淫獣聖戦後伝・羽衣淫舞(7)

 「い、いやーっ!」
 麻衣の悲鳴が響いた。
 (ああっ、麻衣っ!)
 亜衣が淫ら草の毒に責められている間に、麻衣の右の乳房に孝明が吸いついていた。
 「ふふ、かわいいおっぱい、柔らかいなあ」
 端正で気品ある容貌には似つかわしくない直情的な言葉を呟きながら、孝明は片手で麻衣の乳房を揉みながら、夢中で乳首をしゃぶっている。人間的な呵責の念から解放されて、一匹のオスと化した孝明の本能だけが、彼の若い肉体を支配しているようだった。
 「だ、だめ、孝明さんっ」
 麻衣の哀願は虚しく、舌先で転がされた薄桃色の小さな乳首が固く尖っていた。
 もう一方の手は麻衣の大切な部分を包み込んで、ムニムニとせわしなく動いている。
 その指先が最も敏感な部分に当たらないように、麻衣は腰をひねるようにしながら必死に抵抗しているようだった。
 孝明の舌が麻衣のきめ細かな美しい柔肌を唾液で濡らしながら徐々に上がっていく。
 胸から首筋へ、そして顎先から頬へ。麻衣は顔を背けるようにして孝明の接吻から逃れている。
 孝明が麻衣にキスを迫るたびに、麻衣が左に右にと首を振って抵抗するやり取りが何度か繰り返された。
 「ちっ」
 孝明は苛立って舌打ちし、麻衣の顔から離れた。そして蒼草法師のほうを振り返った。その瞳には残忍で凶暴な光が宿っている。
 孝明は蒼草法師の目を見て何か合図をして、それから捕らえられている亜衣の体を上から下へ、獲物を値踏みする獣の眼で鑑賞すると、ニヤリと好色な笑いを口元に浮かべた。
 肢体を眺め回された亜衣が、思わずゾクッと悪寒を覚えるような冷たい欲情を感じさせる表情だった。
 (ハッ!)
 蒼草法師の体から鞭のような蔓が現れて、俊敏な動きで麻衣の体に伸びていった。
 バシッ、と麻衣の頬を打つ鞭の音と、「キャアッ」と叫ぶ麻衣の悲鳴が同時に亜衣の耳に届く。
 不意をつかれ、麻衣はその一撃で闘う気持ちを挫かれたのか、瞳の力を失わせた。
 (麻衣っ!)
 亜衣は叱咤しなくてはいけない、と思いながらも声を発することができなかった。
 何か声を出そうと口を開けば、喘ぎが漏れてしまいそうなのだ。目が眩んで、麻衣の姿がぼやけて遠く見える。亜衣は固く目を閉じて、自らの気力を支えるのが精一杯だった。
 「くっくっくっ」
 すぐ頭の後ろで蒼草法師のくぐもった笑い声が聞こえた。
 「いやあーっ!」
 麻衣の絶叫が山中にこだまし、こだまが消えると払暁の深山に静寂が戻った。
 (麻衣・・・?)
 亜衣は、麻衣が気を失ったのかと思い、最後の気力を振り絞って目を開けた。
 麻衣は気絶したわけではなかった。やや俯いて、肩で息をしている。
 (ああ、まさか・・・)
 鞭で叩かれ、気が萎えたところに、すかさず蒼草法師の淫ら草の毒針が襲いかかったのに違いない。脅えたような顔が紅潮し、白く美しい肢体もピンク色に染まっていた。
 その前で孝明が満足そうに笑い、麻衣の反応をうかがうように立っている。
 「んくっ・・・ふぁ・・・」
 麻衣の体が、ピクッ、ピクッ、と細かく震え、二度三度と乳房が揺れた。
 「麻衣・・・しっ・・・かり・・・」
 亜衣も小さな声でそれだけ言うのがやっとだった。心に絶望感が広がっていく。
 「邪鬼ども、少々手伝ってやるがよい」
 蒼草法師がそう言うと、邪鬼たちはいっせいに気色を浮かべて反転し、麻衣に飛びかかっていった。
 「いや・・・ああっ・・・」
 麻衣の悲鳴は、先ほどまでの力強さを失い、鼻にかかるような甘い吐息が混じっている。
 ビリリッ、と邪鬼は麻衣の下半身を覆っている羽衣や下着を破り、剥ぎ取っていく。
 汗の光る乳房にも、太腿にも、首筋にも、邪鬼が取りついて真っ赤な舌で麻衣の白い肌を邪悪な唾液で濡らしていく。
 「うく・・・んあっ・・・」
 麻衣は顎を上げて切なげに喘ぎを漏らす。邪鬼はすぐに、麻衣のホトの入口にも舌を伸ばす。舐めあげられ、吸いつかれるたびに、麻衣の体が震える。
 孝明はそんな麻衣を見ながら、ゆっくりした動作で麻衣の背後に回り込んだ。
 上体を反らして上を向いている麻衣の顔のすぐ後ろに立つと、麻衣の顎先に手を添えて支える。
 そして二人は求め合うように唇を重ねていった。
 (孝明さん、麻衣、だめっ)
 蒼草法師の方術に操られ、道を外れて墜ちていく二人の男女を見ながら、亜衣は口惜しさに唇を噛んだ。
 しかし、それは口惜しさだけではなくなっていた。淫ら草の毒に侵された亜衣も、体の底から沸き上がってくる快楽の切なさを抑えきれなくなりつつあった。
 知らず知らずに、亜衣の腰が刺激を求めてわなないていた。
 「ぐははは、亜衣も我慢しきれなくなってきたと見えるわ。」
 蒼草法師が亜衣の様子に気づいて背後で笑う。
 「だ・・・誰がっ・・・」
 「ふっ、おのが腰をいやらしく振りたてながら何を言うか。男が欲しくてたまらぬのだろうが。」
 「そ・・・そんな・・・ことは・・・ないっ・・・」
 「ふふふ、その気の強さ、ますますもって気に入ったわ。妹の方はもう夢の中なのにのう。」
 麻衣は孝明と濃密なキスをしていた。挿し入れられた舌に、自分の舌を絡めているのがわかる。
 すでにうっとりと陶酔の表情に変わっている。
 (ハッ、また・・・)
 孝明が、麻衣の唇を吸いながら亜衣を見ているのだ。
 ついさっき、この場所で抱き上げられ、キスをされた記憶が甦ってくる。
 (くっ・・・はああ・・・)
 口の中をこね回され、絡ませてしまった舌の感触を、草の上に寝かされ乳房を荒々しく愛撫された感触を思い出して、亜衣の体がカーッと火照った。
 体がブルブルと震え、腰がせり上がってしまう。両脚を大きく開いたまま、孝明に向かってホトを突き出すような格好になる。亜衣の女の部分を覆った白く薄い布地は濡れて、ピッタリと柔襞に密着している。
 「キヒヒヒッ、ホトのピンク色が透けてるぜー」
 「あんなに濡らしちまって、下着の中でヒクついてやがるッ」
 「乳首もあんなにおっ立ってるぞ」
 「妹がうらやましくてしょうがないんじゃないのかあ?ケハハハ」
 邪鬼たちも麻衣を舌で責めながら亜衣の姿を見て口々に猥褻な罵声を浴びせてくる。
 (麻衣が、うらやましい・・・?)
 冗談じゃない、と思う気持ちと、それを認めてしまいそうな気持ちが入り混じる。
 嬲られる麻衣を見せつけるだけで、蒼草法師は亜衣の体にはなんの刺激も加えようとしない。
 「ああっ、いや・・・だめえっ・・・」
 孝明の唇が離れると、麻衣の口からは絶え間なく喘ぎが漏れる。
 邪鬼たちは麻衣の体中を舐め回していた。麻衣の股間に顔を埋めている邪鬼は、ときどき角の先で肉蕾をつついている。
 その奥にももう一匹。ホトを舐めると梅の護符の力で電撃のような痺れが走るから、麻衣の後ろの穴の方を責めているのだ。
 「ああ・・・そ、そこは・・・だめ・・・おねがい・・・」
 邪鬼の舌が菊門に触れると、そのたびに麻衣の体は弾かれたように震える。乳房が揺れ、乳首が上下する。
 昨年の戦いの中で、麻衣はかろうじて処女は守ったものの、責め木馬によって純血を奪われ、さらに肛門を犯されて失神した経験を持っていた。その極限状態で開拓された性感帯が、今また極限の官能地獄で開発されようとしている。
 「うあっ、やめ・・・て・・・もう・・・あはあっ・・・」
 (ああ・・・麻衣・・・麻衣っ!)
 亜衣の心の叫びも、麻衣にはもう届かない。麻衣の全身からは力が抜け、邪鬼たちのなすがまま、快楽に身を委ねてしまっている。
 その間に、孝明は着ている物をすべて脱ぎ捨てて全裸になっていた。
 麻衣の背後にいる孝明の引き締まった若い肉体は彫刻のように均整が取れて美しい。
 だが、その股間には凶悪にいきり立った男根が、まっすぐに亜衣の方に向けられていた。
 初めて目にする「人間の」男性器に、亜衣の表情に動揺が走る。
 「ふふふ」
 孝明は亜衣の表情の変化に満足して小さく笑い、麻衣の腰を両手で掴んだ。
 (麻衣っ、逃げて!)
 麻衣の膣口に、孝明の勃起の先端が押し当てられた。
 陶然となっている麻衣は、そのことに気づかないようだった。
 孝明は無抵抗の麻衣の腰をがっしりと掴んで固定したまま、そこに猛った肉棒を埋め込んでいく。
 「んあああっ」
 押し広げられる感覚に、麻衣がのけぞる。
 やはり梅の護符などなんの役にも立たなかった。麻衣の処女が人間・孝明によって奪われた瞬間だった。
 (くっ・・・麻衣・・・)
 妹を救えなかった悔しさが一瞬だけ亜衣を苛んだ。が、すぐにまた悦楽に溺れそうになる。
 (・・・ああ・・・私・・・)
 犯される麻衣の姿を見た亜衣の脳裏には、カーマに貫かれた時の肉棒の感触がありありと甦ったのだ。
 亜衣は知っている。この膣奥の切ない火照りを癒すには、固く太く長く勃起した肉棒で掻き回されるしかない、ということを。
 体の奥深くに達し、突き上げてきたカーマの男根の感触を思い出して、亜衣は無意識に腰を振りたててしまうのだった。
 「クヒヒヒ、妹が犯されるのを見て感じてやがるぜー」
 「してもらいたいんじゃないのかあ?亜衣」
 「キヘヘヘ、体は正直だなあ」
 邪鬼たちの嘲笑が、亜衣の被虐の倒錯を煽っていく。
 「あっ、あうっ、あんっ、あん・・・」
 孝明に後ろから突かれるたびに揺れる麻衣の口からは、その動きに合わせて喘ぎ声が漏れていた。
 亜衣の腰の動きも、いつしかそれに同調してしまう。
 麻衣を突き上げながら、孝明が亜衣を見ている。
 妹の柔肉の感触を堪能している男に、淫らな喘ぐ姿を見せてしまっているのだ。
 (だめっ、負けそう・・・)
 遂に亜衣の心の中に弱気が芽生えたその時、亜衣の頬にヌルリとした熱い物が触れた。
 (え、なに・・・?)
 赤黒い、固い弾力を持ったそれは、男根の形状に似た触手だった。
 「ぐふふふ、どうだ、舐めてみるか、亜衣」
 蒼草法師の体から伸びた蔓が変化したものである。
 必死に顔を背ける亜衣だったが、触手は自由自在の動きで亜衣の頬を追い回してくる。
 「麻衣を犯している孝明の性器と同じ大きさ、同じ固さ、同じ形だ。これが欲しかろう?」
 「くっ、や・・・やめろっ・・・」
 両手首両足首を拘束された亜衣に逃げ場は少ない。だが、亜衣はまだわずかに抵抗する気力を残していた。体を左右にゆすり、首を振って触手から逃れる。
 「がははは」
 その亜衣の抵抗が嬉しくてたまらない、といった様子で、蒼草法師は歓喜の笑い声をあげる。
 (ああ・・・)
 欲しい。熱くて固い、独特の弾力を持った肉茎が、欲しい。
 (一度だけ・・・ううん・・・少しだけ・・・)
 肉体の快楽に負けて、そんな思いが亜衣の心を支配しようとしていた。
 (でも・・・)
 少しだけなんて不可能だ。一度だけなんて、きっと無理なのだ。
 ここで官能に屈したら、亜衣も麻衣もこの蒼草法師の性奴に墜ちる。
 (はっ、麻衣・・・)

 麻衣の方は両手も両足も蔓草の束縛は解けていた。が、麻衣にも触手が襲っていた。
 蔓草が触手に変化したのかもしれない。いつの間にか邪鬼の姿は一匹も見えない。
 「ああっ、い・・・いい・・・気持ち・・・いい・・・」
 亜衣を襲っている触手と同じ、つまり麻衣を今は正面から貫いている孝明の男根のクローンともいうべき触手が、何本も麻衣の体を這い回っていた。
 「は・・・ん・・・」
 麻衣は両手に一本ずつ触手を握っている。右手に握った触手の先端に唇を寄せ、それをまるで愛おしむように舐めていた。
 口づけをし、小さな桃色の舌を出して舌先を男根を模した段差に沿わせる。
 触手の粘液をすくい取るように、麻衣の舌は丹念に動いていた。
 「ふぐぅ・・・!」
 触手が勢いを増して麻衣の口に侵入し、犯す。
 孝明の腰の律動も激しくなる。
 「んんっ・・・んっ、んむっ・・・」
 触手を口に含み、舌を使いながら鼻先で喘ぐ麻衣は、日頃のあどけなさを忘れるほどに妖艶な色気を見せて性戯に没頭している。
 「はんっ!」
 触手の一本が後ろから麻衣のもう一つの穴に侵入した。麻衣の体が波打つように反応する。
 前から孝明に、後ろから触手に、そして上の口まで犯され、麻衣は妖しく悶えていた。
 (麻衣・・・)
 麻衣の淫らな姿に、亜衣の絶望が深まっていった。
 (う・・・はうっ・・・!)
 不意に、触手が亜衣のしこった乳首をこすり上げた。亜衣も思わずのけぞる。
 孝明の亀頭を模した触手の段差が、亜衣の桜色の乳首を弾くようにいたぶる。
 「くっ・・・ああ・・・」
 亜衣の声も鼻にかかった甘い喘ぎに変わっていく。
 全身に広がった官能の炎が、亜衣の思考力も気力も奪っていた。
 ヌルヌルした触手はいつの間にか何本にもなって亜衣の柔肌にまとわりついている。
 「・・・うああっ・・・!」
 ぐっしょりと濡れた亜衣の純白の下着を、触手がねぶっていく。
 先端の段差が、固くなった萌芽に当たる。
 「ひあっ・・・」
 突如始まった触手責めに、亜衣の体が反り返った。
 ビリッ、ビリッ、と音がして、わずかに残っていた羽衣の布を触手が剥ぎ取っていく。
 小さな下着の布地の中に、触手が侵入してくる。
 直接、その部分に触手が触れ、熱い弾力が亜衣の女の部分を刺激する。
 肉蕾をこすり上げ、触手の粘液と亜衣の愛液が混ざり合う。
 「ああっ・・・いやあっ・・・やめっ・・・あぐっ・・・!」
 柔らかい秘襞の合わせ目に沿うように触手の側面があてがわれ、前後に動く。
 亜衣の柔襞の奥からは熱い愛液が溢れて太腿を伝っていった。
 クチュクチュといやらしい音がしている。
 (ハッ!)
 亜衣の唇に、触手の先端が触れた。
 それは亜衣を焦らすように、唇の合わせ目に柔らく触れて動かない。
 亜衣の動きを待っているのだ。
 (ああ・・・だめ・・・)
 止めようとしても止まらない。
 亜衣の唇が、ゆっくり震えるように開いていった。
 「チュッ」
 と小さな音がして、亜衣はその先端に口づけをしてしまっていた。
 かすかに顎先を上げ、唇の間から小さな舌を覗かせる。
 「ん・・・」
 舌の先が、触手の熱くて固い弾力に触れる。
 (ああ・・・か・・・感じる・・・)
 少しずつ舌を伸ばす。触手の粘液は、甘苦く生臭い味だった。
 さらに大きく唇が開かれる。触手が徐々に亜衣の口の中へと入ってくる。
 亀頭を模した先端部分が、亜衣の唇の内側へと埋まった。
 「んう・・・」
 口の中に入った触手の先を舌で円を描くように舐めると、弾力に固さが増してくるような気がする。
 (ああ・・・これが・・・あの人の・・・)
 淫魔に操られて妹を犯している孝明の陰茎と同じ形状のもの、という思いが、亜衣の倒錯を一層深めていた。
 「ああーーっ」
 遠くで麻衣の絶頂の声がする。
 (イカされてしまったんだ、あの人に・・・)
 孝明に対する憎悪と憐憫と恋情が複雑に交錯して、亜衣は目が眩むような思いだった。
 絶え間なく響いていた麻衣の喘ぎ声が止んで、あたりは静かになった。
 亜衣は少しだけ瞼を開けて、麻衣を見た。
 目の前に赤黒い触手があって、その向こうに麻衣がぐったりと倒れているのが見えた。
 気を失っているのかもしれない。
 淫ら草の秘術にかかり、三つの穴を同時に責められたのだから無理もない。
 (ああっ・・・)
 亜衣の心が震えた。麻衣が失神したことに安堵する気持ちが自分の中に芽生えていることに気づいたせいだった。



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