封神山  天岩戸への道  中間地点

 

 

(シャッ────!)

  (シャッ────!!)

                          (シュバッ────!!)

 

 例の人が登るにはそぐわない険しい道を、ランニングシャツと薄手のチョッキ、ハーフズボンという、いかにも間に合わせで着たらしき服装の少女が、常人離れした忍者のような身軽さで跳び跳ねながら進んでいた。

 

「ハァ・・・ ハァ・・・ ハァッ! あのバカ・・・っ!!!」

 少女は、旅館の仲居の一人、那緒だった。

 旅館の中に小百合がいない事に逸早く気付いた那緒は、紫磨の制止の声も聞かず、とりあえず動きやすそうな服に着替えて一目散に、鍛えた自慢の俊敏性で一目散に山を登っていたのだ。

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

   一方。  封神山  中間地点  上空。

 

 

静瑠の武神剛杵の化身的存在、小弓天(こきゅうてん)は、小百合を霊力で持ち上げ、鳥以上の疾さで空を飛んでいた。

 

「うっ・・・ ぐす・・・ 静瑠お姉さま・・・」

 全裸の状態のまま、小百合はただひたすら静瑠の名を呼び、泣いていた。

 

『あーもう!! うっとおしいなあ!! 静かにしてろよ!! 集中して飛べないだろっ!!』

 小弓天は、小さな少年の如く可愛い声で、そんな小百合に悪態をついた。

 

「でも・・・ でも・・・ 私のせいで・・・ お姉さまが・・・」

『あーそうだね!! お前が勝手なことして人質にさえならなきゃ、シズルだってあんなことしなくてもすんだよね!!!

 あんな奴ら、普通に勝ててたと思うよ!!!』

  自分の愚行に泣き続ける小百合に対して、小弓天は容赦なく毒を吐く。

 

「ぐす・・・ ぐすっ・・・ うわぁぁああ・・・っ!!!」

 遂に小百合は、号泣を始めてしまった。

 

『だああっ!! うざ────いい!!! 集中がちっとも・・・ って、あ!!?』

 小弓天は人間の何十倍もの視力で、木々の間に映る見知った顔に表情を嬉々とさせた。

 

『うおぅっ!! 那緒じゃん!! お────────────い!!!!!!!』

 小弓天は、小百合を抱えながら、急旋回し、一直線に那緒の方へと突進した。

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

「・・・・・・あぁ?」

 那緒は、どこかで聞いた声に振り返る。

 そのまま視点を上に向けると、青空の中に見える小さな点が、だんだんと大きくなってこっちに向かってきている姿が見えた。

 

「ありゃ・・・ 小弓天と・・・ 小百合!!?」

 片手で眩しい陽光を遮断しながら見ることで、ようやくその正体が判明した。

 

「オイオイ・・・ 」

 どんどん近づいてくると同時に、小百合が全裸姿であることもわかり、那緒は口を大きく開けて驚いた。

 やっぱり、悪いことがあったんだ。

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

『ああっ!!?』

 小弓天の方も、那緒に近づく途中で、自分の視界に映ったものに驚愕した。

 僅かな木々の隙間に、那緒の方へとグングン近づいていく、例の黒子達を見つけてしまったからである。

 

『な、那緒─────────っ!!! 逃げろ────────────っっ!!!!』

 小弓天は、那緒に危機を伝えながら、なんとか那緒も拾って逃げようとスピードを上げた。

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

「は・・・? 逃げろ・・・?」

 一方那緒は、小弓天の唐突な言葉に眉を曲げた。

 

 その時

 

(ガサガサッ)

 

「・・・っ!!?」

 草の揺れる音に振り向く那緒。

 それと共に、その草叢の中から次々と、合計4人の黒子達が姿を現し、跳躍しながら那緒のいる一点を目掛け、鉤爪や短刀などのそれぞれの武器で少女を切り裂かんと襲い掛かった。

 

「!!!」

 

(タンッ────!!)

 

 那緒は反射的に、回転しながら後へ跳び、その攻撃をやり過ごす。

 空振った黒子達の攻撃は空を切り、その内の幾つかは木の幹を抉り、傷をつけた。

 

「なんなんだよっ!! お前らぁっ!!!!」

 那緒は空中で体勢を変えると、どこに隠し持っていたのか、一瞬で両手にナックルグローブのような武器を装着した。

 

 そして

 

「伸びろッ!!! 斬鬼霊爪(ざんきれいそう)────っっ!!!!」

 

(ジャキィィィンッッ!!!)

 

 那緒の掛け声と共に、両手に装備したナックルの穴から、大きく鋭利な、霊力で構成された非実体の鉤爪が現れる。

 

 【斬鬼霊爪】とは、逢魔が発明した、対淫魔戦の携帯用武器の一つである。

 装着者の霊力を大量に引き出し、爪の形に収縮、固定させる。

大量の霊力の消費と、爪という武器形状から使用者を選ぶが、こと淫魔、妖かしの類には絶対の切れ味を誇る武器となるのだ。

 

 那緒はくるくると空中を回り、適当な木の枝に捕まり一回転すると、自分から黒子達の方へと向かっていく。

 

 黒子達はクナイや手裏剣をそれぞれに那緒に向けて投げ放つが、那緒は猫のような動きと驚異的な敏捷性でそれを避わし、或いは鉤爪で弾き、黒子達へと向かっていく。

 

「だあぁっ────!!」

 

(ザクシュッ────!!!)

 

 那緒は斬鬼霊爪を、最も手前にいた黒子の頭巾の中央、顔の真ん中に突き刺す。

 そのまま爪を捻ることで、一体目の黒子の顔の部分の上半分は、頭巾ごと切断され吹き飛んだ。

 

(ブシュ────・・・ッ!!)

 

 切断面から鮮血を噴出し、一体目は倒れる。

 

「っっ!!!!」

 残りの3体は、それぞれに那緒に対し先制攻撃を仕掛け、仕留めんと間合いを取ろうとする。

 

 しかし、そんな機敏な黒子達よりも、那緒はずっと疾く次の攻撃に移っていた。

 

(ザシュザシュザシュザシュザシュ─────────ッッ!!!!)

 

 体を捻り、竜巻のようにスピンをかけながら、霊爪による斬撃と共に3体の黒子の隙間を通り抜ける。

 その鎌鼬が通り過ぎた後には、黒子達の武器は折れ、腕は飛び、喉が抉り取られ────

 

(ピッ──── ピシッ────)

 

 それよりも一拍を置いて、黒子達の肉体が、奇麗な線で別れ、ずれ始めた。

 やがてボロボロと、黒子達は肉塊と血の噴水へと変化し、そのパーツはゴロゴロと坂を下り落ちる。

 

 

「ふ────・・・」

 霊力の爪が消えたナックルをポケットに仕舞い直すと、額で汗を拭く。

 

 那緒は、神藤の人間ではないが、孤児院から引き取られ、逢魔で鍛えられた若手の巫女戦士である。

 近年起こった逢魔の主義改革によって、前線に配置される筈だった那緒は、紫磨女将の希望と、那緒自身の承諾によって、旅館“山人”の仲居兼、いざという時の戦闘要員として配置された。

 戦士として優秀且つ、潜在能力も高い那緒は、その後も仲居業の合間を見つけては、静瑠や紫磨に戦闘の師事を受けている。

 戦力としての大体は、天津天神子守集以上、木偶ノ坊未満といったところか。

 

 

『うわ〜〜お!! 見ない間に強くなったじゃんか、那緒〜〜!!!』

 安全を確認した小弓天は、小百合と共に近くに降下すると、那緒の方へと手を振りながら空をパタパタと跳びながら近づく。

 

「小百合っ・・・・!!」

 しかし那緒は、そんな小弓天を弾き飛ばし、一直線に小百合の方へ歩み寄った。

 

(ドカッ!)おわぁ~〜〜〜〜〜〜〜!!!!???』

 当て逃げされた小弓天は、くるくると回転しながら茂みの中へと落っこちる。

 

「小百合っ!!」

 那緒は小百合の肩を掴み、正面から見据える。

 

「那緒さん・・・」

 泣きべそをかき、嗚咽を洩らしながらも、那緒の顔を見て少しだけ安堵する小百合。

 

 だが

 

「このっ・・・ バカッ!!!」

 

バチィ────────────ッ・・・ン!!!!)

 

 小百合の頬を張る大きな乾いた音が、山道の山林の中に響く。

 

『うわわわわ!!! 那緒!! おま・・・ なんばすっとね!!?』

 茂みから抜け出た小弓天は、那緒の突然の折檻に驚いた。

 

「・・・・・・・・・っ」

 小百合は、打たれた勢いで右横を向いたまま、精神的な衝撃のせいか、驚いた顔のまま動かない。

 小百合の左頬は、真っ赤に腫れた。

 

バッカヤロ────ッ!!! お前、どれだけ勝手な真似したかわかってんのか!!!?」

 那緒は怒りの形相で小百合を見据える。

 

「ごめんな、さい・・・」

 小百合は、ボロボロと涙を流し、震えている。

 

「泣いて謝るぐらいならなぁ!! 最初からっ・・・!! ったく・・・」

 那緒は大きく両手を広げた。

 

「・・・っ!!」

 またぶたれる。小百合はビクリと身を震わせ目を閉じた。

 それでも、自分はいくら殴られてもしょうがないことをしたから、殴られてもぶたれてもそれは当然・・・

 そうして覚悟を決めた小百合だったが

 

(ガバッ・・・!!!)

 

 その次の瞬間。小百合に待っていたのは、全身を抱き包む感触だった。

 

「!?」

 驚き目を見開くと、小百合は、那緒に抱きしめられていた。

 

「クソっ・・・ 生きてて・・・ 生きてて良かったよ、チクショォ・・・っ!!」

 怒りと心配と安堵と、様々なものが織り交ざった感情が、小百合を抱きしめる那緒の蓉手から伝わってくる。

 

「那緒・・・さん・・・」

「怪我は、無いよな・・・?」

 

「あっ、ああ・・・!! 私・・・ わたし・・・ ごめんなざい・・・ ごめ゛んなざいっ・・・!!!」

 那緒に抱きしめられて、小百合はようやく自分がどこまで那緒に心配をかけたのか、理解した。

 

「ああ、もういい。もういいよ。一応無事で反省してくれてるなら、もうここじゃあ何も言わないよ・・・」

 那緒はすっくと立ち上がり、自分の着ていたチョッキを小百合に被せ、立ち上がらせた。

 

 

「小弓天。何があったんだ?」

 それまで蚊帳の外だった小弓天に、那緒は事の顛末を尋ねる。

 

『ああ、実はさ・・・』

 小弓天は、かいつまんで説明した。

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

「なんてこった・・・」

 静瑠はどうなってるかわからない。しかも敵はほとんど獣人。

 先程の黒子程度ならともかく、牛頭や馬頭なんかが相手じゃ、自分程度の戦力ではお荷物だ。

 

『いやでもよかったよ。オレもさ、正直飛ぶのバテてたから』

「?? え・・・? ちょっと待てよ、お前、もっと長く飛べてたろ?」

『本来はそうなんだけどさ、それって静瑠が武神剛杵通して俺に霊力送ってくれてるから、何十人も運べたり新幹線の速度出せたりするんだけど・・・

 今さ、その霊力の供給、ほとんど止まってるんだよ。・・・これって、やっぱり・・・』

  ・・・静瑠は、変身していない。その上、通常の状態でのラインからすらも、わずかにしか送られていない状態・・・

 つまりは、ピンチ中のピンチ。それも、淫魔という敵の特性から考えると・・・

 

「・・・最悪だ」

 それでも、今、自分に出来るのは・・・

 

「小百合をつれて帰るだけ、か・・・ クソッ!」

 那緒がそう悪態をついた時、ピクリと、小弓天の耳が動く。

 

『あれ・・・? なあ、音・・・しなかった?』

 人間よりも遥かに発達した視覚、聴覚を持つ小弓天が、その耳に何かを感じとった。

 

「え・・・?」

『あああっ!! やばいっ!! 近づいてくるッッ!!!』

 その場でわたわたと慌てる小弓天。

 

『ああああどうしよどうしよ!!! 俺だけじゃ一度に二人は重量オーバーだし片方残しても行けないし・・・』

「ウソだろ・・・っ!? まだ来んのかよ!!?」

 しかも、小弓天の慌てようからすると・・・ 敵は、さっきの黒子よりも・・・ 大物。

 

 

「・・・小弓天。小百合連れて飛べ。あたしは走って旅館まで行く」

『何言ってるんだよ!! いくらお前の足が早くたって、追いつかれるよ!!』

「そんなのやってみなくちゃわからないだろ!!!」

 怒鳴る那緒。

 

『んなこと言ったって・・・』

 小弓天が反論しようとする途中で

 

(ガサッ!! ガサ、ガササッ!! ザ────ッ!!)

 

 恐ろしい疾さで、木々を駆け抜ける音が近づいてきた。

 

『うわあああああっ!!! 来た────────っっ!!!!』

 木々を飛び越え、数匹の獣人がドン、ドンッ! と地響きをさせ、一行の前に姿を現した。

 

「ウウウウウゥゥゥゥゥ・・・・・・!!」

 人狼が、合計4匹・・・。

 人間よりも一回りでかい身の丈に、ギラリと光る目。

 それだけで、那緒は力の差を思い知らされる。

 

「なる、ほど・・・ 確かに人狼なら、牛頭や馬頭よりずっと足疾いよな・・・」

 冷や汗を流し、じりじりと後ずさる那緒。

 

『あ、あわわわわわ・・・・・・!!!』

 ガチガチと震える小弓天。

 彼には、実質、小さな弓矢を撃つぐらいしか戦闘力は無い。

 

「くそ・・・ 万事休すか・・・」

 小百合を後ろに隠し、再び斬鬼霊爪を構える那緒。

 

「那緒さん・・・」

「黙ってろ」

 何とか隙を伺うが、野生の狩の達人、狼の化け物にそんな隙など出来るはずも無い。

 3人は、完全に獲物になっていた。

 

「おい、小弓天。結界張れ。出来るだろ」

『えっ・・・? いや、一応出来るけどさ、今のオレの供給霊力じゃ、一人分しか・・・』

「充分だ。小百合だけでも匿えれば、あとはあたしがサイコロ肉にしてやる」

 再びナックルから、霊力の爪を出現させる那緒。

 

『いや、でも・・・』

うっせえ!! あたしに殺されたくなかったらさっさと小百合を守る結界張れっっ!!!」

 前にも注意を向けながら、大声で怒鳴る那緒。

 

『うっ・・・ わ、わかった・・・』

 小弓天は小百合の頭におぶさると、むん! と気合を入れる。

 それと共に、小百合と小弓天を中心に白銀色の、ドーム状の結界が作成された。

 

「よーし、それでしっかり小百合守ってろよ・・・」

 那緒は完全に前を向いた。

 

「那緒・・・さん・・・」

 小弓天の結界に守られながら、静瑠姉さまに続き、那緒さんにまで命がけで守られている。

 小百合はただひたすら、自分が情けなかった。

 

 

「ウウウゥゥゥゥ・・・・」

 低い唸り。

 攻撃が・・・ 来る!

 

「ちっくしょおおおぉぉぉっ!!!! 来おぉぉぉぉいっっ!!!!」

「ガアアアアアァァァッッ!!!!!」

 那緒が叫ぶのと、人狼の一体目が那緒たちに跳びかかるのは同時だった。

 

「このぉっ!!!」  (ブンッ!!!)

 那緒は先手必勝とばかりに、襲い掛かってくる人狼の一体に爪を振るった。

 しかし、野性の獣人達は、鍛えられた那緒の爪の動きを簡単に避わした。

 

「あっ────!?」

 驚くも束の間。横から2体目の人狼が割って入り

 

(バキィッ!!!)

 

 那緒の鳩尾を、殴り飛ばした。

 

「か、ふっ・・・!!?」

 

(ドッカアァッ!!!)

 

 その衝撃に、那緒の体はくの字に曲がり、その衝撃で後ろの木に突き飛ばされ、派手に叩きつけられた。

 

「あっ・・・ぐ・・・!!!」

 鍛錬の成果。受け身やダメージの逸らし方で、なんとか死なずにすんだ。

しかし、それでも鳩尾への衝撃でまともに息は出来ず、肋骨にも2,3皹が入っているかもしれない。

そして斬鬼霊爪も、衝撃のせいで消えてしまっている。

 

『那緒ッ!!!』

「那緒さんっ!!!」

 結界の中の二人は、力なく倒れ伏した那緒に呼びかける。

 

「ぐ・・・ けっ・・・かいは・・・ ぜった・・・い・・・ そこ、から・・・ うご・・・ くな・・・」

 息も絶え絶え、呼吸すらままならない状況で、それでも那緒は結界の心配をした。

 

 

「グフフフ・・・・・・」

 人狼達は、不気味な笑い声と共に、倒れ伏す那緒に近づいた。

 そのまま、二匹の人狼が、それぞれ斬鬼霊爪を精製するグローブを口で外しに掛かる。

 それさえ外せば、あとは無力であると人狼達は察したのだ。

 

「ちく・・・ しょ・・・」

 ズルズルと口で引きずられ、グローブは完全に外された。

 そうすると、そのまま二匹の人狼は、仰向けにした那緒の両手を手で押さえ、動けなくする。

 

「くっ・・・!!」

 力を込めても、圧倒的な人狼達の腕力の前に、封じられた手はビクともしない。

 3匹目の人狼が、那緒の股下に近づく。

 その人狼は、那緒の両足を掴むと、膝を付き、同時に両足を引き上げ、那緒の下腹部を近づけた。

 

「う・・・わっ・・・!! なに・・・ すん・・・」

 那緒の言葉など通じるはずも無く、人狼はその爪で那緒のハーフズボンをビリビリと引き裂いた。

 

「やっ・・・・・・!!?」

 露になる、那緒の薄桃色のショーツ。

 

「フン、フン、フン、フンッ・・・・」

 人狼は、そのショーツ越しに、那緒の秘所に鼻を埋め、クンクンと匂いを嗅ぎ出した。

 

「うっ!? うわあああぁぁっ!!?」

 呼吸が正常に戻ってきた所で、最初についてでた声は、悲鳴。

 野生の獣の大きな鼻息が、そして細かく動く鼻の先自身が、ショーツ越しに秘所全体や肉芽を擽(くすぐ)る。

 

「あ、あああっ!! やだっ!! よせやめてっ・・・!!」

 那緒の必死な拒絶の声も虚しく、人狼は

 

(ベロッ、ベロベロッ、ビチャ、ビチャッ・・・!)

 

 那緒の秘所をショーツ越しに、イヌ科独特の舐め回し方で、那緒のショーツをビシャビシャに濡らし始めた。

 

「うわああああっ!!!?」

 ショーツ越しにさえ伝わる、犬のザラザラとした舌の感触。

 時折尖らせた舌の先端は、ショーツ越しに秘所の中にまで突き入れられる。

 

「あっ、ああっ! あっ・・・ や・・・だ・・・ はな・・・せっ!!!」

 獣人の執拗な責めに、少女の体は早くも否応無く、女として反応していく。

 

 

 

  ◇    ◇

 

「那緒さんっ・・・!!」

 反射的に、身を乗り出そうとする小百合。

 

『あ、こ、こらっ!! 動いちゃダメだろっ!! この結界、内側からは簡単に壊れるんだからっ!!』

 そんな小百合を、小弓天が慌てて制する。

 

「だって・・・ だって那緒さんがっ・・・!!!」

『オレだって同じ気持ちだけどさ!! なんとかしたいけどオレに出来ることなんて、この結界ぐらいなんだよ!!』

 小弓天は、大粒の涙を流しながら怒鳴った。

 那緒は、小百合を何が何でも守れと、小弓天に命令した。

 なら、いくら悔しくても、小弓天はその那緒の気持ちに答えないわけにはいかない。

 

 

「ガフッ!! ガウッ!!!」

 人狼の残り一体が、小弓天の張った結界に爪を立てる。

 

「ひっ・・・!?」

『動くな!! ・・・大丈夫だ』

 怯え竦む小百合と、それを諌める小弓天。

 実際、小弓天の張った結界は、人狼の爪や体当たりなどの攻撃に対して、皹一つ入ることはなかった。

 

『せめてコイツには指一本触れさせないぞ! 狼ヤロ───ッッ!!!』

 小弓天は精一杯、結界の向こうの獣人達に対して吼えてみせた。

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

(ビチャ、ビチャ、ベチャ・・・ッッ!!)

 

「ああっ・・・ ぐっ・・・!!」

 執拗に舐められ続ける那緒の秘所。

 長々と嬲られ続けたことで、意志に反し、那緒のクリトリスは勃起をし始めていた。

 

「う、うっ・・・ くっ・・・そぉっ!!」

 獣人相手に無理やりでも感じてしまう、女の体が恨めしい。

 

 だが、そんな事を考える間に、人狼はショーツに牙を立てた。

 

「あっ・・・!!?」

 起用にショーツの生地の部分だけを咥えた人狼は、そのままぐいと後ろに引き、那緒の最後の砦であるショーツを喰いちぎった。

 

「ああっ・・・・・・!!?」

 遂に完全に、自分の秘すべき場所を晒されてしまったことで、一気に那緒の羞恥と、恐怖が増大する。

 そして、それまで膝立ちの状態だった人狼は、ベロリと一回だけ生の陰唇を舐め回すと、すっくと立ち上がった。

 

「ヒッ────!!?」

 そうすることで、恐ろしいものが那緒の前に姿を現した。

 それは、すっかりと興奮状態に起ち上がった人狼の牡棒である。

 天を仰いで勃起しきり、ビクビクと震える、人間のものより何倍もあるそれは、明らかに那緒への侵入を望んでいた。

 

「うわっ!!? あ、ああや、やめろっ!! あ、あたし、まだ・・・」

 そう、那緒は遊んでいるように見えはするが、年相応に、まだ男の経験が無い処女である。

 退魔機関の逢魔に身を置いているとはいえ、処女(はじめて)を獣人に貫かれるなんて、そんな────

 

「グフフ・・・」

 人狼の牡棒が、那緒の陰唇に触れる。

 そして、それが掻き分けられ────

 

「やっ・・・ 嫌だっっ!! イヤァ────────────っっ!!!!」

 普段男の様な言葉を発している那緒が、強姦による処女喪失の恐怖に、年頃の少女そのものの、悲痛な悲鳴を上げた。

 

 

(シュンッ────)

 

「「「!!!?」」」

 その時、那緒達の後方から、何かが飛んできた。

 

(ボムッ! ボムッ! ボムッ────!!!)

 

「キャイイイイィィィィンンッ!!!!??」

 那緒に侵入しようとしていた1体。那緒を拘束していた2体。そして結界に執拗に攻撃をしていた一体が、頭部に爆裂型の火炎を浴びる。

 それに驚いた人狼達は、那緒をうち捨て、攻撃が来たのとは逆の方向に引き下がった。

 

(ガシッ!!)

 

 それと共に、誰かが那緒のシャツの襟を掴み、ポイと小百合達の方へと投げる。

 

「えっ・・・」

 那緒達が驚く間もなく

 

(バシュ────ッ!!! バリ、バリ、バリ・・・)

 

 那緒たちを中心として、サファイヤブルー色の光の結界が発動し、3人を包み込む。

 

「那緒さんっっ!!」

 結界云々に驚くより前に、小百合は何とか無事に帰って来た那緒を強く抱きしめる。

 

「ぐえっ・・・!!」

「よかった・・・ よかったぁぁ・・・ ああああぁぁんっ!!!」

 泣き虫の小百合は、那緒の胸で大泣きする。

 

「何でおまえが泣くかなぁ・・・ 泣きたいのあたしだっての・・・ ああぁ、気持ちワルっ・・・」

 人狼に舐められた秘所を、小百合に貸したチョッキからポケットティッシュを取り出し、大急ぎで拭き取る那緒。

 明るく取り繕っているが、体が微妙に震えている所に、本音を空元気で払拭しようとしている様子が伺えた。

 

 

 

「でも、これは・・・」

 今更ながら結界のほうに注目する。

 結界を形成したものは、4枚の護符だった。

 那緒の知る限り、この結界の、そして護符の使い手は・・・

 

「まったく、何やってるんだかねえ」

 呆れた声で3人を見下ろすその人は・・・

 

「「紫磨バアさんっ!!」」「紫磨お母様!!」

 

 そう、旅館の女将にして、神藤の先代当主。神藤紫磨である。

 山道を、堂々とゆっくり歩いて登ってくる紫磨は、女将の着物ではなく、紫の色調を多く使った、特殊な巫女服に着替えていた。

 

「・・・・・・・・・」

 紫磨は、【バアさん】といった那緒と小弓天だけを、横目で凄まじい迫力を持ってギロリと睨んだ。

 その目は、【死にたいのかいアンタ? どうなんだい? ええ?】と言っている。

 

「「・・・・・・・・・・・すいません、女将」」

 那緒と小弓天は、二重奏でその場で土下座する。

 

「・・・フン」

 それでなんとか、毒蛇般若の怒りをひとまず納めることは出来たらしい。

 

「癪だねえ、まったく・・・ こんなトコにまでOBを登らせるんじゃないよ。 

どいつもこいつも女将の命令を聞きやしない。・・・こりゃ、給料下げなきゃねえ」

 さも面倒臭そうに頭を掻く紫磨。

  目の前の状況が分かっているだろうに、紫磨の言葉はとんでもなく日常的だ。

 

『オイオイ!! 今そんなこと言ってる場合じゃないだろ!!!』

 小弓天は結界の中でツッコミを入れる。

 

「黙っときな。こういうのはその場で注意するのが大事なのさ。 さて・・・

 あんた達かい? うちの仲居達にオイタしたのは?」

  静瑠以上の、毒蛇のような迫力を持つ目で、人狼たちを睨みつける紫磨。

 

「グルッ・・・ グルルル・・・・・・!!!」

 獣人達も、本能で目の前の存在の手強さを感知したのだろう。

 低く唸り、紫磨に対して全力で威嚇をしだした。

 

「お仕置きしてあげないといけないねえ・・・ 牙弁羅(がべら)。 撃斗羅(てとら)

両手の袖から、手品のように式神符を取り出す紫磨。

その式神符を空中に放り投げると、そこで、紫磨の長年の相棒である2体の式神が姿を現した。

 

 2体は、それぞれ両方が似通った姿だった。

 互いに身長は1メートル前後。

 姿は全体的に赤土色。西洋の鎧がそのまま人の形になったかのような、金属的な姿形。

頭部はヘルメットのように楕円を描き、両の瞳があるべき場所には、V型の空洞が開いている。

その中にはエメラルドグリーンに輝く円形の、瞳らしき光が一つだけ覗いていた。

 

 唯一つ違うのは、片方の牙弁羅の武器は、光り輝く霊力の刃で構成された刀で、もう片方の撃斗羅の武器は、大きな銃の形だということ。

 

 

「やっちまいな」

 紫磨の一声と共に、2体の式神の内一体である牙弁羅が、空中を移動しながら4匹の人狼に向かっていく。

 

「ウオオオオオオオォォォオ!!!!」

 炎の攻撃符で体毛を焦がされた最初の人狼が、その爪で牙弁羅を切り裂かんと爪を振るう。

 

(ビュゥンッ!!)

 

「・・・・・・・・・」

 

(ズバ────────ッッ!!!)

 

 しかし牙弁羅は、熟練された一瞬の動きでその爪を掻い潜ると、股下から一刀で人狼の肉体を縦に両断した。

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

『す、すっげ〜〜!!!』

 大袈裟に驚く小弓天。

 

「あれが・・・ 紫磨バ・・・ 女将の使ってた式神か・・・。 淫魔の徒党をあれだけで一つ潰したっていう・・・」

 剣の牙弁羅。銃の撃斗羅。

 紫磨が作り出したその2体の式神は、近距離、遠距離と、理想的なコンビネーションを発揮し、敵を消し去る上級式神である。

 かつて、数百という邪鬼の群れや、十数の淫魔の徒党を、数分で滅ぼしたという伝説は今でも誠しやかに語られている。

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 一体目の、瞬く間に斬られた姿を見た残り3体の人狼が驚く間もなく

 

(バシュウウゥンッッ!!!!)

 

「っっ!!?」

 陽光色の光の奔流が、人狼の一匹を包む。

 

(ジュッ────!!!)

 

 最初から欠片も動いていなかった撃斗羅は、その場所から全く動かないまま動き回る人狼を一撃に捉えた。

放たれた霊力の光弾は、その一撃で人狼の頭部を完全に消滅させたのだ。

 

「「っっ!!!」」

 驚愕する残り2匹。

 

 そして、牙弁羅はその一瞬の隙を見逃さない。

 

(ズバ────────────ッッッ!!!!)

 

 3体目の人狼は、右脇腹を突かれ、そのまま横一線に薙ぎ払われる事で、上半身と下半身が真二つに別れる。

 そのまま回転し、紫磨達の目の前の地面にグチャリと落ちる人狼の上半身。

 下半身は血を噴出し、その場で前のめりに倒れた。

 

「グ・・・ グ・・・」

 人狼の生命力は凄まじい。下半身を失った上で、両の手で立ち上がろうとしている。

 

「ヒッ・・・!!?」「ひゃあっ!!?」

 その光景に驚く小百合と、小弓天。

 

「うわっ!? 嘘だろ!!? まだ生きてるのかよ!!!」

 結界の中には入って来れない事はわかっていても、那緒も仰天した。

 

 それを

 

「・・・・・・ハン、生き汚いね」

 

(グシャアッ!!!)

 

 紫磨は、容赦なくその頭部を踏み潰した。

 飛び散る肉片。飛び出している目玉と脳漿。ビクビクと震える残りの肉体。

 

 しかし、それより何より、唇を吊り上らせ、ニヤリと哂う紫磨の表情が恐ろしい。

 世界の平和を守る神藤の元巫女というよりは、悪の組織の大幹部の方が遥かに似合いそうなほど悪辣な魅力を持った笑みである。

 

 

「・・・怖えぇ。・・・もうアタシ、もう絶対逆らえねぇ」

 結界の中で自分に長生きの誓いを立てる那緒。

 小百合はもはや先程から目を閉じて耳を塞いでおり、小弓天は泡を吹いて気絶している。

 

 

「グル・・・ ウウゥゥ・・・」

 残り一体残された最後の人狼は、牙弁羅、撃斗羅、そして紫磨に囲まれ、弱々しく唸る。

 

(タッ────・・・)

 

 そして次の瞬間には、自分の完全な不利を知り、脱兎の如く逃げ出した。

 

「あっ・・・!? 逃げやがった!!」

「・・・・・・・・・」

 那緒は焦るが、紫磨は涼しい目で見ている。

 

「いいのかよ!? 逃げちまうぞアイツ!!」

 追いかける気がまるで無い様子の紫磨に対し疑問を問う那緒。

 そして紫磨は

 

「撃斗羅」

 そう、一言。

 

「・・・・・・・・・(ガチャリ)」

 撃斗羅は、重い銃身をゆっくりと、人狼が逃げていった方向へと向ける。

 銃口に集められていく霊力の光。

 

(バュウッ────────────!!!!)

 

 そして光弾は、発射された。

 

「・・・・・・え? ウソ? あれでいいの?」

 どう見ても、適当な場所に適当に一発撃ったようにしか見えない。

 

「・・・・・・」

 紫磨は、無言で目を閉じ、片耳を、光弾が撃たれた方向へ向けて、耳を澄ましている。

 

「???」

 ワケの分からぬまま、同じ恰好を真似る那緒。

 すると

 

ギャウウウウウウウウウウウ・・・・・・・

 

「ええ!!?」

 遠くから山彦のように微かに木霊する、獣人のものらしき断末魔の悲鳴に、那緒は驚いた。

 

「ん〜・・・ いい音色じゃないか」

 ほんの少しだけ、恍惚を表情に見せる紫磨。

 

「・・・すっげ怖いわ。あんた」

 那緒は、深くため息をついた。

 

 

 紫磨が指をピッピと動かすと、那緒たちを包んでいた結界が消え、4枚の護符は静瑠の手元に戻る。

 気付くと、2体の式神も消えていた。

 

 やれやれとばかりに、葉巻を咥え、火を点ける紫磨。

 

「・・・さ〜〜て、しんどいけれど、もう一仕事するかね」

 首をコキコキと鳴らしながら、気絶している小弓天を掴み、天岩戸の方角へと歩く。

 

「ああそうそう。もう獣人どもも黒子どもも、あんた達の前には出て来ないから安心して帰りな。

さっさと旅館に帰って、早速罰としてトイレ掃除でもして。・・・せいぜい、奇麗に磨いとくんだね」

  抑揚の無い声で言い放つ紫磨。

 

「何でわかるのさ?」

「ここら辺の山は、あたしにとっちゃ庭みたいなもんさ。ゴミ虫どもがどこに何匹いるかなんてあたしにゃ丸分かりだよ」

「・・・わかった。小百合は任せてもらうよ。

それはそれとして・・・ 急いでやってくれよ、早く静瑠の方にさ」

 那緒もまた、静瑠を心配している。

 

 しかし

 

「あたしが行くのは静瑠の方じゃないよ」

 紫磨は、とんでもないことを口にした。

 

「・・・・・・ハァっ!!?」

 思わずそんな言い方をしてしまう那緒。

 

「お、おいっ!! なんでだよコラッ!! 娘助けに行かないでどうするんだよ!! あんな式神持っててさ!!!」

 那緒は普段にはない剣幕で、紫磨に食って掛かった。

 

「・・・それがあたしの役割ならそうするけどね、あたしにゃあたしの役割ってもんがあるのさ」

「なんだよ役割って!! 娘助けるより大切な役割なんてないだろ!!」

 孤児だった那緒は、こと母娘に関しては譲れない強情さと義憤を持っている。

 

「・・・フン。あたしが現役の巫女だった頃にそんなこと言ってたら、淫魔のオモチャにされて今頃殉死戦士の墓碑の名前の一つになってただろうさ」

 言葉を選べばいいものを、紫磨は敢えて悪辣な笑みで憎まれ口を叩く。

 

「っっっ!!!」

 これまでに無く激しい感情を瞳に込め、紫磨を睨みつける那緒。

 ・・・これ以上おちょくると、実力を無視して【自分が助けに行く】と言い出しかねないだろう。・・・それは実に面倒臭い。

 

「・・・ま、落ち着きな。あたしが助けに行くより、もっと早くそこに着く奴がいるんだよ」

「・・・へ?」

 目をパチクリとさせる那緒。

 

「ほら、聞こえるだろ?」

 紫磨の言うとおりに耳を澄ましてみると、遠くから、バラバラバラ・・・という音がする。

 

「・・・・・・ヘリ? あっ・・・」

 ヘリの翼の音に、那緒の中にある人物の顔が浮かんだ。

 

「あいつか・・・」

「そういうことさ。さっき連絡があってね」

「・・・そういうのは早く言えよ・・・」

 ガックリと肩を落とす那緒。

 あのデタラメがやってくれるなら、絶対安心だ。

 

「って・・・ それじゃあ、女将の役割って・・・」

「変なのがやってきたみたいでね、そっちの相手をしなくちゃならないのさ」

「変なの・・・?」

「ま、適当に相手してくるよ」

 紫磨は再び歩き出す。

 

「あ、あたしは・・・」

 那緒は、言いかけてやめた。

 自分には自分の役割がある。 紫磨女将も、付いて来て楽が出来るなら、そう言う筈だ。

 ・・・つまり、あたしは・・・ 戦力外。

 

「悔しい、な・・・」

 絶対に強くなる。

 紫磨の後ろ姿を見送りながら、那緒はそう胸に誓った。

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

    一方  天岩戸  入り口前  山中

 

 

 

「んっ・・・ んぶっ・・・ う、ぶっ・・・」

 人が足を踏み入れぬ山中、じゅぷじゅぷという水音と共に、くぐもった声が小さく響く。

 

 静瑠は、何十分もの間、獣人達に執拗に犯され続けていた。

 

(ジュップ、ジュップ、ジュップ、グプッ、ジュブッ・・・!!!!!)

 

 一度に3体もの獣人に犯され、貫かれ、獣精を放たれては、獣人達は次の獣人と交代し、また新たな牡棒に貫かれた。

 精を注ぎ込まれ、抜かれるたびに秘所、肛門からは、まるで床に落ちたマヨネーズを、誤って踏み潰した時のように、獣人の精液がドボドボと噴き出す。

 

「あっ・・・ あっ・・・ ぐ」

 限界を超えて注ぎ込まれた精液が、体を逆流し流れ出るその感触。

 最初は身もよだつほどのおぞましさと苦しさ、羞恥のあったこの行為も、脳が麻痺しているのか、

今や、それすらも排泄の開放感から、快感にすらなってきている。

 

(ズグ、ズブ、ブッ・・・!!!)

 

「あっあ゛、あ・・・!!」

 しかし獣人達は、静瑠が中のモノを満足に出し切ることすら許してくれず、次の挿入を開始する。

 

 獣人達の中には、我慢できず、先端の部分だけでも静瑠の体に擦り付ける獣人や、静瑠を凝視しながら手淫を行う獣人までいた。

 そしてその獣人どもは、例外なく射精したスペルマを、まるで射的のように静瑠の肉体にかける。

 そのたびに静瑠の体は獣人のザーメンでベトベトに染められ、白桃色の肌が白濁で穢されていく。

 

 更に、その獣人達の隙間を縫って、黒子達の触手は、静瑠の肌に擦り付き、舐め回し、肉が吸い上げられる。

 特に重点的に攻められたのは、静瑠の美しき巨乳だった。

 

 乳輪を触手の縄でキリキリと締め上げられ、静瑠の大きな胸はより強調され、一つの球体のようになっている。

 右の乳首を攻めている触手は、イゾギンチャクの様な、細い何十本もの触手糸を持つ形で、その糸の一本一本で細かに、それで激しく静瑠の乳首を弄ぶ。

 まるでオモチャで遊ぶかのように乳首を引っ張り、押して潰し、転がし、弾き、全ての触手糸が、それぞれ全く違う動きで激しく責めた。

 

「んうっ・・・! ん、ん・・・っっ!!」

 

 そして左の乳首には、蕾(つぼみ)の様な形をした触手が近づく。

しかし、蕾のような形と思っていたそれは、突然 クパ・・・ と、大きく口を開けた。

そのカタチは、まるで人間の口そのものだった。

しかし、歯も無く置くがひたすら空洞であるその口は、鯰(なまず)の化け物の様にも見える。

 

 口触手は、思いきり静瑠の左乳首に

 

(バク・・・ッ ヂュ、ヂュウウウウウッ────)

 

むしゃぶりつき、強い力で吸い上げた。

 

「やっ、ああっ・・・!! ち、乳首は・・・ダメッ・・・!!」

 既に催淫液によって、痛いほどに起ち上がった乳首には、あまりにも感じすぎて痛みさえ感じてしまう。

 口触手は、出る筈の無い静瑠の乳首から乳を欲しがる赤子のように、ひたすら強い力で吸い上げた。

 

(チュバ、チュバ、チュバッ!! チュ、チュ、ヂュウウウッッ────!!!!)

 

 人間離れしたとんでもない力で吸われ、そのまま引っ張られることで、乳輪がその方向へ変形する。

 

「やっ・・・ 痛・・・っ 痛、いぃっ・・・!!」

 乳房が根元から引きぎられそうな感覚に、痛みを訴える静瑠。

 

 

 しかし、触手の責めはそれだけには終わらなかった。

 いつまでも出ない乳に機嫌を悪くしたかのように、口触手は ペッ と、濡れそぼった乳首を離す。

 そして口触手と、糸触手はすす・・・ と、静瑠の乳首から一歩退く。

 

「(・・・・・・なん・・・ やの・・・?)」

 当然ながら、静瑠にはその理由が分からない。

 だがそれを疑問と思うも束の間、静瑠の胸の前には、またも新しい形の触手が現れた。

 

「・・・・・・っ?」

 今度の触手は、先端がアリクイの舌のようにとがっており、その根元がスポイトのように膨らんでいるという、奇妙な形だった。

 それが二本。静瑠の乳首の前に近づいていく。

 

 尖った舌の様なものが、静瑠の乳首の先端を突付いた。

 

「あっ、ああっ・・・!!」

 その感触は、笑ってしまいそうなほどにこそばゆく、そしてやはり静瑠の体はもどかしい快感に震えてしまう。

 

 そこで舌の先端は、信じられない行動に出た。

 チュルチュルと動きながら、乳首の中心、本来は子を身篭った母親となった時にしか用が無い、乳穴へと、進行を開始したのである。

 

「あ、あああああっっ────!!!!?」

 予想もしていなかった場所への強引な侵入。

 チュクチュク、クチュクチュと激しい音をさせ、釣り上げられた魚のようにビチビチと動き、静瑠の胸もまたその激しく躍らされる。

 

 気付けばもう既に、舌のある程度、1センチ以上が既に静瑠の乳首の中に埋没し、広がりきった乳首がその舌を咥え込んでいる姿は、逆に乳首の小さな穴からこの触手が這い出て来たような錯覚すら与えた。

 

 もちろん、それで終わりではない。

 

「・・・・・・っっ!!?」

 突如、胸の中に広がる違和感に、眉を歪ませる。

 触手越しに伝わる、ドクドクという流れる音と共に、何か液体状のものが浸透していき、胸全体が焼けるように熱くなる。

 それはまるで、胸の内側から火で焼かれているよう。

 

「ああっ・・・ ぐ・・・ うっ・・・!!」

 貫かれ犯され続ける両穴と合わさり、快楽と苦痛の地獄に挟まれ、静瑠は呻いた。

 

 そして

 

「ひうっ・・・!!? あ、あっ・・・」

 ムズムズとした感触が、両胸から脳に響いたかと思うと、

 たちまち、静瑠の形の整った巨乳は更に張り、膨れだした。

 

「えっ・・・ あ・・・??」

 自分の体に起こった変化に、さしもの静瑠も驚きを隠せない。

 しかしそれはまだ序の口であった。

 

「(あっあ・・・ なんか・・・ なんか・・・ 来る・・・っ!?)」

 静瑠が何かを感知した時、乳首を犯していた触手は抜かれ、乳房の根元を縛っていた触手が、更に強くそれを絞り上げた。

 

(ビュウッ! プシュウウウウウッ────・・・)

 

 その時、静瑠の乳首から、何かが爆ぜた。

 それは・・・

 

「あっ、ああっ・・・ ウソ・・・ そん、な・・・!!!」

 それは、母乳だった。

 子供が出来たわけでも何でもないのに、乳首の先からはピュウピュウと、ミルクが噴射される。

自分の乳房から噴き出す白い液体に、オモチャとして弄ばれている己の肉体に、静瑠は狼狽した。

 

 それと共に、様子を見守っていた二本の口触手は、喜び勇むかのようにその口を大きく開き、

静瑠の乳首に、再びむしゃぶりつく。

 

「ああっっ!!!」

 

(チュ────、チュ────、ヂュウウウウウウウ!!)

 

異形の乳飲み児は、人智を超える吸い口の強さで、静瑠の母乳をそれは美味しそうに吸い、ゴキュ、ゴキュと溜飲する。

 

「はっ・・・ あっ・・・ くうぅ・・・っ」

 乳首の穴が吸われることで開き、乳房内の乳が吸い出される。

その奇妙な感覚が、だんだんと独特の開放的な快感として感じ始め、体はつい身悶えてしまう。

 体の穴という穴を貫かれ、触手には強制的に授乳を余儀なくされ、誇り高く高貴な美しき戦士は、

もはや欲望の捌け口であり、玩具だった。

 

 

 そして静瑠の口は、新しき馬頭の牡棒で再び塞がれる。

 

「ん、ん゛んぅっ────!! ううっ、ううっ、んんっ・・・・」

 口も、胸も、膣も、アナルも

 髪の先から骨の髄、魂の端まで、生贄となった美しき女戦士のすべてが、異形の化け物たちに蹂躙されていった・・・

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

 それから更に、陵辱の時は続いた。

 

 何度もの代わりがわりの輪姦。膣内、口内、腸内への射精、吸われ続ける乳房。

余す所の無い全身への陵辱に、静瑠は体力を奪われ、もはやまともな抵抗すら出来ない。

 

「ん・・・ んうっ・・・ んぷ・・・っ」

 更に、催淫液による体の火照り、性感の異常な高まりは、既にピークへと達し、脳を侵し、意識を白く霞ませ、思考する力を失わせていた。

 最初は苦痛でしかなかった巨根による3穴攻めも、今や脳天の奥まで焼き尽かせる快感に変じている。

 

 それでも静瑠は、戦士としての精神力で、なんとか理性の火を精神の端に保っていた。

 

(ジュプッ! ジュブッ!! ズグ、ズブッ・・・!!!)

 

「うっ、うっ・・・ うっ・・・ んうっ・・・」

だがそれも、3本の剛直を突き入れられるたび、胸を吸われるたび、遠く吹き飛んでしまいそうになる。

少しでも気を抜けば、2本の牡棒に合わせて腰を振り、口の中に入れられている1本に、自分から舌を這わせてしまいそうだった。

 

 

 

「あっ・・・ あ・・・」

 

 そういえば・・・ 自分はどうして、犯されているのだったか。

 

 頭がぼんやりと霞んで、思い出すことが出来なくなってきた。

 

獣達に囲まれ、犯され・・・ 何故、自分だけ人でなくてはいけないのかと、欲望が問う。

 

 いけない・・・ もう・・・ 壊れ・・・

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

「そろそろ、壊れるか・・・」

 木の上から見ていた黒子頭は、戦士の限界を感じ取った。

 

 実に長い間もったものだと感心してしまう。

 だが、この陵辱は我慢だの、精神力だのという次元のものでは元々無い。

 麻薬による禁断症状を、一人だけで克服できる人間が現実には存在しないのと同じ様に。

人の心である限り、どんなに強い精神力であろうと、崩壊しない訳がないのだ。

 

 もう後は、壊れきった女から、快楽と引き換えに封印の解除を提示すればいい。

 

 ・・・では、その後は・・・?

 ああ、そうだ。それを全く考えていなかった。

 タオシー様から学んだ、【合理的な行動】というものに従うなら、情報を引き出し次第殺してしまうべきだろう。

 

 だが・・・ 欲しい。 棄(す)てるには、勿体無い。

 壊れた後でもいい、あの女を自分の所有物にしたい。

 あの獣人どもみたいに犯すとかではなくて、もっと別の・・・

 

 ああ、そう、そうだ。 色々な服を着せてみたり、装飾品を付けてみたり・・・ 食事を与えてみたい。

 小さな部屋の中に飼って、話しかけたり、眺めたりして。

 これがどういう感情なのかはわからないが、タオシー様がお許しさえくれたら・・・

 

 ああ、楽しみだ。

 なんだかとても、その時が待ち遠しい。

 タオシー様とももうすぐ会える。

 

 ・・・ああ、待ち遠しい。

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

「うっ・・・ うっ・・・ うっ・・・ うっ・・・・・・ ・・・・・・」

 

 黒子頭が勝手な考えを繰り広げている中、静瑠は、ほとんどその目に理性を失いかけていた。

 もはや抵抗どころかまともな反応すら出来ず、糸の切れた人形のように揺らされ、乳を吸われ、精を注がれ続けている。

 

 もう・・・ 何も考えられない。

 このままでは、理性(こころ)は崩壊し、本能だけが残った自分の抜け殻は、情報だけを抜き取られ、延々とこいつらの慰み物になり続けるだろう。

 ・・・慰み物になってしまうのは、あくまで戦士としての自分の甘さの責任。

 

 しかし、その甘さで仁君達に危機が及んでしまうことだけは、許されない。そして何より、自分自身が許さない。

 残された最後の手段は、残った力で、理性だけではなく・・・ 自分の精神、記憶のほとんど全てを、自ら閉ざすこと。

 それは、退魔の戦士の中でも、精神を鍛えた一流の戦士にしか出来ない、最後の手段。

 

 生きた人形になってしまうことは変わらない。万一助かっても、再び精神が元に戻る保障すら絶望的だ。

 だがそれでも、最後に残った誇りすら失ってしまう事の方が恐ろしい。

 

 

 ・・・それとも、いっそ・・・ この行為を、受け入れてみるか?

 

あの時みたいに・・・

 

 

「(あの・・・ とき・・・?)」

 一瞬頭の中をよぎった欲望の声が、霞みきった静瑠の精神に、波紋を生じさせた。

 

 

あの時、 あのとき、 アノトキ。

 

そう、あれは・・・

 

 

 静瑠の中に、かつての過去の記憶がフラッシュバックする・・・

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

「・・・・・・これ・・・ あなたの・・・ そう、私・・・ あなたに・・・ 斬られた・・・ のね」

 

「あ、ああ・・・ 堪忍や・・・ 堪忍して・・・っ!! 

ウチは・・・ ウチは【神藤】なんよ!! 退魔の戦士の、神藤静瑠やの!!! あんたと一緒には・・・ 生かれへん・・・!!!」

 

「ふふ・・・ すごく・・・ ざん・・・ ねん・・・。 でも・・・ 貴女に、斬られるの、なら・・・ 私は・・・」

 

「あっ、ああ・・・ ■■■■■■・・・ でもウチ、本当はこんな事・・・ しとうなかった・・・っ!!!」

 

「私の・・・ために、泣いて・・・ くれる、のね・・・ いいわ・・・ それだけで。 大好きよ・・・ シズ、ル・・・」

 

「■■■■■■・・・? ねえ・・・ ■■■■■■っ!? ────────────っっ!!!!!」

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

「ウチ・・・は・・・」

 

 ・・・自分は、何をやっている? 何を弱音を吐いている?

 

 そうだ。こんな獣どもと、彼女を比べるなんて、どうかしていた。

 

 ここで屈することは、彼女への最低の裏切り。そして彼女を穢すことに他ならない。

 

自分一人の命ではないんだ。負けて・・・ 

 

「負けて・・・ たまるか・・・っ!!!」

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

「!!?」

 もうすぐ壊れるか、そう思っていた女の瞳に急に宿った強き意志の炎に、黒子頭は驚きを隠せない。

 

 そして同時に

 

(バラバラバラバラバラバラバラバ・・・・・・・・ッッ!!!!!!)

 

 空に大きく響き始めた、ヘリの翼の音。

 

「なんだっ!!?」

 

「この・・・ 音は・・・」

 静瑠と黒子頭は、同時に空を見上げた。

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

  封神山  上空  空軍輸送ヘリ  内部

 

 

「いや、すみませんな。ここまで運んで頂いて」

 ライフルを腰に固定するベルトをギュッと縛り、紳士服の老人はヘリのパイロットに感謝を述べる。

 

「いいえ。ミスター瀬馬。あなたのたっての願いとあらば、我々CIAは協力を惜しみません」

 パイロットは米国人の金髪青年だが、流暢な日本語で応答していた。

左手で操縦桿を握ったまま、瀬馬の方を向き、右手で敬礼する。

 

 そう、乗っているのは、神社で鬼麿を預かり京都まで連れて行った瀬馬棲胆である。

 今も彼は、麻衣達と出会った時と同じく、紳士服を着こなしている。

 ただ、今回は、その紳士服がほとんど見えないほどの重装備を瀬馬は体中に帯びていた。

 

 両肩にロケットランチャー【RPG7】。腰にスナイパーライフル【ルガーM77】。両腋のホルダーに、サブマシンガン【イングラムM11】。

 そして肩にクロスして巻いているのは、手榴弾【M38マークU】を十二個装着出来るベルト、それが2つ。

 背には、パラシュートも忘れていない。

 

 まるで軍隊一つとでも戦争をし兼ねん程の重装備。その銃器のどれにも、小さく逢魔を現す【OUMA】のマークがあった。

 

「では」

 瀬馬もまたパイロットに敬礼し、立ち上がる。

瀬馬は、ヘリのドアロックを外し、戦地へと通じる扉を開けた。

 

(ゴォォォォォオオオオオオ────・・・・・・!!!!)

 

素人なら立っていられないほどの風が、ヘリの中を暴れまわる。

 

しかし瀬馬は、涼しい顔のまま下を見つめた。

目標良し、降下地点確認。・・・全準備、OK。

 

「ご武運ヲ」

「ありがとうございます。 ・・・・・・・と〜〜うっ!!!

 老人は何の合図も無く、自殺行為とも思えるダイブを開始した。

 山の中に、小さくなり消えていく、瀬馬の姿。

 

 ポム。と、山林の中、パラシュートの○印が見えた。

 

 

「・・・こんな山ノ中、迷いの無い降下・・・ さすがは伝説のエージェント。“ジェントルマン”は不滅か・・・」

 ヘリパイロットは、伝説の人間の勇姿を確認すると、故国へとヘリを進めた。

 

 

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 

 

 えーと・・・ これ、本当に淫獣聖戦?(自分で言うかね

 僕が悪いんじゃないんです、勝手に動く瀬馬が悪いんです(コラ

 

 ・・・ははは。サブキャラに何話も用意するアホは数々の小説の中で僕だけですね。・・・ごめんなさい

皆さんもうちょっと我慢してください。もう少しで麻衣達に出番が再び。必ず。

 

 ご指摘を受けて、静瑠乳攻めも追加。イソギンチャク触手はDNAにもありましたね。ちょっと悔しいんでオリジナルで口触手というのも。

 ミ○キーはママの味〜〜♪(ぉぃ

 



BACK       TOP       NEXT