鬼獣淫界   岩山

 

 

 

 

 ビュウビュウと風が吹きすさぶ、荒涼とした岩山。

 そこには草木一本さえ生えておらず、生き物の気配など全く感じられない。正に鬼獣淫界に似合う景観と言えた。

 

 そんな険しい岩山の中を進む、二人・・・ いや、三人の姿。

 

 

「ちっ・・・」

 その内の一人、岩山の色に溶け込むかのような灰色のボロ布を、砂塵避けに身に纏った少年。

 

 亜衣の息子、カイである。

 

 

「(まったく・・・ 鬼獣淫界というのはどこもこうなのか?

 母上の話してくれた地上界が嫌でも恋しくなるな・・・)」

  

  と、心の中でボヤいた直後に、自分の後ろが遅れている事に気付き

 

「おい、デクノボー! ぐずぐずするな!!」

 と、ある人物の名前を呼ぶ。

 

「は、はっ・・・!」

 慌ててカイの元へ駆けつける、一人の巨漢の男。

 

 そう、木偶ノ坊である。

 

「母上を助ける為にわざわざアーミィの術でニセの石像まで用意したんだぞ!

 それをチンタラチンタラ・・・ デクノボーはデクノボーなりにしっかりと役に立て!!」

 

「も、申し訳ございませんぞな・・・」

 カイに頭ごなしに怒鳴られ、木偶ノ坊は大きな体を心なしか縮こませている。

 

「もー、お兄ちゃんやめてよ」

 それを制したのは、木偶ノ坊の肩に乗っているアーミィだった。

 

「でくのぼーさんは周りに危険が無いかとか、食べれそうなものとか探しながら歩いてたんだから。

 怒鳴っちゃカワイソウだよ」

 

「ぐっ・・・ ・・・・・・・・・ そーか」

 妹に注意され、恥ずかしさに少しだけ赤面すると、プイとそっぽを向く。

 

 カイも、自分に非がある上で逆切れ的に怒鳴るようなことはしない。

 ただ、不機嫌そうにズンズン前を歩いていく。

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

      淫魔の社  地下保管庫の奥底

 

 

 

「アーミィ、わかってるな?」

 カイの最終確認とでも言うべき問いかけに

 

「うん、だいじょうぶ」

 アーミィはこくんと大きく頷き、前方を見上げる。

 

 カイとアーミィの目の前にあったのは、天井に届きそうなほど身の丈の高い、仁王のような男の石像。

 その顔は怨嗟や屈辱、怒りを宿しており、最初に見た時は石の像にはあるまじき迫力を感じたものだが・・・

 

「随分怒り猛りながら石像にされたらしいな。

 だが・・・ それも今日までだ。 アーミィ、やれ」

 

「うん」

 カイの命令の言葉に応え、アーミィは空中に指を突き出し、術式をその場で編んでいく。

 それは石化解呪の術式と言われるもので、中級程度だが、常識ではアーミィの年齢で出来る術式ではない。

 

 

(コォォオオ・・・・・・)

 

 途端に指からは紫の光が出現し、それはアーミィの手の動きに合わせ、一気に巨漢の石像を包み込んだ。

 

 靄の様な光に包まれた石像は、段々とその姿を変質させ、元の存在へと・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・ はっ・・・!!?」

 長い沈黙を経て、石像だった男は思い出したかのように人間として覚醒する。

 

「ここは・・・ ・・・・・・・・ っ!! 亜衣様、麻衣様・・・!!!」

 そうして続いて、石に変えられる寸前までの記憶を思い出したところで

 

 

「おい」

 木偶ノ坊の遥か下方から、少年の呼ぶ声。

 

「・・・・・・?」

 聞き覚えの無い、しかし誰かに似ている声に、その方向を見下げる木偶ノ坊。

 するとそこには、とてもある人物に似た特徴のある、二人の少年少女が立っているではないか。

 

 

「む・・・ その方は・・・ どこぞの童(わらし)でございますぞなもしか・・・?」

 何しろ、意思にされている間、淫魔の社に捕らわれてからの事情を知らないのだから、この反応も無理は無い。

 

「そうゆっくりしてられんからな。まずは時間の経過から教えてやる。

 お前がタオシーに石にされてから、今はほぼ一年近くだ」

 

「い、一年・・・!?」

 

「そして俺たち・・・ 俺様はカイ、そしてこいつは俺様の双子の妹、アーミィだ。

 共に母上、天津亜衣から産まれた」

 

 

「亜衣様から・・・!?

も、もしや・・・ あなた様方のお父上は・・・」

 

「・・・・・・ 邪淫王カーマ」

 狼狽し始める木偶ノ坊を前に、カイはこれ以上無く簡潔に、嫌悪の感情を込めて言い放つ。

 

「・・・・・・・・・!!! な、なんと・・・っ!!」

 木偶ノ坊は、世界のすべてが壊れたかのように、ガクリと膝を落とす。

 

 妄言や虚偽の類と思えば楽であったろう。

しかし、そうするにはあまりにも目の前の二人は亜衣に似すぎていて、忘れもせぬ男児の方は憎きカーマの面影も多く残している。

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

 その後は、カイが語る簡素な説明により、自分の石化していた間の経緯を知った。

 もちろん、母亜衣との秘め事は話さず、部分によってはアーミィに聞こえない様に気を配りながら。

 

 

「これで大体全部だ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「(・・・まあ、この反応は当然か)」

 

 木偶ノ坊は、一層厳しい顔をして黙っている。

 それもそうだろう、守るべき大事な人と憎き相手の間に生まれた子が目の前にいるのだ。

 

「(俺達の事を認めたくないか、疎ましいか・・・ どちらにせよ、仲良くなどは無理か)」

 などと、静かに思考していたカイだったが

 

「・・・・・・カイ様も、お辛い思いをされたのですな・・・」

 

「・・・・・っ!?」

 全く予想していなかった言葉に、戸惑う。

 憎い敵の子だというのに、何故そういう目で見られて、そういう言葉がかけられるのか。

 

 カイは自分の出生を知ってから、ずっとそれをコンプレックスにしている。

 もし自分で自分を見つめた場合、到底許せるものではないだろうと、そう思っていたから。

 

「様だと・・・? わかっているのか? 俺の父親は・・・」

 

「この木偶ノ坊。いまだ心の整理が付いてはおりませぬ。

しかし、カイ様、そしてアーミィ様は他ならぬ亜衣様の愛するお子であり、そして何より・・・

 亜衣様を何より大事に想っておられると感じ取れ申した。そんなお優しいお二人を、どうして邪険に思えましょう。

 お二方は、この木偶ノ坊にとっても大事な御子様でございます」

 

  なのにこの木偶ノ坊という奴は、自分を憎き敵の子を大事な方という。

 

 カイは知らない。

 木偶ノ坊が、とある少年と長い時間を共に過ごしたこと。

 そしてその少年も、血の宿命と苦悩を抱えていたことも。

 

 

 

「しかし、カイ様のご苦悩も、これ全ては・・・ 元を正せば某の至らぬばかりに・・・

ぐ、某は・・・ 某は・・・・・・っ!!!」

 

 自責の念に頭を抱えながら、激しく苦悶する木偶ノ坊に

 

「自分を責めている暇は無いぞ。デクノボウ」

 カイが静かに一括する。

 

「俺達は白母上を救いたい。しかし悔しいが、それには足りないものが多すぎる。

 それを探し、手に入れる為には、お前が必要だ」

 

「某が・・・」

 

「俺様の子分二号として、母上を助ける為の探索に協力すると誓え。

 ・・・誓えないなら、もう一度石に戻るなり、このまま親父に挑んで死ぬなり自由にしろ」

 

  今のカイは、素直に【一緒に来てくれ】と言える性格ではない。

 一人で色々強くなろうとしている間に、昔のバカ正直さはどこかに落としてしまったから。

 だから、【お前が必要だ】が、カイに可能な精一杯の【素直な言葉】である。

 

 しかしその本音は、カイのまるで小学生が誕生日のプレゼントを心待ちにするかのような、期待感と焦燥感、不安が複雑に入り混じった表情を見れば木偶ノ坊であろうとてわからない道理は無い。

 

「・・・わかり申した。某、木偶ノ坊はこれより、カイ様の子分となりますことを誓いまする」

「・・・・・・よし」

 

 その時、新たな結束が出来上がった。

 

「やったぁ! にごー! にごー! デクノボーさんにごー!!」

 子分の子分に当たる存在が、そして新たな友人になれそうな相手が出来て嬉しいのだろう。

 さっきまで不安そうに後で見ていたアーミィは、満面の笑顔で跳びはねていた。

 

「喜んでいる暇は無いぞ。アーミィ」

「あ、そっか。デクノボーさんのかわりを作るんだっけ」

 

 木偶ノ坊の石像が消え失せては、事がばれてしまう。

 だから二人は、アーミィの術でニセの石像を作り代わりにする、までを計画として立てていた。

 

「アーミィは今すぐ石像を作れ。俺様はデクノボーを社から出す」

「わかりましたっ! ボス!」

 

 そうして、母の救出計画の最初の一は成功したのだった。

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

     鬼獣淫界  岩山

 

 

 

 ・・・と、そういった経緯で、一見奇妙な3人チームが出来上がっているのである。

 

 

「・・・・・・・」

 無言で早足になっていたカイだが、急にピタリと立ち止まる。

 

「・・・・・・・・・ おい、そこの岩陰にいる奴。出て来い!」

 そして、前方の岩の方に向かって怒鳴ると

 

 

「・・・・・・・・・」

 その岩陰から、一人の女性がおどおどとした風で、少しだけ姿を現わした。

 

 年は母亜衣と少々違うぐらいだろうか、紫がかった長い黒髪と、上品ささえ感じる整った顔立ち。

更には半裸に近い状態の彼女の体型は、中々に引き締まっていて、モデルにも引けをとらないだろう。

しかしそれと相反して、彼女の様相は酷いものがあった。

 

彼女が纏っているボロ布は、ほとんど身を覆う役目を担っておらず、かろうじて胸や局部といった部分を隠すのがやっと。

顔や肩などにも砂埃がついており、まるで前時代的な奴隷のようである。

 

女は、小動物の様に怯えながらカイ達の方を救いを求める目で見つめていた。

 

 

「(あれは・・・?)」

 目を細め、女性を凝視する木偶ノ坊。

 どこかで会った気がするが、どうにも思い出せなかった。

 

 亜衣か、麻衣でもいれば意外な再会になっていただろう。

 彼女こそは、かつて天神学園でアイドル的存在であり、白毛鬼によって鬼獣淫界の僕として亜衣、麻衣を罠に嵌めた女。

 高持冴子だということを、この場に知る者はいない。

 

 

「さっきから着いて来ていたな。俺様達に何の様だ」

「あ、あの・・・」

 カイに高圧的に尋ねられ、冴子はようやく身を乗り出し

 

「助けてください・・・! 私・・・ わたし・・・」

 カイの目の前までふらふらと歩くと、跪いて懇願した。

 

「たすけて、って・・・?」

 

「私、もう一年ぐらい前からこの世界にいて・・・ 来る日も来る日も、頭に角が映えた化け物に・・・

 やっとの思いで逃げ出して来たんですけど・・・ どこをどう走ったか、どうすれば帰れるかもわからなくて・・・

 お願いです!! 助けてください!! わたし・・・ 私、元の世界に帰りたい・・・」

 

  カイ達の前で、泣き崩れる冴子。

 その姿と言葉から考えれば、カイや木偶ノ坊にとってはそれまで何があったか、想像するのは容易であった。

 

 

「・・・女、名前は?」

 腕を組んだまま、カイは冴子に対して名を尋ねる。

 

「さえこ・・・ 高持冴子です・・・」

「サエコ・・・ か」

 何かしら考え込んでいる様子のカイ。

 

「カイ様・・・」

 後ろから木偶ノ坊が恐れながらと進言しようとするが

 

「皆まで言うな、デクノ・・・」

 うるさいな、わかったという風に返事をしようとしたところで

 

 

「・・・・・・(ピクッ)」

 カイの人間よりも少しとがった耳が、ピクンと反応する。

 

「む・・・!」

 カイと同じものを感じたのだろう、木偶ノ坊も立ち止まった。

 

「わかるか? デクノボウ」

「はい。・・・多いですな」

 

「え? 何? 何?」

 不穏を感じ取る二人に対し、アーミィはわかっていない。

 

 

 そして

 

 

「キキキキ・・・」

 

「ゲヘッ ゲヘッ」

 

 

                                          「ケケケケ・・・」                          「いたぞぉ・・・」

 

 

 

 そこら中の岩陰から聞こえてくる、無数の邪鬼、魑魅魍魎の笑い声。

 

 

「大男と女のガキが二人だ・・・」

 

     「大男さえやっちまえば、ちと若いが・・・ ヒヒヒ」

 

 

 などと、聞くに堪えない上に無礼極まりない話が聞こえてくる。

 特に自分までアーミィと同じく女児扱いしている所が無礼極まりないにも程があるが・・・

 

 クソ親父ならともかく、数秒後には消し炭になっているであろう相手に、一々怒りの感情は沸かない。

 

 冴子の方を見ると、よほど色々な目に遭わされたのだろう。

 見てみて憐れになるぐらい縮こまって、ガタガタ震えていた。

 

 

「・・・まったくクソ親父め。何が鬼獣淫界は統一しただ。

 ちょっと辺境に外れただけで雑魚どもの群れだらけじゃないか」

 

(バチバチバチ・・・!)

 

  いかにも鬱陶しそうな声を出しながら、カイは右手に紫電球を出現させ

 

(チャキ・・・!)

 

 木偶ノ坊は、六尺棒を手に構える。

 

「アーミィ。とりあえずその女を結界で守っていろ。掃除は俺様とデクノボウでやる」

「うんっ」

 

 アーミィは冴子の手を引き、二人の間まで連れると、あっという間に直径2メートルの半透明な、ピンクの結界を作った。

 

「デクノボウ。アーミィに擦り傷一つさせてみろ。黒焦げにするからな」

「・・・・・ はっ。肝に銘じておきますぞなもし」

 

 カイの忠告に、木偶ノ坊は苦笑しながら従う。

 

 

「ケケ────!!!」

「キ────!!!」

 

 次々と跳びかかって、或いはシャカシャカと奔り、襲いかかろうとする邪鬼達。

 

 

 

「ハ────ッハハハハ!!! 死ぃねぇぇえ!!!!

 

(チュドォン!!! 

チュドォンッ!!! 

チュドォンッ────!!!!)

 

 

 カイは日頃の鬱憤を晴らすかのように、次々と紫電球を放り投げ、爆発させ、クレーターを作っていく。

 

 大まかな邪鬼どもの相手は、それだけで充分だった。

 カーマを相手にするからこそ分からないが、カイ自身の戦闘力は高いのである。

 

「はっ!!」

 

(ドグォッ!! バグシャッ!! グシィアッ!!!)

 

 

「ゲッ!?」

 

       「ギャッ!!!」

 

 

 そして、その間を潜り抜けた僅かな邪鬼は、木偶ノ坊の豪腕と棒術で掃除する。

 

 

「ふぁ〜〜〜〜・・・・」

 その陣形の中心で、アーミィは退屈そうに座り込んでいる。

 

 アーミィは、基本的に何もしない。それで充分おつりがくるからだ。

 

 その気になれば、術式で石の巨人を作り出しまとめて叩き潰すぐらいは出来るだろう。

 しかし、カイ、木偶ノ坊の両名は、純真無垢たるアーミィを闘わせることはないだろうと考え、見学に徹しさせた。

 

 対群攻撃のカイ、対個攻撃の木偶ノ坊。・・・見学役のアーミィ。

 いつの間にか出来上がった。3人チームの基本形。

 

 

「ハ────ッハハハハハ!!!! ハ────ッハハハハハハ!!!!」

 

 

(チュドォン!!! 

チュドォンッ!!!!)

 

 

 岩山に、暴れ者たちを拍手するかのような砂塵の嵐う・・・

                                                                                                               

 

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

 

      その夜

 

 

 

 カイの大暴れによって、邪鬼達は全て消し炭となり、一行は冴子という女を仕方なく連れ歩くことにした。

 そして夜も更けた今、カイ達はそれぞれに寝具を取り出し、その日は眠りに付く事にした。

 ただ木偶ノ坊だけが、自分から寝具を冴子に渡し、自身は着のままで岩にもたれ、棒を手に眠っていたが・・・

 

 

 それぞれが明日の探索に備え、ゆっくりと眠りに付くはずだった。

 

 しかし・・・

 

 

「・・・・・・・・・ ふー・・・・・・」

 一人溜息を付くのは、カイ。

 彼が寝付けないのには、理由があった。

 

「母上・・・」

 この手で救う為に離れた、誰よりも愛しい人。

 対する想いは、日が過ぎれば過ぎるほど強く募っていく。

 

 たった一度だけ叶った想い。

 あの日の母の美しい姿は瞳に焼きつき、感触、肌の暖かさ、柔らかさは、まったく忘れられない。

 

 そんな母への想いを、いつものように明日への原動力と、もやもやとした焦りの感情の二つにしていたところ

 

 

(ジャリ・・・)

 

 

 わずかに聞こえる、砂利を踏みこちらへ近づく音。

 

「・・・・・・誰だ」

 パチリと目を開け、カイは自分に近づいてきた者に問いかける。

 

「あ、その・・・ わ、私です・・・」

 驚きながらも返事をした声は、昼に成り行きで助けた女、冴子のもの。

 

「サエコか・・・ なんだ」

「今日は、その・・・ 助けていただき・・・ ありがとうございます」

 

「ふん、気にするな。ただのついでだ」

 不機嫌な声でカイはそう答える。

 

 が

 

「・・・・? おい、何のつもりだ」

 サエコは、カイのすぐ側まで、四足歩行で近づいてきた。

 

「私は、何も持っていませんから・・・ せめてカイ様に、このお体で・・・」

 頬を紅潮させつつ、サエコはおそるおそるという風にカイの下着に手を伸ばし、

その実驚くほど大胆に、ぺろんと下着をはぎ、カイのものを手に取った。

 

「うふふ・・・ こんなにお若いのに・・・ ご立派ですこと・・・」

 少年らしい可愛さを残しているものの、既にそれなりの大きさを持っているペニスを見て、サエコはうっとりとした顔を見せる。

 

「っ・・・ おい! やめろ!!」

 カイの怒りと焦りの混じった、それでも他の面々を起こさない程度の音量での怒声に対し

 

「んっ・・・」

 舌を出すと、チロチロとカイのものを舐め始めた。

 

「ぐっ・・・ くあっ・・・!?」

 いきなりの快感に顔をしかめるカイ。

 

「うふふ・・・ そんなことをおっしゃっても、カイ様のここはこんなにお元気ですわ・・・」

 さっきまでの清楚な雰囲気とは比べようもない妖艶さを見せながら、サエコはカイへの舌での奉仕を続ける。

 その舌の動きは巧みで、的確に男の弱点を突いてくる。

 

「それは貴様じゃ・・・ くっ・・・!」

 カイの反論は、サエコが口いっぱいにカイのものを頬張ることで中断させられる。

 

「うふふふ・・・ んっ、ちゅ・・・」

 ちゅばちゅばと、大きく淫らな音をさせて、カイのものを舐り続けるサエコ。

 

 

 そして

 

 

「この冴子。カイ様の伽をさせていただきます・・・」

 言うが早いか、冴子は腰履きを外し、そそり立つカイのものの上に中腰に立つ。

 

はっ・・・ この・・・ 貴様、いいかげんに・・・」

 

 

(ズプッ・・・!)

 

 

「く、あっ・・・・!!!」

 

 腰を沈め、一気にカイのものを深くくわえ込む。

 

「はっ・・・ すごい・・・っ 素晴らしいですわ、カイ様・・・っ」

 髪を振り乱し、快感に震える冴子。

 

 

「(こいつ・・・)」

 明らかに、邪鬼に陵辱を受けていた女という風ではない。

 それも、こいつから漂う気配は・・・

 

「う、くっ・・・」

「うふふふ・・・・ カイ様、私で感じてくださっているんでしょう? もっと気持ちよくしてさしあげますわ・・・」

 

 

「ああっ、ぐ・・・! くう、うっ・・・」

 抵抗さえ出来ないまま、カイは冴子の好きなようにされていた。

 

 

 

 

「・・・・・・・・ ふん、なるほど」

 後ろから聞こえる声。

                                          

「え・・・?」

 冴子が慌てて振り返ると

 

「カイ・・・ 様!? な、なぜ・・・」

 

「アーミィほどじゃないがな、簡単な幻術分身ぐらいは俺様にも出来る」

 つまり、今冴子と行為に及んでいるのは、実体を持った分身、幻ということ。

 

 

「な、何故・・・?」

 冴子は、困惑を隠せない。

 

「愚か者め。貴様の様な怪しすぎの奴を相手に何の対策も講じないでおくと思うか?

 邪鬼に好き勝手にされていたというわりに体に擦り傷一つない。髪も綺麗なものだ。

 何か企んでいるだろうと思ったが・・・ アーミィがお人よしなんでな、様子を見る事にしていた。

 しかし、まさかこんな簡単に引っかかるとはな。バカが」

 

  ハン、と。

 父親譲りの高圧的なニヤリ顔で、冴子を見下すカイ。

 

「あなた、何者・・・」

 

「不本意だがな、これでも邪淫王カーマの息子だ。

俺様がこれしきの色香や攻めでどうにかなると思っているなら・・・」

 

(ガシッ───!)

 

「っ!!?」

 とたんに、冴子と繫がっている分身が冴子の両手を掴む。

 

「大間違いだ」

 そしてカイが、バッ とマントを翻すと

 

「あっ、え・・・?」

 驚くべき事に、1体2体3体と、次々にカイの分身が現れ、冴子を取り囲む。

 

「なっ、な・・・」

 

「邪鬼と俺様たちを争わせ、負ければ餌、勝てばこうして内側から一番のリーダーを懐柔しようという腹か。

どうせ邪鬼達のリーダーもお前だったんだろう? どう見ても大将首がいなかったからな。

俺様をハメようとした罪は万死に値するが、せっかくのお誘いだ。

 淫魔の礼儀に則って、使い魔の契約儀式として可愛がってやろうじゃないか。・・・一晩中、た〜っぷりとな」

 

  カイがぱちんと指を鳴らすと、カイの分身たちは次々に冴子の体を掴み、それぞれに責めを始めた。

 

「きゃああっ!!? やっ・・・ ああああんっ!!!」

 右胸、左胸、口、そしてお尻と、次々に手が伸び、小さな手の群れが冴子を弄ぶ。

 

「俺様はクソオヤジとは違って慈悲深いつもりだが、悪人は別だ。

ちょうど忠実な使い魔が欲しかった所だ・・・ 俺様以外の事を考えられないようにしてやる」

 

「そ、そんな・・・ あっ、あっ、ああああ〜〜〜〜〜〜っっ!!?」

 ゾンビに襲われるシーンのように、たくさんのカイの中に埋もれていくサエコ。

 

 その悲鳴が嬌声に変わるのに、そう時間はかからなかったという。

 

 

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

      一方

 

    鬼獣淫界  淫魔の社  遊戯室

 

 

 

 

(ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ!! ぱちゅっ、ぱちゅっ、ちゅくっ!!)

 

 

 

「はっ、あっ、あっ、あっ、あ、っ────!!」

 静かな遊戯室の中。しきりに響くのは、水気の混じった肉のぶつかり合う音と、

 

「ひうっ──・・・ はっ、うぁっ! や、あぁっ・・・!!」

 その音に合わせて喉から漏れる、亜衣の短い悲鳴。

 

 それが、時計の秒針が刻む音よりも早い感覚で、遊戯室の中に響き渡り、淫魔の社に誠相応しい淫らなるBGMとなっていた。

 

 亜衣は、生まれたままの姿で、犬のような四つん這いの姿勢にされた上で後ろから、カーマに突かれ続けていた。

 出産を経てより膨らみを増した胸は、不規則に体をガクガク揺らされているせいで、それぞれが逆の方向に、暴れる様に揺れる。

 

 両腕は、手首の部分をカーマの手に掴まれ、カーマはそれを手綱の様に引っ張り、緩めを繰り返す。

そうすることで、荒々しい腰の動きは、更に獣のように荒々しさを増していた。

 

(パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!!)

 

 激しく、激しくぶつかり合う、亜衣の尻肉とカーマの股肉。

 それは見様によっては、カーマが亜衣を生きた楽器としてリズムを刻んでいるようにも見える。

 事実、今の亜衣はその意思とは関係なく、カーマの突き方や力の入れよう一つで

 

悲鳴と喘ぎという、妙なる調べを演奏してしまうのだから

 

 

「あぁっ! ひ、ぐっ・・・! あ、うぅぅっ!!」

 本当に野獣に犯されているのではないか、そう錯覚するほど、今この日の陵辱は激しい。

 既に膣内にも、そしてアナルにも何度も精を注がれて苦しいぐらいだというのに、それを自然に流し出させることすら許してくれず、カーマは亜衣を犯し続けた。

 

「まったく、いい声で鳴いてくれるな」

 ズンッ、と。

 亜衣を貫き殺そうかという勢いで、カーマはより一層深く、勢いを付けて亜衣の膣を奥まで抉る。

 

「ひゃ、うううっ!! うっ、く、うぁっ───・・・!!」

 痛み、苦しみ、脳天を貫くような快感が体中に渦巻き、意志とは反する悲鳴を上げさせる。

 

 

「(こんな・・・ こん、な・・・)」

 こんなに乱暴な犯され方でありながら、それでも的確に弱点を突いてくるカーマの責めに、体は歓びを隠そうとしない。

 いくら精神(こころ)で耐えようとしても、一度この男の子(ぶんしん)まで宿したこの体は、カーマを対の雄として認識してしまっているのだろうか。

 

 そして

 

「さぁ・・・ いくぞ」

 カーマ本人による、発射の合図言葉。

 

「イヤ・・・ や、やぁぁあっ!!!」

 何度この瞬間になっても、女としてその恐怖に叫んでしまう。

 

(どくっ、どくどくっ!! どびゅ。どぷ、どぷ──・・・!!!)

 

 

「あ、ひ、ぐ・・・・」

 既にたくさん注がれた膣内に、更に流し込まれる熱い液体。

 

 

「あ・・・ う・・・」

 そこでようやく手を離され、戒めのなくなった亜衣は どさりと、力なく床の上に倒れこむ。

 

 

「は──・・・ は───・・・・・・  は───・・・・・・」

 仰向けに倒れこんだ亜衣の、無防備な秘所と後ろの穴からは、今回何度も注がれたカーマの獣欲の塊が、ごぽりと床に零れ落ちた。

 

 何度も激しく犯されて、体力を失っているのだろう。

 倒れこんだまま、乱れた呼吸で胸が上下する以外は、まるで人形のようにぐったりとしたまま。

 

 

「何故今日はこんなに・・・ そう思っているだろう?」

 そんな状態の亜衣に、カーマは中腰で顔を近づけ話し掛ける。

 

「・・・・・・・・・」

 視線こそ合わさるものの、亜衣の口からはひゅー、ひゅー、という呼吸の音しか返ってこない。

 

「フフフ、よほど疲れたらしいな」

 カーマはいつものように。いや、いつもより上機嫌に微笑んだまま

 

 

「・・・・・・ どうだった? 息子(カイ)と愛し合った感想は」

「っっ!!!??」

 

 まるで世間話のような聞き方で聞かれたその言葉に、亜衣は心臓が潰れそうな衝撃を受ける。

 

「え・・・・!?」

 

「何だ、まさか俺が気付かないとでも思っていたのか?

侮って貰っては困る。愛する妻の事だ。何でもお見通しでなくてはな」

 

  そう言って、カーマはその愛する妻の顔を撫ぜた。

 

「あ・・・ あ・・・」

 亜衣は震えを抑えられない。

 あの日のことが知られてしまったら、自分はともかく、カイがどんなことをされるか、想像するのも恐ろしいからだ。

 

 

「何を怯えている?

 別に俺は怒ってなどいないぞ」

 

「え・・・?」

 意外すぎるその言葉に、思考が停止してしまう。

 

「前にも言っただろう。人の理など意味が無いと。

 亜衣は俺のもので、亜衣から生まれたカイもアーミィも俺のものだ。

 俺のものに対して、どうして嫉妬心など抱く?」

 

  カーマの笑顔には、本当に怒りの感情が欠片も無い。

 

「むしろ、俺は逆に待っていたのだ」

 

「・・・!?」

 

「素直ではないお前が、自分から人の理を壊し、淫魔として肉の喜びを得る事をな。

 これでお前は、心まで淫魔に堕ちた。肉と血を分けた息子との契りという形で・・・

 それでこそ淫魔の姫。邪淫王カーマの后だ」

 

「・・・・・・・」

 

「お前は憎き相手であり、陵辱を刻み続ける存在である俺に自分から心は開かない。

 例えいくら淫ら地獄に蹂躙されようとな。そしてそれが亜衣の凛とした美しさ、気高さでもある。

 それだけに少し悩んだぞ、どんな宝石の輝きにも勝るその輝きを保ったまま、人から淫魔に堕とすという矛盾した両方を得るには、どういうシナリオを組めばいいかとな」

 

「・・・ まさ、か・・・」

 

「カイが男児として産まれた時に、愉快なことを思いついた。

俺と同じ血と魂を次いで生まれてきた淫魔の子だ。同じ女の魅美に気付かないわけが無いのは当然。

俺が被虐に責め立て、カイは献身に母であるお前に尽くし、一方で疲れ果てたお前の心は・・・

 ・・・・・・結果は、言わずもがな、だ。 カイを相手に喘ぐお前の顔・・・ 極上だったぞ」

 

「っ───・・・・」

 そんな・・・ いかれてる。狂ってる。

 

 でも・・・ 私も同じ・・・

 淫らに狂ってしまった淫魔の女、なのか・・・

 

 

 

「それに、お前はわかっていない」

 

「・・・!?」

 

「お前はとっくに、俺無しにはいられないということをな」

 そう言って、カーマは亜衣の乳房を、後ろから強く揉みしだいた。

 

「う、くっ・・・・」

 柔らかな亜衣の乳房に、カーマの手が、指が深く埋まる。

 人差し指の腹の部分で、乳首の先端をクリクリと弄ばれるだけで、今の体は感じ、反応してしまう。

 

 

「だが・・・ せっかくだ。一度、罰ゲームといくか?」

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

    それから十数分後

 

 

 

 

 先ほどと同じ場所である筈の遊戯室は、たかだか十数分で、その様相を大きく変えていた。

 

 遊戯室の中央には、特殊な装飾が付けられた巨大な水槽が置かれており、その真上の四隅にはタオシーの黒子達がいる。

 それは、かつて亜衣から梅の護符を奪った、ホト魚の水槽。

 

 しかし、今この水槽には水が張られておらず、当然例の魚もいない。

 代わりに水槽の中央に居るのは、亜衣自身だった。

 

 両手は後ろに回された上に、板の手錠で繋がれて動かすことが出来ず、

床と直結した鉄の足枷により、両足は大きく開かされた形で立つことを強制されている。

 

 

「なんで・・・ こん、な・・・」

 亜衣の股の間からは、尚もぼたり、ぼたりと、カーマとの行為の証しである濃厚な白濁液が垂れ落ち、内股から滴っていた。

 

「だから、罰ゲームだ」

 水槽の向こう、亜衣の正面に立っているカーマ。

 

「・・・・・・・・・・」

 そして、その後方に控えている、タオシー。

 

 

 パチン、とカーマは指を鳴らす。

 

 それを合図にして、四隅にいる黒子達が一斉に、旧式のバルブのようなものを捻り始めた。

 

キィ、 キィ、 キィ・・・

 

「・・・・・っ!?」

 そんな独特の耳に付く音と共に、水槽の床からは段々と水が湧き出してくる。

 しかもそれは、捻る音が増えるごとにその勢いを増し、あっという間に亜衣の足首を沈めた。

 

「・・・・・・・・・ 水攻めでも、しようっていうの?」

 内心は混乱と、未知の恐怖で一杯だったが、それでもなんとか気丈を装う。

 

「フフ・・・」

 だがカーマは、そんな亜衣の心情さえお見通しなのだろう。

 ニヤと笑うと

 

「外れてはいないが、メインは別にある」

 

「メイン・・・?」

 気付けば、水槽内の水の水位は、亜衣の膝の位置にまで上がってきていた。

 

 

(ザバ・・・ッ!)

 

(ザバ・・・ッ!)

 

(ザバ・・・ッ!!)

 

 

 

 それと共に、背後で何かが水の中に落とされる音と、小さな飛沫(しぶき)が背中にかかる。

 

「(な、なに・・・!?)」

 心臓の鼓動が早くなっていく。

 嫌な予感が、既視感が拭えない。

 

(ゆらっ・・・)

 

 

「っ!!?」

 太腿の間を過ぎる、見知った覚えのある何か。

 それは・・・

 

 

「い、イヤ・・・」

 亜衣にとっては忘れもしない。

 【奈落】の儀式に使われた鬼獣淫界の魚。ホト魚。

 

 しかしそれは、亜衣の記憶の中にあるホト魚とはあまりにも違う姿をしていた。

 前に見たホト魚は、まだ魚らしい姿をしていたと思う。

 

 だが今目の前、亜衣の股下を泳いでいるそれの姿は、あまりにもおぞましいものだった。

 

 赤黒い体色。魚なのにイボイボとした肌質。

 それより何よりも異様であったのは、魚の頭部。

 

 魚の首は、あろうことか男性器とそっくり同じ形をしていた。

 その頭部に眼球というものは見当たらず、まるで、これまで見てきた淫魔達の魔羅触手が泳いでいるようですらある。

 

 

「ホト魚には色々な種類がいてな。前に亜衣の中から梅の護符を取ったのとこいつとは、当然違う種類だ。

 魔羅魚といって どちらかというとこいつの方が鬼獣淫界ではポピュラーだ。

こいつがより何に向いているか・・・ それはこいつらの形を見れば、大体の想像も付くだろう?」

 

  ニヤと笑いながら、亜衣に想像させる形で説明をするカーマ。

 

「(ま・・・ まさか・・・)」

 亜衣は、カーマの言葉から想像した一つに、身を震わせる。

 そしてその証拠に、ホト魚たちは少しずつ亜衣の足元に集まっていき、亜衣の腿に亀頭の形をした頭や、イボイボの胴体を擦り付けるようにすり抜けていった。

 

「っ・・・!」

 そのおぞましい感触に、身を引いて逃げようとするが、底に固定された両足ではそれは叶わない。

 逆に逃げようとすればバランスを失い、水の中に仰向けに倒れこんでしまいそうになった。

 

「おやおや、危ないな。

注意した方がいいぞ、もし水の中に体を沈めてしまったら、そいつらは一斉に穴という穴の中に入ってくるからな」

 

 そんな亜衣の様子を見て、カーマはいかにも高みの見物といった涼しげな様相で忠告をしてくる。

 

「そんな・・・」

 こんな化け物達が、私の中に入ってくる・・・!?

 

(ユラッ・・・)

 

「ヒッ・・・!?」

 内腿を擦る感触に、ビクンと体を震わせる。

 

 いつの間にか、水位は亜衣の内腿の真ん中まで、秘所まであと数センチという所まで上がっていた。

 

「だがまあ、どちらにせよ水位がそこまで上がってくれば一緒だがな。

 ほら見てみろ。ホト魚たちもお前の中に入りたくてたまらないようだぞ?」

 

  カーマの言葉どおり、ホト魚たちは明らかに興奮しており、我先にと水面を跳ね、亜衣の蜜壷の中に跳び入ろうとして、亜衣の真下でパチャパチャと水音を立て、水面を波立たせているのだ。

 口をパクパクとさせながら水面を揺らすその仕草は、まるで餌を奪い合う池の鯉のようである。

 

「い、いや・・・ いや・・・ イヤァッ

 いつも気丈な筈の亜衣は、驚くほどに震え、悲鳴を洩らした。

 

 亜衣にとって、今やホト魚は恐怖の対象であり、トラウマなのだ。

 これまで自分を、汚らわしい淫魔どもの触手や魔羅から守ってくれた梅の護符。それを奪い、無力化したホト魚。

 守るものを奪ったその存在は、長い間その肉体を蹂躙し続けたカーマよりも、亜衣にとって強い恐怖を感じさせる。

 

 それに、今まで亜衣を蹂躙したのは、唯一カーマだけ。

 カーマも淫魔ではあるものの、その姿はほぼ人と同じであり、化け物に犯されるという感覚は少なかった。

 

 人の姿をした、人に近い者に犯されるのと、化け物に犯されるのとでは、精神的な恐怖もショックも段違いである。

 カーマに犯され続ける事に対しては、認めたくはないけど、もう心に耐性も出来始めていた。

 

 しかし、今自分を狙っている化け物の魚に対しては違う。

 亜衣は・・・ 今日初めて、化け物にその体を蹂躙される。しかも・・・ 通常の蹂躙じゃあない。

 このホト魚たちは、私を犯そうとしているのではなく、私の中に入ろうとしているのだ。

 

「もうあと数秒か・・・」

 死刑宣告にも近い、カーマの独り言。

 

 その言葉どおり、最早水位の亜衣の秘所との感覚は1センチもなくなっている。

 

「うっ!! うっ!! うううっ!!!」

 体が倒れてしまわないように気をつけながら、必死に体を動かし、ホト魚を追い払おうとする亜衣。

 しかし腕も足も拘束された状態ではそんな抵抗もたかが知れており、バシャバシャという水音と、高速具のガチャガチャという音が、不規則なリズムを刻むだけでしかない。

 

「フフ・・・ 絶景だな」

 見様によっては踊りのようですらある亜衣の必死な抵抗と、滅多に見せない、恐怖に染まった無力な女としての顔。

 ただ犯すだけでは見ることが出来ない亜衣の姿に、カーマは被虐心をそそられ興奮していた。

 

 それは、カーマの悪魔のような笑みからも見て取れる。

 

「やぁぁっ──!! やめて!! 助けてっ!!!

 水を止めて・・・ お願いっ───!!!」

 

  パニックに陥ったせいだろう。亜衣は初めて、カーマに懇願した。

 無理もない、亜衣はこれまでにない恐怖に晒されているのだ。

 

 しかし

 

「ダメだ。罰ゲームだと言っただろう?」

 カーマは極上の笑顔で、それを断った。

 

「っっ・・・──」

 即座に、後悔する。カーマに助けを求めたことを。

 そして知った。カーマは・・・ 悪魔で、狂っている。

 

 

(ピチョ・・・)

 

 

「っ!!?」

 股に当たる、水の感触・・・

 

「(水が・・・!!)」

 遂に水が、秘部にまで・・・

 

「くっ・・・!」

 

(バチャ、バチャ、バシャッ!!)

 

 恐怖を気力で何とか払い除け、亜衣は必死の抵抗を試みた。

 前のように自由には動けないが、それでも黙ってやられたくなんかない。

大きく体を揺り動かして、ホト魚たちの侵入から防ごうとする。

 

「シャーッ!!」

 何度も避わされても、一心に亜衣の中を目掛け、次々と侵入を試みるホト魚たち。

 そしてそれは、水位が上がり亜衣の体が水に浸かる部分が増えれば増えるほど、動きも一斉に襲ってくる数も増えていく。

 

「(だめ・・・ やりすごせない・・・!)」

 大股を開かされた状態で、ろくに動くことも出来なければ当然の事。

 逆に、よくやり過ごせた方だ。

 

 そうして、水位がヘソの位置まで上がった時だろうか

 

(じゅぷっ───・・・!!)

 

 

「ひぐっ・・・!!」

 前からやってきた一匹目を避わしたところで、狙ったように二匹目が、狙ったように亜衣の花弁の中に、その頭部を強引に突き入れてきた。

 

「う、ううっ、ぐ・・・!!」

 魚の頭部でありながら、そのペニスと瓜二つである形のものが自分の中に侵入してくる。

 そのおぞましさ、そして蘇る。あの最初の水槽の中でのトラウマ。

 

「くうぅっ・・・!!!」

 すかさず亜衣は、それ以上の侵入を防ぐ為、あの時の様に精一杯の力を込めた。

 

 実際にあの時は、そうすることでなんとかそれ以上の侵入を阻止できていた。

 

 

「だが・・・ 今回は無駄だな」

 そのカーマの言葉どおり

 

 

(ビチ、ビチビチビチッ!!)

 

 

「うあ、ああああっ!!!?」

 亜衣の膣内に頭の先だけを埋めたホト魚は、とんでもない力で、悪衣の膣内で暴れだす。

 バイブなどとは比べ物にもならない激しい動き。

 

強引に進入し続けようとするこのホト魚の力の前では、亜衣の抵抗などちょっとした障害でしかなかった。

 

「ああうううっ!! か、う、ひうううっ──!!!」

 ホト魚の侵入のあまりの激しさに、亜衣は苦悶の悲鳴を上げた。

 

 そして

 

(じゅぶっ────!!!)

 

 

「っ・・・───!!!」

 小さな菊門をこじ開け、挿入って来る第二の侵入者。

 

「きゃ、ああああ────────っっ!!!!!」

 断末魔に近い絶叫。

 前の穴と後の穴、その両方をこじ開けられ、それがドリルか何かのような勢いで膣と腸を抉るように暴れ突き進んでいるのだ。

 

 強烈な苦悶と、感じてはいけない、化け物の魚に与えられる快感に、亜衣はのたうち回る。

 

「(私の・・・ 私、の・・・ なか、に・・・ こんな、化け物、が・・・)」

 悶え苦しむ中、視界に映る自分の膣は否応なくホト魚の体の半分を受け入れており、もう半分が、自分の尻尾のように亜衣の花弁から姿を現わしている。まるで、この化け物と融合でもしてしまったかのようだった。

 

 その事実を認識しただけで、吐いてしまいそう。

 しかし私の中で暴れまわりながら、どんどん奥へと入っていき、入り口・・・ 花弁と菊門とでビチビチと尻尾を振り回すホト魚たちは、そんな暇さえ与えてくれない。

 

「ぐっ、う・・・!! あああっ!! だ、め・・・!! やめ・・・!!」

 ホト魚達には、遠慮や際限など存在しない。

 膣内を昇ってくる方は、既に子宮口にまでその頭が触っており、後の方も、腸の奥の方までぐいぐい進んでいく。

 

(グッ───)

 

 

「────!!?」

 そこで、亜衣の花弁に、ありえない感触が伝わってきた。

 

「(う、ウソ・・・!?)」

 亜衣の花弁は、既に一匹目のホト魚が侵入して今も咥えこんでしまっている形である。

 なのに、その花弁から、3匹目がその頭部を擦りつけている感触が伝わってきたのだ。

 

「やっ・・・ やめてっ!! そんな、入るわけ・・・!!」

 今でさえ苦しくて仕方が無いというのに、そんな事をされたら死んでしまう。

 亜衣は叫び拒絶したが

 

(ず、ぷ、ぷ、ぷ────・・・・!!)

 

 三匹目のホト魚は構うことなく、亜衣の花弁を押し広げて、亀頭頭を潜り込ませてきた。

 

「────────────っっっ!!!!!」

 声にならない、悲鳴、絶叫。

 悪衣の下腹部は、通常ではありえない体積の侵入に、不自然な膨らみを見せている。

 

 そして

 

(ず、ずちゅ、ちゅぐ・・・────!!)

 

 

「ひ・・・ ぎっ・・・!!!」

 次の瞬間、後にも同じ痛みと、苦しみが襲ってきた。

 

 これで、前と後ろ、合計で4匹ものホト魚が、中に入ってきたことになる。

 

「死んじゃう・・・っ こんな、の・・・ 死ん、じゃ・・・ あ、うあああっ!!!」

 遂に一匹目が、子宮の中にまで入りきって、中で暴れている。

 そして順番待ちでもしていたのか、すぐさま次のホト魚が強引にその頭を突き入れてくる。

 

「ああああっ!!! うあ、ああああああっっ!!!!」

 遊戯室の中に木霊する、亜衣の悲鳴。

 

 

 それから、数十秒

 

 

「あ、ああぅっ・・・! ふ、ひぐっ・・・」

 その呻き声に、少しずつ変化が生じ始める。

 

「・・・!? なん、で・・・」

 亜衣は、自分で自分が信じられなかった。

 

 執拗に嬲られれば、誰だって感じてしまう。

いくら亜衣の意志が拒んでも、悔しくとも、それは女の、淫魔の体である限り仕方がない事でもあった。

 

 しかし今は・・・ 今もホト魚による責めは続いて、より激しさを増しているというのに

あれほど苦しかった苦痛が嘘のように和らいでいき、そして・・・

 

「あっ、ふ・・・ ううっ、く・・・!」

 下腹部が盛り上がるほど乱暴に犯され、侵されているというのに、体は・・・

 

「感じてきたか?」

 亜衣の変化を、カーマはすぐさま感じ取ったのだろう。

 全てを知っているであろう男は、やはり笑っている。 

 

「どう・・・ いう・・・」

 

「そいつらの体から分泌されるぬめり・・・ 体液にはな、麻酔の効果と、催淫の効果がある。

 痛みや苦しみがなくなり、快楽だけを増上された女は、理性を失いよがり狂いながら・・・」

 

  右手をぱっと開くと、口の開閉するような動きを見せ付ける。ホト魚のゼスチャーだろう。

 右手でホト魚が泳ぐ姿を連想させる動きをしたかと思うと・・・

 

(ガッ───!!)

 

「っっ!!」

 カーマの右手は、左手に噛み付いた。・・・いや、噛み付くゼスチャーを見せた。

 その意味は・・・

 

「まさか・・・」

 内側から、肉を・・・!?

 

 すぐさま、頭の中で、したくもない想像が頭を過ぎる。

 今や胎の中にまで入り込んでいるこの魚が大きく口を開き、子宮の内壁に噛み付き、食い破る・・・

 

「いやっ・・・ イヤァ────っ!!!」

 

 いよいよ平常でなんていられない。

 亜衣は狂ったように暴れ、拘束具に繫がれているのもかまわず腕を動かし、激しい音をさせる。

 

 

「心配しなくてもいい。そいつらは鬼獣淫界の魚らしい、良い性格をしていてな。

 そうやってしばらくは襲う相手を嬲って遊び、喘がせ、それから・・・

 

ああ、言い忘れていたが、今日のこいつらは特別腹をすかせている。

我先にと急いでお前の中に入りたがるのはその為だ」

 

  仮にも妻だといった相手の窮地であるにも関わらず、カーマは笑顔を崩さない。

 いよいよもってカーマの狂気を知った亜衣に、押し潰されそうなほどの恐怖と絶望が襲う・・・・・・

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

     それから  十数分後・・・

 

 

 

「あぐ・・・ うっ、ぐ、うぅっ・・・!!」

 

 悲鳴を出す気力さえも失ってくるほどに憔悴し始めていた亜衣は、か細い、小さな呻きの声を上げていた。

 それはもはや、痛みや苦しみに対するものではなく、望まない快感に必死に抗うが故の、苦しみの呻き。

 

 ホト魚の体から出る分泌液の所為で、亜衣の体はもう、かなりの無理を強いられているにも関わらず、ほとんどの苦しみや痛みが感じられなくなり、その逆に、ホト魚の胎内で蠢くその動き一つ一つに、体がビクンと震え、快楽の信号を脳に送ってくるようになっていた。

 

 

 水槽の中、首の位置にまで達した水位。

 亜衣の胎内、腸内には、それぞれ更に何匹ものホト魚が侵入しており、中で暴れていた。

 胎内に入り込んだ魚だけで何匹も存在し、亜衣の腹は妊娠時ほどではないが、それでも充分不自然に大きく膨らみ、中にいる魚達の形をくっきりと示している。

 

 しかも、腹の中のホト魚は絶えず悪衣の子宮の中で、まるで遊ぶようににゅるにゅると動き続けており、それに合わせて亜衣の腹は不規則に揺れ動き形を変えた。

 

 後の穴から逆流してきたホト魚の方も、腸を通り過ぎ胃の中を既に数匹が泳ぎ回っているのが感覚でわかる。

 子宮の中、胃の中、外から侵入できる内蔵を全て犯されオモチャにされている上に、まだ水槽の中、亜衣の外にいるホト魚達は、それぞれ亜衣のヘソの穴の中にぐねぐねと押し入ろうとしたり、頭の先で肉芽をつついたり、それすらも他の魚に先を越されている残りの魚たちは、そのぬめぬめとした体で、亜衣の体を愛撫するようにして全体をこすり付けてくる。

 

 特に、水の中で無防備な姿を晒している亜衣の乳房は、ホト魚たちにとって恰好のオモチャであり、魚達は競うように、奈落の時と同じ様に乳房を縛るようにしてぐるりと回り、乳首に体を擦り付けてを繰り返す。

 

「あ、あぁっ・・・、う、ひぅっ・・・!」

 体の内も外も、おぞましい化け物魚に弄ばれ、蹂躙され、侵されているという事実。

 それだけで気持ち悪くて、吐いてしまいそうになる。嘔吐感がこみ上げてくる。

 

 しかしそうすると、胃の中で泳いでいる数匹まで一緒に吐いてしまうかも知れない。

 それが思考の端に浮かんだだけでも、それだけはと、必死に抑えた。

 

 

「ああ、う・・・ あ、ぁ・・・・」

 それでも、限界というものはある。

 いかに亜衣が強い精神力で耐え忍ぼうとしても、通常の女であれば数分とせずに理性が崩壊している淫虐の儀式。

 

 それを何十分も続けられて、なお女としての体裁、尊厳を保とうとし、堕ちずにいられる亜衣の精神は賞賛に値して余りある。

 そしてやってきた限界は、精神ではなく、体力。

 

 ラジコンをギリギリまで動かせば電池が尽きるように、絶望的な状況で耐え続けた亜衣も、力尽きようとしていた。

 

 

「(いや・・・ きぜつ、なん、か・・・ した、く・・・ ない・・・)」

 白く霞む視界と意識の中、亜衣の精神は必死に意志を保とうとした。

 

 

「(こん な・・・ ばけもの、に・・・  

から、だ・・・ すき、かって・・・  され て・・・  きぜ、つ・・・ なん・・・  て・・・)」

 

  グラリと体が揺れ、ゆっくりと・・・

 

 

(ばしゃ・・・)

 

 

 亜衣は、意識を失い、前のめりに水中に没した。

 

 

 

 

「(思ったより長かったな・・・)」

 と、カーマが心の中で呟いたところで

 

「よし、水を抜け」

 カーマの命令で、黒子達は一斉にバルブを逆回転させ、栓を開ける。

 

 

(ギュボボボボボ・・・ ゴォォォ────・・・!!!)

 

 

 大きな音を立てた排水に、水槽の四隅で渦が生まれ、水槽の中で亜衣を弄んでいたホト魚たちはそれに吸い込まれていく。

 

 それと同時に、カーマはその場で大きく跳び、まだ排水が完全に済んでいない水槽の中に着衣のまま

 

(バシャ・・・ンッ!!)

 

 飛び降り、意識の無い亜衣が倒れきるよりも前に、体全体で支える形で抱き止めた。

 

(カチャ・・・ カチャ・・・)

 

 そして、簡単に亜衣の両手両足の高速を外すと、亜衣をお姫様抱きでしっかりと抱えると

 

 

「はっ・・・!」

 

また、大きく跳び、水槽を飛び越え木床に着地し、亜衣をゆっくりと降ろす。

奇しくもその一連の動作は、かつて亜衣が梅の護符と、処女を奪われた奈落の日と酷似していた。

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

いや、少なくとも後ろに控えているタオシーの目には、かつての奈落の時よりも

カーマ様の、亜衣様に対する扱いは、むしろ、より優しく、丁寧で・・・

 

「・・・・・・・・・(考えすぎ、ですよね・・・)」

 タオシーが一抹の不安をかき消す、その一方で

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

 水槽が早々に片付けられた遊戯室の中央では、奇なる光景が存在していた。

 

 体を水に濡らし、力なく仰向けにいる亜衣と

 そんな亜衣の後ろでぴったりと後ろに、クッションのように位置しているカーマ。

 

 それだけを見れば、眠ってしまった妻を支える夫という、とても微笑ましく晴れやかな構図に見えなくもない。

 しかし、そう見させることがないのは、亜衣の無残なる姿にある。

 

 排水によって、亜衣の全身を弄んでいたホト魚達は水流に消えた。

だが、亜衣の体の中に入っていった多数のホト魚達は未だ亜衣の体の中にいる。

亜衣のお腹は、ホト魚たちによって大きく膨らみ、魚の形をくっきりと見せていた。

今も胎内の魚の動きによって、不規則に形を変える魚達は、まるで元々その場所が自分のものであると主張するかのよう。

 

そんなおぞましい、哀れなる姿を晒してしまっているというのに

同時に亜衣のその姿は、たまらなく妖艶で、倒錯した、狂気的な美を、それを見る全ての者に感じさせていた。

 

 

「・・・・・・・あ」

 そんな倒錯的な光景の中、ふとタオシーは、水に濡れきった亜衣の体を支えているカーマの服が、じとりと濡れていること

 そして、亜衣の水濡れを拭かねばならないことに気が付き

 

「カーマ様、必要なら黒子に拭かせますが・・・」

 おそれながらと発言するが

 

「断る。タオルだけよこせ」

 カーマは一言の元にそれを断り、左手を出してタオルを催促する。

 

「は、はい」

 慌てタオシーは、黒子からタオルを受け取り、そのままカーマに渡した。

 

 タオルを受け取ったカーマは迷う事無く、自分ではなく亜衣の体の方を無言で拭き取り始める。

 あれだけの責めをしておきながら、さもそれが当然とでも言うかのように。

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

「う・・・・・・」

 やがて、亜衣の意識が戻り始める。

 

「ほう、もう目が覚めたか」

 混濁した意識でいる亜衣に、カーマは真上から亜衣の顔を覗く。

 

「・・・・・・ っ!!」

 すぐに我をとり戻した亜衣は、カーマの顔を見て驚愕の表情を浮かべた。

 そしてすぐに、自分のあまりにもあられもない姿を思い出す。

 

「やっ・・・」

 すぐにカーマの側から離れようとするが、そのカーマ自身に強く押さえつけられ、脱出できない。

 

「まあ、落ち着け。

俺から離れるよりも、まず先にやらねばならんことがあるだろう?」

 

「やる・・・ こと・・・?」

 

「そうだ。お前の中に溜まった、この魚達・・・

 水から出て弱っている間に出さなければ、そのうち咬みつきだすぞ」

 

「・・・・・・・・・っ!!」

 カーマのその一言に、亜衣は戦慄する。

 

「だ、出すって・・・」

「なに、出産の時と同じ要領で力を入れればいい。ここにな」

 

 そう言ってカーマは、ホト魚によって不自然に膨れている亜衣の胎をグッと上から押した。

 

「あ ひゃううぅっっ────!!?」

 ただでさえホト魚によって内側から圧迫されている上に、上から押されては

 そしてそんな苦しさすらも、快楽に変換されてしまう自分の体。

 

「ほら、時間がないぞ。力め」

 

(グッ・・・)

 

「あっ・・・」

 まるで赤ちゃんにおしっこをさせるようなスタイルで開かされる、亜衣の両足。

 ただでさえ羞恥で死んでしまいそうなのに、こんな恰好をさせられては・・・

 

「うっ、ぅ・・・」

 それでも、いずれは胎の中にいる魚に、肉をかじられるという迫った現実と、その恐怖とは比べようもない。

 

 

「う・・・ うう、うううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ・・・・!!!」

 カーマにいいように、体をオモチャにされている自身に対する情けない気持ち。

 しかし、今の亜衣には、カーマの命令に従うしかないということもまた現実なのだ。

 

 様々な葛藤に心を焦がされそうになりながら、亜衣は下腹に力を込める。

 

「ほら、もっと頑張れ」

「あっああ、ぐ・・・ ううう〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 叫びというよりは、獣の咆哮に近いだろうか

 

 

 

 

 そうして、数分が経過し

 

 

(ビチッ・・・ ビチ、ビチッ・・・)

 

 

 ようやく、最初のホト魚の頭が、亜衣の花弁から姿を現す。

 

「これはまた・・・ すごい眺めだな」

 亜衣の美しき花弁から出現する、おぞましく醜い姿をしたホト魚。

 まるで亜衣の膣から魔羅触手が生え出て来たかのようで、その取り合わせはたまらなく妖艶である。

 

「立派なものが生えているじゃないか。 ははははっ!」

「あ・・・ う・・・ う・・・」

 

 亜衣は、正視したくなかった。

 自分の中から化け物の魚が姿を見せている光景など、無残に過ぎるものである。

 しかし、視覚を閉じても、女として最も敏感な部分からの感触が、視覚以上に残酷に、自分の状態を伝えてしまう。

 

 きっとカーマの言葉どおり、体の半分ほどを膣から外に出しているホト魚の姿は、亜衣の女陰から魔羅が生え出たかのように見えているのだろう。

 

 自分がそんな姿を晒しているなんて思うだけで、気が狂いそうだ。

 とっくに天津の巫女だなんて誇れる心でも体でもないのは分かってはいる。

 しかしそれでも、こんな風に体を魔羅の姿を化け物にオモチャにされるなんて・・・

 

(ズルルッ──)

 

「うあっ────!!?」

 カーマは、亜衣の花弁から顔を出している一匹目のホト魚を掴み、ずるずると一気に引っ張り出す。

 いきなり、ホト魚のイボイボの体を勢いよく引き抜かれたことで、耐える準備をしていなかった亜衣はビクンと体を仰け反らせる。

 

「あ・・・ あ・・・・」

 

「フフ、花弁がヒクヒクいっているぞ? こいつがそんなによかったか?」

 弱々しくビチビチと動くホト魚を放り捨て、カーマは更に亜衣を言葉で責める。

 

「そん、な・・・ ちが、 ちが、う・・・」

 首を左右に振り、必死に否定する亜衣。

 

「嘘をつけ。魔羅魚に可愛がられてここはすっかりヨダレをたらしているぞ?」

 

(クチュッ・・・)

 

「うっ・・・ あ・・・!!」

 カーマの指が、ホト魚を放したばかりの花弁に触れる。

 実際に亜衣の花弁は、実際にホト魚の分泌液のせいで、意思に反し濡れていた。

 

 

「何も違わないさ、亜衣。

お前は仇である俺に犯され絶頂し、その股から生まれた我が子と愛し合い、そして化け物の魚に好きにされて股を濡らす・・・

身も心も、淫魔の姫らしい淫らなる女だ。俺がそういう風にして、そしてお前はそうなった。

邪淫王に相応しい、世界一美しい、純粋で艶なる淫魔にな」

 

  悪魔の囁きを、耳打ちするように語りながら、カーマは指でクチュクチュと亜衣の花弁を弄ぶ。

 

「やっ、あ、あっ、あっ・・・!!!」

 体力をほとんど奪われている状況の亜衣は、脚を閉じることも出来ず、いいようにカーマに花弁を弄られ、ビクンと弓なりに体を反らすぐらいしか出来なかった。

 

「この一年近くで、随分と可愛い反応をするようになったものだ。

さて・・・ 腸と子宮と、あと何匹だったかな? 全部ひり出すまで終わらんぞ」

 

 そうして、カーマはまた亜衣の両脚を恥ずかしい形に開く。

 

 

「(もう、いやぁ・・・  こんなの・・・ もう、嫌ぁ・・・)」

 

 両の瞳から涙を流し、心の内で叫び泣く亜衣。

 しかしそれは、誰にも聞かれぬ絶望の声

 

 淫虐の戯れは、終わることがない・・・・

 

 

 

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

     そうして  時は過ぎ・・・

 

 

 

 

「これで全部か・・・ 頑張ったな」

「・・・・・・・・・」

 

 カーマの膝の上で、亜衣は放心状態だった。

 虚ろな目で、ただ荒い呼吸を繰り返し、仰向けにグッタリとなっている。

 ホト魚の排出のために、体力を限界を超えた所まで使い、精神的にも多大な疲労と負荷を強いられたのだから無理もない。

 

 

「頑張った褒美にいい事を教えてやろう」

 カーマは、一番近くでビチビチ跳ねていたホト魚の首を掴むと

 

「こいつらの主食は微生物だ。肉を噛み砕く歯も無ければ顎の力も無い」

 そう言って、ホト魚の口を開かせ、亜衣に見せる。

 

 実際にそのホト魚の口には、牙や歯と言えるものが一切なく、繊毛のようなものしか見当たらない。

 

「こいつらが体の穴の中に入って悪さをするのは本当だ。

あれだけ急いでいたのも、本当に腹が減っていたからに他ならない。

それじゃあ何を食べにお前の中に入りたがったのかというと・・・ なんてことはない、俺が亜衣に奥の奥まで注ぎ込んだものだ」

 

「・・・・・・・・・・」

 つまり、ホト魚たちが亜衣の中で熱心に食べていたのは、カーマに何度も何度も注ぎ込まれた、精液だったのだ。

 

「地上の小魚でも、種類によっては精子を水槽に入れたら食べるそうだ。

 一つ知識が増えたな」

 

  クククク・・・ と、カーマは体力を失ってぐったりとしている亜衣の頬を撫で擦りながら、悪辣な笑みで真上から見つめる。

 

 

 そして

 

 

「ぅっ・・・」

 カーマは、亜衣の唇を奪う。

 

「ふっ、うぅっ・・・ う・・・」

 まともな抵抗をする力などもはや残っていない上に、心身ともに疲れ切って、最早ちゃんとした思考もままならない亜衣は、カーマの舌の侵入を拒むことが出来ず、いいように舌から頬に至るまで、口膣中を弄ばれる。

 

 

 この男から逃れることは、永久に出来ないのだろうか。

 私はもう、戻ることは出来ないのか

 

 そんな絶望にも似た感情の渦に抱かれるまま

 

 亜衣の意識は・・・ また、途切れた。

 

 

 

 

「おやおや・・・」

 亜衣が再び意識を失ったのを知ると、カーマは亜衣の体を拭くと、抱きかかえ、立ち上がる。

 

 

「カーマ様、どちらへ・・・?」

 思わず尋ねるタオシーに

 

「罰ゲームの名目とはいえ、さすがに無理をさせたからな。部屋でゆっくり寝させておく」

 と、邪淫王らしからぬ答えが帰って来た。

 

「は・・・・」

 

「後で強壮の薬でも持って来い」

「は・・・ はい」

 

 タオシーの返事を聞いたか聞かなかったのか

 カーマは亜衣を抱きかかえたまま、歩いて遊戯室を後にした。

 

 

 

「(カーマ様・・・ やはり・・・ お変わりになられましたね・・・)」

 自分が8年仕えていた邪淫王は、邪悪で、悪辣で、悪智に長け、誰にも平等に無慈悲だったはず。

 それは時折、恐ろしくなるほどの狂気さえも伺えた。

 

 それがこの一年で、驚くほど変化を見せている。

 今日の行為を見ても、狂気や悪辣が消えたわけではない。

 しかし以前のカーマ様なら、あんな風に陵辱をした相手に気遣いなどしなかった。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 カーマの変化に抱く感情が不安なのか、それとも違う感情なのか

 

 タオシーには、わからなかった。

 

 

 

 

 

 

  ◇    ◇

 

 

 

 

       一方

 

 

     鬼獣淫界  岩山  翌日

 

 

 

 

 今日も今日で、鬼獣淫界を探索する奇妙な一行。

 カイ、アーミィ、木偶ノ坊。

 

 そして・・・

 

「カイさまぁ」

 すっかり魂の底まで染められた風の冴子が、カイの後ろにぴったりと着いてきていた。

 

「離れろ。鬱陶しい」

 一方のカイは、染めた本人でありながらけむたそうである。

 

「は、はい・・・ 離れます。ですから・・・」

「ああ、わかったわかった。気が向いたら四人でも五人でも好きなだけの人数で可愛がってやる」

 

「はい、あ、ありがとうございますっ!」

 言葉の内容は、すっかりご主人様と奴隷である。

 

「(分身に任せて朝まで4Pはやりすぎだったか・・・?)」

 何せ父親が絶倫の邪淫王では、カイのそっち方面の常識がデタラメなのは言うまでもない。

 一応の事、主従の刻印は刻んでいるものの、冴子がこうまで従順になった原因はどっちかというのもあまりにも明確な話。

 

 

「かわいがるってなにが?」

 と、無垢なアーミィが、木偶ノ坊の肩の上から尋ねてきた。

 

 

「・・・その質問に答えてやるのは20年後だ」

「えー? なんでー?」

 

 と、そんなアホらしい会話を繰り広げながら

 

 

「(母上・・・ どんな手段を使っても、必ずお助けします)」

 カイは、拳を握り、固くそう誓った。

 

 

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 

 

 ・・・今回はえらく変態な話書いちゃったなー・・・ カーマを超サドにしてもうた。

 最近プレイした淫妖蟲の影響が強く出ちゃってますね。やりすぎだってばよ。

 

 単純に別の話にして、別の敵を用意して・・・ ってやればよかったんだと思うんですが、さすが僕。油断してると初期予測要領の10倍に(えー

 

 で、カイの旅の方ではまさかの冴子登場。ズバリ言うとこれは本編で冴子を出す為のクッションといいますか。

 ここから先は敢えて伏しておきます。

 

 ・・・それにしても冴子を変なキャラにしてしまったかなー・・・ 反省

 



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