三本、代わる代わる蜜壺に突き入れては引き抜く、もう片方の指触手は、両胸に螺旋状に巻き付き蠕動しながら絞り上げる。髪触手はツボとも言うべき、乳首と、陰核に巻き付くのは言うに及ばず、皮膚のあらゆる部分をスリスリとさする。そして数十の触手がお互いに巻き付き合うと、そこにもう一本の男根を象った。亜衣のだらしなく、やや開いた唇をこじ開け、喉に進入する。
 ここに至って、亜衣はようやく眼を見開き、凡てを理解した。今、自分を犯しているのは、人間ではないと。
 亜衣は狂いたかった。そうなればどんなに楽だろう。しかし、もう後戻りはできなかった、何でも良い。尻を抉ってもらえるのなら。
「おごっむぐ」
 死ぬ。亜衣はイキ続けて、そう思った。躯は泥のように疲れているが、素晴らしくもおぞましい、これまでに無かった快感が、いまだ意識をこの世に留めていた。
「いくぞ」
 さらに、太夫はさらにピッチを上げる。亜衣は全身を得も言えぬうねりに、揺るがせられながら、白目を剥いた。地獄の劫火だった。息も吐けぬ程苦しいが、完全に躯が融けるほどのアクメが荒れ狂う高波のように打ち寄せる。
「ぬぅーーー」
「ぐっ・・・むぅーーー」
 太夫が大きく腰を突き入れた時、亜衣は最大限に眼を見開くと背中を一際反らせ、喉を突き上げた。ぶるぶると全身を痙攣させ、天に昇るように伸び上がる。
 そのとき、亜衣の菊門も、膣もこれまでになく締め上げれられていた。葛太夫は堪らず、したたかに精を放った。どくどくと腸内に流れ込み、それで足らず尻たぼを白く塗りつぶした。亜衣はひゅーぅと喉を鳴らしたかと思うと、そのまま、ばたっと床に横倒しとなった。



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