「ンン・・・ うく・・・ ふ・・・」

 

 場所は、淫魔の社の斜め隣に立つ【淫魔契りの間】。

 

「はっ・・・ あぁ・・・ くふぅっ・・・」

 

 テニスコート一つ分は収まりそうな広さの間取り、やはり和で統一された板張りの床には、両義の紋様が描かれており、それを囲む形で均等に、紋様の上には百近い蝋燭が置かれ、その場を薄暗く照らしていた。

 

「あっ・・・ はぁ・・・ ん・・・ん・・・」

 

 蝋燭の明かりによって、その中心に、一人の女性が浮かび上がる。

 亜衣である。

 蝋燭の熱による高めの室温の為か、それとも行っている行為が故か、亜衣の体は汗に濡れて艶を放ち、蝋燭の明かりで浮かび上がる肌は、本来の桃白色の肌をオレンジに照らし、なんとも艶なる美しさをかもし出している。

 

(クチュ、クチュ、クチュ、クチュ・・・)

 

「んっ・・・ンンッ・・・はっ・・・あ・・・」

 亜衣は、己の指で、己の秘所をひたすら弄っていた。

 蝋燭の火の揺らめく僅かな音以外は、何も音が無いこの空間において、ただ亜衣の自慰行為による水音だけが響き渡っていた。

 

(クチュ、クチュ、クチュ、クチュ、クチュ・・・)

 

「うぅん・・・ やぁ・・・ は・・・」

 だがその自慰は、不振であり、不振だった。

 確かに自分の指で秘所を弄っている。

 しかし、その指の動きは恐る恐るのたどたどしい、消極的なもの。

 そして、その表情は、乙女が自慰行為に酔うものでは決してなく、快楽を感じ紅潮してはいるものの、己がやっている行為自体は嫌悪しているかのような・・・

 

(クチュ、クチュ、クチュ、クチュクチュ・・・)

 

「うあぁっ・・・ あ・・・ ふぅ・・・」

 そう、この自慰は彼女が進んで行っている訳ではない。

 淫魔へとなる儀式に必要なものは、三つある。

 一つは契約する淫魔の精液、もう一つはその淫魔の血。

 そしてもう一つが、亜衣本人の【潮】なのだ。

 亜衣は、潮吹きなどというものは体験したことが無い。知識として知っている程度だった。

 

 亜衣は、その一つ目のものを、その場で用意する事を余儀なくされた。

 中座の姿勢でひたすら自慰行為をする亜衣の股の下には、金で出来た杯が置かれている。

 

 カーマは問うた。

 

「俺が手伝うがいいか、それとも自分で間に合わせるか?」

 と。

 

 選択肢は実質一つしかなかった。

 せめてもの抵抗として、亜衣は自分自身でそれを行うことを選んだ。

 

(クチュクチュ、クチュ、クチュ・・・)

 

 それでも、十歩ほど離れたカーマの目が、亜衣のあられもない自慰の姿を嘗め回すように視姦する。

 

「うぅっ・・・ はぁ・・・っ やぁ・・・」

 亜衣は、羞恥で死んでしまいそうだった。

 亜衣も一人の女性だ。自慰の経験が無いというわけではない。

 だが、それをこんな所で、人に観られながら。それも、つい今しがた自分を穢した男の前でなど、羞恥で頭がおかしくなる。

 カーマの顔をなるべく見ないように、硬く眼を閉じる。

 それでも、突き刺さるカーマの視線は、今自分が弄くっている秘所に、紅潮した顔に、結える胸に向けられているのが分かる。

 そしてそれがどんな表情かなど、想像したくも無い。

 

「どうした亜衣。そんな遠慮した指使いではいつまでたっても終わらんぞ」

 カーマのからかいの言葉。

 

「くっ・・・」

 それは、愛の羞恥心をより一層掻き立てた。

 

「残念だがそう時間は無いぞ。淫魔大王が帰って来れば、麻衣を無事にとはいかん」

 そう、その通りだ。

 そんな事は亜衣にも分かっていた。

 それでも亜衣の女性としての誇りと、羞恥の心が強く働き、思うように指を動かさない。

 

「やはり俺がやってやろうか? フフフ・・・」

「やるわよっ!!!」

 亜衣は覚悟を決めた。そう・・・これは、麻衣の為なんだ。

 

(クッチュ! クッチュ!クッチュ! クッチュ!!)

 指の動きが早まった。

 水音はより激しく早く。そして亜衣は、押し寄せてくる快楽に思わず身を震わせ、身を捩じらせてしまう。

 

「(あぁ・・・ 私、淫魔の前で・・・ それも、自分を犯した男の前でオナニーしてる・・・ こんな、激しく・・・)」

 

 これまで味わったことの無い強烈な羞恥心。しかしそれと同時に、女としての自分がこの状況に興奮している。そしてそれが自分の中に存在する淫なる心だと理解する瞬間。指の動きと快楽はより業火の如く勢いを増した。

 

「(イヤ・・・ 私、そんな女じゃ・・・ でも、止まらない。指が止まらない・・・っ!!)」

 

 実際、亜衣がこんなに心乱れているのは、己だけの事由ではない。

 この契りの間には、様々な催淫の効果が施されている。

 蝋燭の蝋には、熱せられる事で気化する媚薬が混ぜられ、そしてこの紋様の結界の上には、どのような者でも淫らになってしまう淫魔の術が施されていた。

 

 だがカーマは、その事実を敢えて亜衣に教えなかった。

 その方が、精神的に亜衣をいたぶれると踏んだからである。

 

「ハハハ、すごいものだな、俺に女にしてもらった事で目覚めたか?」

「嫌ぁ・・・ そんな、ことっ、言わない、でっ・・・」

 並の女性ならとうに正気を失っている快楽地獄。亜衣は正気こそ保っているものの、最早カーマに強く言い返せるほどの精神的余裕はなかった。

 逆によく耐えていると言えるだろう。

 カーマは、そんな亜衣の精神の強さすらも楽しんでいた。

 

「ああっ! イヤッ!! もう、もうダメぇっ!! イッちゃう!!! イッちゃうのぉ!!!」

 もう姿勢を維持さえ出来ない。

 亜衣の上体はぺたりと床に落ち、顔は涙や涎が濡らしている。

 眼を見開くカーマ。

 

そして

 

「はぁぁああああ──────────っ!!!!!!」

 

(プシィッッ────!!!)

 

 それは噴水の如く、亜衣の秘所から飛び散り、床を濡らし、

件の杯に、充分に注がれた。

 

「は・・・・・・・・・」

 亜衣は力尽き、うつ伏せに倒れる。

 濡れた指も、顔も、秘所もそのままに、ただ空気の漏れた様な呼吸の音を木霊すだけ。

 

「フフフ・・・ 見事な潮吹きだ。最初の一回で成功させるとはな。これもまた妹を助けたい一念か」

 亜衣には答える余裕など無い。荒い呼吸を繰り返すのが精一杯だ。

 

「だが、まだ二つ残っている。時間はそう無いぞ? 亜衣」

 まるで妻に語るかのような口調のカーマ。

 

 そう、まだ終わる事は無い・・・。

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 精一杯エロくやったつもりなんですが、それでも自慰だけじゃ盛り上がりに欠けますかね?(汗

 次は・・・もっとエロいと思います。多分・・・

 



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