淫獣聖戦後伝・羽衣淫舞(8)

 山深い分祠の周囲に夜明けが訪れようとしていた。
 闇が溶け、空気が黒から灰色に変わり、山々に色彩が戻ってくる。
 それでも東の尾根から太陽が顔を覗かせるまでにはまだ数時間あろう。
 「んう・・・はう・・・」
 天津亜衣のくぐもった喘ぎが漏れていた。
 身に纏っていた羽衣軍神の衣をすべて剥ぎ取られ、均整の取れた裸体を夜明け前の薄明に晒して、美しい眉を切なげに寄せ、触手への口唇奉仕を続けている。
 亜衣の前、数歩のところに、妹の天津麻衣が倒れていた。斎藤孝明に犯され、触手に嬲られて悶え狂い、気を失ったのだ。

 「クックックッ、麻衣は気を失ったか。」
 背中に、蒼草法師の声がする。地獄の底から湧いてきたような不気味な声だ。平常の精神状態であれば、それは「悪寒」というべきものなのだが、淫ら草の淫毒が全身に回っている亜衣の肌に、その波動が触れると、ビリビリと体中に快感が走る。
 口の中で小さな舌に絡んでくる触手の感触もまた、亜衣の悦楽を増幅させていた。
 (舌が・・・こんなに・・・感じるなんて・・・)
 それは先刻、孝明の舌を挿し込まれた時にも感じたことだった。
 唇や舌が、敏感な性感帯であることを、亜衣は初めて思い知らされたのである。
 「ふふっ、いい眺めよのう」
 蒼草法師は触手を自在に操りながら、亜衣の裸体を見下ろしている。
 触手の位置が、少しずつ前へ、下へと移動していることに、亜衣は気づいていない。
 口に「押しこまれた」としか認識していないのだ。
 しかし実は触手を追いかけるように上体を徐々に前屈みにしているのだ。
 左右に大きく開いた両脚はピンと真っ直ぐに伸び、形のよい球形の尻を突き出すように上げて、白い背筋は今や上を向き、上体が地面に平行になっている。
 蒼草法師はゆっくりと、亜衣の体勢をそのままに持ち上げていく。
 「チュプ・・・チュパ・・・クチュ・・・」
 夢中で触手をしゃぶっている亜衣は、自らの大切な部分を蒼草法師の眼前に晒していることにも気づかなかった。
 「くくくっ」
 蒼草法師は笑いを忍ばせ、大きく醜い口から赤い舌を出し、それを亜衣のホトに伸ばしていく。
 「んっ・・・はううっ・・・!」
 蒼草法師の舌先が、濡れそぼった蜜壺に触れた。亜衣は思わず触手から口を離し、上体をのけぞらせて喘いだ。
 (しまっ・・・た・・・)
 初めて今の自分の姿勢に気づいて戦慄した亜衣だったが、すでに遅い。
 「やめ・・・ああっ!」
 細くすぼめた舌先が、亜衣の柔襞を押し分けてホトに侵入する。
 押し寄せる激しい快感に、一瞬呼吸ができなくなる。
 「かはっ・・・ぐっ・・・あはあっ・・・」
 喘ぎが甘い悲鳴に変わっていく。
 (ああっ・・・だっ・・・だめ・・・)
 淫魔の舌先で膣の奥まで嬲られて、意識が遠のきそうになる。
 ときどき瞼の裏が真っ白な光に包まれる。
 (うくっ・・・?)
 不意に顎を掴まれて、亜衣は反射的に目を開けた。
 目の前に、孝明の顔があった。
 (孝明さん・・・!)
 孝明の瞳は爛々と情欲をたたえて妖しく輝いている。
 その顔が素早く近づいて、亜衣の唇を奪う。
 「うぐ・・・んんっ」
 もう亜衣にも抵抗する力は残っていなかった。すぐに舌が入ってきて、亜衣の舌に絡みつく。
 亜衣の清廉な肢体に二つの舌が挿し込まれ、蠢動する。
 (あふ・・・)
 下に張り出した乳房を孝明の両手が包みこむ。
 麻衣よりも少し大きい胸の膨らみの豊かで柔らかな量感を愉しむように孝明の手が揉みしだく。
 (んああっ・・・!)
 指先が固くしこった乳首に触れると、気が遠くなる。
 (・・・か・・・感じてはだめっ・・・)
 息が苦しく、乾きそうになる喉を、孝明の唾液が濡らしていく。
 「ぐははは、溢れてくる、溢れてくるわ」
 トクットクッと溢れ出る亜衣の愛蜜を蒼草法師がすすった。
 その恥辱が、倒錯の快楽に変わり、亜衣の精神を壊していく。
 (んはっ・・・でも・・・気持ち・・・いい・・・)
 孝明の濃厚な口づけを受けている口元から溢れ出た唾液が一筋、亜衣の顎から首筋につたった。
 「ピチャ・・・」
 孝明が唇を離し、唾液にまみれた口を手で拭う。
 冷たく、満足げな笑みを浮かべている。
 蒼草法師もまた、亜衣のホトから舌を離した。熱く蕩けた秘裂は、プチュ、と卑猥な音を立てる。
 亜衣の体がゆっくりと下降し、両脚が地面についた。
 姿勢は先ほどと変わらない。腰を直角に折って前に屈んだ体勢である。
 亜衣から見ると、目の前にある孝明の体が地面とともにせり上がってきたように感じられる。
 平衡感覚が失われているためだ。
 男らしい胸板、引き締まった腹筋、そして黒々とした陰毛から、邪悪な朱に染まった男根が猛々しく立ち上がっている。
 「ハア、ハア、ハア・・・」
 肩で息をしながら、亜衣は淫魔にされるがままになっていた。もう抵抗するだけの気力も体力も残っていない。
 惨めな敗北感さえも今は実感できずにいた。
 今はただ、燃え立つようなホトの火照りを持て余しているだけだった。
 (あん・・・)
 そのホトの入口に、また何かヌルリとしたものを押し当てられて、亜衣の腰がピクンッ、と震えた。
 濡れた秘襞が押し広げられ、何かが入ってくる。
 (あは・・・ぐはっ・・・)
 また一瞬、息が止まる。
 (ふ・・・太い・・・)
 微かな痛みとともに、膣を押し広げながら何か太くて熱くて固いものが亜衣の体に押し込まれていく。
 「うあっ・・・」
 ズンッ、と重い圧力とともに、それは亜衣の体の奥深くに達し、子宮を突いた。
 (な・・・ま、まさかっ・・・!)
 それが、蒼草法師のたぎりきった陰茎であることに、ようやく亜衣は気がついた。
 「うぐっ・・・や・・・やめ・・・て・・・」
 微かな痛みと、それを打ち消して余りある快感とが、大きな波となって亜衣を襲った。
 (犯されてる・・・淫魔に・・・)
 絶望に支配されて、亜衣の思考が止まる。
 「ぐひひひっ」
 この世のものではない濁った笑い声が響いた。亜衣のホトに自らの男根を深く埋め込んだ蒼草法師の歓喜の笑い声であった。
 ズンッ、という衝撃がもう一度、亜衣の体を貫く。
 「んあああっ・・・あっ、ひああっ・・・」
 続けざまに、二度三度と突き上げられる。亜衣の豊かな乳房が揺れた。
 (うくっ・・・す・・・すご・・・い・・・)
 蒼草法師は亜衣の背後で容赦なく腰を振り、力強い抽送を繰り返す。
 「んあっ、ああっ、ふあっ、んくぁ・・・」
 亜衣の甘い喘ぎは、すすり泣くような声音に変わっていた。
 淫魔が突き上げるリズミカルな衝撃に合わせて、自然に腰が動いてしまう。
 頭の後ろで束ねた長い髪が掴まれた。すぐ前にいる孝明の手だ。
 グイッと引き寄せられる。
 (ああ・・・)
 固くいきり立った熱い肉塊が唇に触れる。
 さっきまで麻衣を犯していた、孝明の男根だった。
 その形状に似せた触手をさんざん舐めさせられていた亜衣には、嫌悪やためらいを感じる余裕もなくなっている。
 「はぐっ」
 力無く開いた唇の間に押し入れられる。
 長い髪を引っ張られた痛みに震え、亜衣は素直に舌を使う。
 (ふああっ・・・)
 頭の中がクラクラする。生臭い匂いが立ち昇ってきて、気が遠くなる。
 カリに沿って舌を這わせると、口の中でそれは別の生き物のようにビクビクと震え、固さを増していく。
 (ああ・・・もう・・・)
 目の前が真っ白になる。快楽が激しくなり、太腿がガクガクと震え出す。
 「んぐ・・・はうっ・・・あっ・・・んーーーっ!」
 それは亜衣が初めて体験する激しい絶頂であった。
 全身の筋肉が硬直する。体のいろいろな部分で細かい痙攣が起こる。
 空中に投げ出されたような、不安な瞬間の後、急速に脱力感が広がる。
 「ぐっふっふっ」
 「ふふっ」
 淫魔とその手下と化した男は、小さく笑い、亜衣の体を解放した。
 二人とも、その精を放つことなく美姉妹を昇天に導いたことを誇るような気配だ。
 亜衣は崩れるように地面に裸体を横たえた。
 かろうじて気絶しなかったのがせめてもの救いだったが、まだ続けられるであろう陵辱に耐えていく自信は失われていた。
 こうして横たわっていても、下半身はビクビクと疼いているのだ。
 ときどき揺り返しのような快感の渦が戻ってきて、亜衣の引き締まった腹部の筋肉を波立たせ、痙攣する。
 (うっ・・・?)
 その時、亜衣は口の中に何かが残されているのに気がついた。
 舌の上でその形を認識する。
 (これは・・・!)
 亜衣の闘う心が、小さな灯火を見出した。
 淫ら草の淫毒の効力も、亜衣が絶頂を感じたことによって弱まっているのかもしれない。
 (邪悪隠滅・・・邪悪隠滅・・・)
 自らを奮い立たせるように呪文を唱える。
 脱力しきっていた亜衣の体に、女戦士としての力がゆっくりわずかずつ甦っていく。
 孝明が近づいてくる気配を感じながらも、亜衣は精神を集中して力の復活を念じ続けていた。
 (邪悪隠滅・・・邪悪隠滅・・・もう少し・・・)
 まだ今は早い。亜衣は失神したふりを続けて、全身の力を抜いた。
 孝明が膝をつき、亜衣の肩を乱暴に掴んだ。
 グッと引っ張られる。亜衣は仰向けにされた。
 「くふふふ」
 足首が掴まれ、両脚が広げられる。
 その間に、孝明が腰を分け入れてくる。
 (くっ・・・)
 反撃に転じるタイミングは、おそらく一瞬しかない。
 蒼草法師に飛びかかって、これを吐きかければ、形勢を逆転させるきっかけが掴めるはず、と亜衣は確信していた。
 亜衣の口の中に残されたもの、それはおそらく孝明の男根に付着していたのだろう。
 妹の麻衣の体内にあったはずの梅の花弁の護符であった。
 祖母・幻舟によって作られたこの護符には、天神子守衆の祈祷が籠められ、これまで幾度となく姉妹の貞操を守ってくれた不思議な力が宿っている。
 今はもう、この一枚の花弁だけが、天津姉妹に残された最後の切り札であった。
 亜衣は全身の力を抜いて隙を作り、敵を油断させながら蒼草法師の気配との間合いを測っているのだ。
 (あと一歩・・・)
 蒼草法師の気配が近づいてくる。
 亜衣が残された体力を使って敏速に移動できる距離まで、おそらくあと一歩。
 だが、蒼草法師はそこで立ち止まった。
 (待つしかない・・・)
 そう思いながら、再び体力回復のための精神集中に戻る。
 (あくっ!)
 思わず声が漏れそうになった。
 孝明の男根が、亜衣のホトに押し当てられるや、すぐに突き入れられたのだ。
 ジュプッ、と音がして、亜衣の体はそれをたやすく受け入れた。
 (はううっ・・・)
 亜衣の蜜壺の奥は、まだ充分に絶頂の余韻を残している。
 孝明は亜衣の腰を両手を押さえ、腰を深く沈めた。
 (人間の男に・・・!)
 カーマといい、蒼草法師といい、亜衣を犯したのは淫魔だけだった。
 異性との交わりといっても人間の性戯ではないことが、亜衣の天神子守衆当主としての誇りだったのだが、その誇りさえも突き崩されてしまった。
 (こいつ・・・)
 由緒正しい神社の宮司の跡取りとして生まれながら、蒼草法師の忠実な手下と化した孝明に憤りを覚えた。いかに操られているとはいえ、妹の麻衣に続いて亜衣にまで、本能のままに凶棒を突き入れて、その快楽に浸っているのだ。
 (でも今は・・・)
 反撃の機会にはまだ早かった。気を失ったふりをしなければ、すぐにでも両手足が拘束され、再び淫らな地獄に堕ちてしまう・・・。
 (は・・・はあう・・・)
 亀頭の先が、ごりごりと亜衣の内壁をこすりあげる。
 孝明が腰を入れるたびに、彼の下腹部の剛毛がジョリジョリと亜衣の若芽を刺激した。
 (まだ毒が残ってる・・・)
 普通の人間の男に挿入されたくらいで心の乱れる自分ではない、と亜衣は思っている。
 だからこの甘美な快感は、淫毒によるものに違いない、と思う。いや、思いたいのだ。
 それはしかし、精神集中を乱されていることへの言いわけにすぎない。
 (ああ・・・また・・・)
 体の奥から、愛の蜜が溢れてくる。
 頭の中に痺れが走り、思考が混濁してしまう。
 それにしても失神している女を犯すとは。
 (なんて奴っ・・・)
 孝明に対する憎しみが湧いてくる。
 その整った鼻筋に正拳を叩き込んでやりたい、とさえ思うのだが、その闘志も徐々に奪われていく。
 (ううっ・・・あはあっ・・・!)
 淫らに乱れようとする心と、対抗し押し戻そうとする心が激しく葛藤する。
 (ああ・・・だって・・・)
 気持ちいい。
 我慢をやめて、喘ぎ声をあげ、孝明の動きに合わせて腰を振ったら、もっと大きな快楽が得られるはずなのだ。
 (んああっ、だ・・・だめっ・・・!)
 孝明が腰を突き上げながら、上体を屈めて亜衣の胸に舌を這わせる。
 突かれるたびに揺れる乳房の頂きに吸いつき、再び固くなった乳首を口に含んだ。
 (ああ・・・いやあ・・・)
 亜衣の脳裏にあるトラウマが駆け抜ける。
 処女を散らされたあの時・・・、カーマもこうやって腰を振り立てながら亜衣の乳首を舌で責めた。そして・・・。
 (くっ・・・ふああっ・・・)
 孝明はあの時のカーマと同じように乳首に歯を立てた。
 痛みが痺れになり、痺れが快感となって子宮に響く。
 (ああ・・・だめえ・・・)
 悩乱し、鍛えこまれた美体を快感に震わせる亜衣の瞳から、涙がこぼれた。
 悔し涙は卑劣な淫魔に対するものか、それとも悦楽に負けそうになっている自分へのものなのか。
 孝明の律動に身をまかせ、自らも腰を動かしてしまっている亜衣に、蒼草法師の気配が近づいてくる。
 (今だ・・・)
 好機到来、とわかってはいる。なのに、体が動かない。
 今、咄嗟に上体を動かせば乳首が噛み切られるかもしれない、というのもまた、この快楽を続けるための言いわけにすぎないことに、亜衣自身も気づいていなかった。
 「ふんっ、小癪な。気を失ったふりなどせず、快楽におのが身を委ねてみよ。」
 蒼草法師が上の方から亜衣を見下して言った。
 (気づかれてた・・・?)
 もう猶予はならなかった。たとえ乳首を噛み切られても。
 亜衣の筋肉が躍動に向けて力を溜めた。
 「バシッ!」
 亜衣が反撃に移ろうとしたその刹那、亜衣は頬を強く張られた。
 (きゃうっ!)
 脳震とうを起こすほどの衝撃と、頬の痛みに耐えきれず、目を開ける。
 (くっ・・・)
 どこまで辱めれば気がすむのか、亜衣の頬を張ったのは蒼草法師の隆々と勃起した男根だった。
 「バシッ」
 さらにもう一度、熱く勃起した肉棒が亜衣の頬を襲う。
 (あぐっ・・・!)
 思わず上体を反転させ、防御の姿勢を取る。
 その亜衣の動きを孝明は見逃すことなく、亜衣の腰を器用に反転させて持ち上げる。
 うつ伏せになって尻を突き上げた格好にさせられた。
 すかさずズンッ、と後ろから孝明の肉塊が亜衣のホトを貫く。
 (あああっ・・・)
 目が眩むほどの快感が、亜衣の全身を突き通した。
 「う・・・い・・・いやあっ・・・」
 耐えきれず、亜衣は声をあげた。
 「ビシイッ!」
 その亜衣の背中に、蒼草法師の蔓の鞭が振り下ろされた。
 身を裂くような痛みが走る。
 ビシッ、ビシッ、ビシッ・・・と続けざまに鞭が振るわれ、亜衣の柔肌を打つ。
 「うぐっ・・・はうっ・・・くはあっ・・・」
 激しい痛みと、突き上げられる快感が混ざり合って、倒錯の欲情に身悶える。
 別の脅えが、亜衣の心を震わせた。
 (こ、こんな・・・こと・・・)
 鞭が背を打つたびに、言いようのない快感が走るのだ。
 支配され、陵辱されているのに、いや、だからこそ、被虐の悦楽が亜衣を包んでいく。
 「っはあ・・・いや・・・やめっ・・・あうっ!」
 後ろから、孝明が亜衣の長い髪を掴んで引き上げてくる。
 亜衣は四つん這いの格好で、犬のようにバックから責められる。
 「ああっ、こんなの・・・いやあ・・・」
 恥辱に全身の血が沸騰する。
 こんな恥ずかしい格好で責められているのに、亜衣の太腿には愛液が幾筋もつたい、滴っているのだ。
 孝明はさらに荒々しく腰を突き出し、亜衣を深く犯す。
 「はうっ・・・んあっ・・・ああ・・・」
 亜衣の甘い喘ぎも大きくなっていく。
 (ああ・・・いや・・・また・・・イッ・・・イッちゃう・・・)
 白い閃光が、亜衣の瞼の裏に浮かんでは引いていく。
 どすんっ、と蒼草法師が亜衣の前に腰を下ろした。
 亜衣の目の前に、邪悪な肉棒がそびえ立っている。
 「や・・・ああ・・・あうっ・・・」
 蒼草法師の大きな手が亜衣の頭を掴んで男根に引き寄せた。
 「あふっ・・・はん・・・」
 亜衣は無意識に舌を出し、その屹立に這わせていく。
 舌先に蒼草法師の熱い肉肌を感じ、亜衣の倒錯が増幅する。
 (こんな・・・太いのが・・・)
 さっきまで自分のホトに埋め込まれ、亜衣を突き上げていたなんて・・・。
 そう思うと意識が飛びそうになる。
 それはまだ亜衣の愛蜜にまみれてヌラヌラとしていた。
 舌先がチャプッ、と音を立てる。
 (ああ・・・これに・・・犯されたんだ・・・)
 そして今、さっきまで自分を犯していた肉棒を、亜衣は愛おしそうにしゃぶっているのだ。
 (さっきまで・・・?)
 亜衣の混濁した脳裏に、小さな光が灯った。
 (さっきまで犯していた・・・そうだ!)
 一瞬で快楽の淵から呼び戻される。
 全身の筋肉に力がみなぎる。
 (邪悪隠滅っ!)
 天津天神子守衆の破邪の気を溜め、口の中の護符に念を籠める。
 (お願いっ!力を貸して、おばあちゃん)
 唇の上で、梅の花弁が急速に熱を帯びる。
 正義の熱から発せられた力が、亜衣の強い意志を再び呼び起こす。
 (いけっ!)
 亜衣は上体を反らし、蒼草法師の顔面に照準を合わせると、口の中から梅の花弁を吐き飛ばした。
 「ぐおっ・・・?」
 梅の花弁が貼りついた蒼草法師の醜悪な顔に、驚愕の表情が浮かぶ。
 その一瞬の後、バチッ、という音とともに青白い閃光が走った。
 「ぐわああああ」
 蒼草法師の不気味な絶叫が早朝の山に響き渡る。
 亜衣は体を起こした。ホトから孝明の男根が弾み出るのにかまわず、跳躍する。
 顔を押さえて苦しむ蒼草法師の顎に、膝蹴りを叩き込む。
 着地したその先の地面に、カンテラが置かれていた。それはまだ、明るい炎の輝きを放っている。
 (これだっ)
 咄嗟の閃きで、そのカンテラを手に取るや、亜衣は身を反らして苦しむ蒼草法師に投げつけた。
 パリンッ、と蒼草法師の固い体にぶつかったカンテラが割れ、中のオイルが飛び散る。
 すぐにそのオイルに引火し、蒼草法師の体が炎に包まれた。
 「うがああああーっ」
 蒼草法師の断末魔の叫びは、長くは続かなかった。
 真っ赤な火炎に巻かれた淫魔の肉体は激しく燃え上がり、地面に倒れた。
 その脇を、亜衣は駆け抜けて、麻衣を抱き起こした。
 「麻衣、麻衣っ、しっかりして!大丈夫?」
 「う・・・ん・・・、あ、おねえちゃん・・・」
 「麻衣、よかった・・・もう大丈夫よ」
 亜衣は強く麻衣を抱きしめた。
 燃え上がり、黒い炭に変わっていく淫魔の肉体の手前で、孝明が膝をついた姿勢から前のめりに倒れていった。
 (お、終わった・・・)
 亜衣は麻衣にもたれかかるように脱力し、そのまま深い闇の中へ落ちていった。
 「おねえちゃんっ?」
 麻衣の驚いたような声が、遠くに聞こえ消えていった。



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