旅館、山神。

 

 明日の打ち合わせと食事を終わらせた3人は、静瑠の薦めにより、それぞれ一旦部屋に戻り、温泉に入る事にした。

 勿論、麻衣は女湯で、木偶ノ坊と仁は男湯である。

 

 

 

  ◇    ◇    

 

 

   男湯。

 

 温泉は、それなりに広かった。

 普通の大風呂、シャワーは勿論。ジャグジー、打たせ湯、露天、サウナから冷風呂まで一通り揃っている。

 

そんな中、仁と、木偶ノ坊は、微妙な距離で隣同士に、大風呂に浸かっていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・」

 二人は、互いに無言で湯に浸かっている。

 特に仲違いという訳でも、険悪というわけでもない。

 ただ、互いにペラペラと話したり話しかけたりするタイプではないので、どう話しかけていいか探っている状況なのだ。

 

「・・・木偶ノ坊殿」

 先に口を開いたのは、仁だった。

 

「麻衣の、姉さん・・・ 天津亜衣というのは、どんな人物だったんだ?」

 陣の側からすれば、尤もな疑問である。

 

 仁は、天津亜衣という人物を知らない。

天津の双子の巫女の姉・・・そして二人の顔は瓜二つ。それだけしか知らないのだ。

 

「・・・・・・・・・」

 木偶ノ坊は、目を閉じたまま黙っている。

 

「興味本位で聞いているんじゃない。それでも・・・これから共に戦う仲間として、聞いておかなければいけないと・・・」

「亜衣様は・・・」

 仁の言葉を遮り、木偶ノ坊は語り出した。

 

「・・・実に、実に勇ましい・・・ 勇敢で、気高く、心身ともに強く、妹の麻衣様を心から心配する、優しい・・・ そして、美しい方ぞなもし」

 敢えて木偶ノ坊は、亜衣を過去形で語らなかった。

救えると、淫魔から元に戻せると信じているからこそ、強くそう語った。

 

「正直・・・ 淫魔の姿になった亜衣殿の姿は、目の前にあっても、なかなか信じ難かったぞな」

 木偶ノ坊は、湯の中で拳を握った。

 

「・・・すまない、俺のせいだ」

 亜衣をそうしたのは、タオシーと名乗る自分の幼馴染。薫だ。

 もし、あの時、自分が薫を助けてやれたら・・・

 

「そんな事はござらぬ。仁殿には家族を守る義がござった。

むしろ、それがしがあの場で・・・

いや・・・お互い、謝ったり、自分の責任だと言い合ったりするのはもう止めとするぞなもし。

 それよりも重要なのは・・・」

 

「明日・・・ 三種の神器を、取りにいき・・・」

「亜衣殿を助け申す」

「そして・・・タオシ・・・薫殿を、止める」

 

「明日は共に、頑張り申そう!」

「ああ!!」

 二人は、ガッシリと握手を、互いの手を強く握った。

 漢の友情。共に同じ実直な戦士であるからこそ、互いに分かり合うのは早かったと言える。

 

                                                                    

 

 それから数分ほどして、仁は湯船から上がった。

 

「木偶ノ坊殿は出ないのか?」

 木偶ノ坊は、どっしりと湯船の中で構えている。

 

「・・・勝負を挑まれては、途中で放棄するわけにはいかんぞなもし・・・!」

 旅館は貸切というわけではなく、一般客もいる。

 とはいえ、こんな山奥の旅館が盛況しているわけでは勿論なく、この温泉の男湯に他に入ってきた宿泊客も、かなり年を召したお年寄りのお爺さん一人。

 その爺さんは地元のマタギで、狩りで流した汗をこの温泉で落とすのが大好きなのだという。

 

 そしてその爺さんは、珍しい二人の若者に対して、長湯我慢対決を申し込んできた。

 早湯が性である仁はそれを辞退したが、木偶ノ坊は「勝負を挑まれたとあっては」と、それを引き受けたのだった。

 

「・・・そうか、程々に頑張ってくれ」

「うむ」

 一言だけ応援して、仁は風呂を出た。

 

 

「・・・負けませぬぞ、御老人」

「ヘッ、てぇやんでぇ! こちとら戦時から“長湯将軍の源”(ながゆしょうぐんのげん)って言われてんだ。まぁだまだ若造には負けねぇよ!!」

「むむ・・・っ!」

「へっへっへっ!」

 木偶ノ坊と爺さんは、二人きりの男湯の中で、猛烈な火花を散らせていた。

 

 

 

  ◇    ◇    

 

 

 

  一方、女湯、脱衣所。

 

 女湯は、脱衣所、そして温泉自体も、男湯と比べ多少広さがあり、装飾などにおいて少々の違いはあれど、基本の構造は一緒である。

 

 麻衣は、上着を脱ぎ、ズボンも脱いだ。

ブラジャーのホックを外し、ショーツもゆっくり脱ぎ降ろす。

一糸纏わぬ姿になった所で、服をすべて胸に抱え、ロッカーを開く。

 

そして、一枚ずつロッカーにしまい・・・

しかし、下着を入れようとした所で手が止まる。

 

「・・・・・・この、下着・・・」

 鬼麿様に、盗まれそうになったヤツだ・・・

 着替えの時は、慌てていたから見もしてなかったけど・・・

 

 お姉ちゃんと二人でお風呂に入っていた時の事を思い出す。

 いつも二人一緒にお風呂に入って、二人っきりでいろんなことを話した。

 自分がタオルや石鹸を落としたら、反射的にお姉ちゃんが地面に付く前に拾ってくれたこともあった。

 

 鬼麿様が覗きに来たり、それをお姉ちゃんが投げ飛ばしたり、それに・・・ それに・・・

 

 ・・・今は、お姉ちゃんが・・・隣にいない。鬼麿様もいない。

 一人きりでお風呂に入るなんて、何年ぶりになるんだろう・・・?

 

「・・・一人でお風呂に入るって・・・ こんなに淋しいんだ・・・」

 胸が、痛い。

 でも・・・

 

「お姉ちゃんは・・・もっと痛いんだよね・・・ 苦しいんだよね・・・」

 ここにはいない姉に語りかけるように、麻衣は呟いた。

 

 気を落ち着かせ、改めて旅館の手提げ袋から、体洗い用のタオルを取り出し・・・

 

 

「あっ・・・」

 手が滑り、体を洗うタオルが落ちる。

 目で追うも、

 だが

 突如現れた手が、床に落ちる前にそのタオルを掴んだ。

 

  まさか────

 

「・・・お姉ちゃ────!?」

 慌てて振り向く麻衣。

 

 しかし、後ろにいたのは

 

「あ・・・」

 後ろにいたのは、旅館の若女将、静瑠だった。

 

「はい。落としもん。・・・て、落ちてまう前やったら何て言うんやろねえ」

 静瑠は上品な持ち方で、タオルを麻衣に差し出す。

 

「あ、はい。すいません・・・」

 麻衣は、おずおずとタオルを受け取る。

 

「あきませんよ、そういう時は“すんまへん”やのうて、“おおきに”って言わな。

 謝られるより、感謝の言葉の方が嬉しいって、ウチは思うんよ」

  菩薩のような笑顔で笑いかける静瑠。

 

「・・・そうですね・・・ ありがとうございます」

 麻衣もまた、笑顔で応える。

 

「いややわぁ。そないかしこまらんでもええのに」

 口を押さえてコロコロと笑う静瑠。

 

「ところで、静瑠さんは何でここに・・・?」

 ふと浮かぶ疑問。

 

「うふふ、何やと思います?」

 そう言う静瑠の左手には、ハンドソープの詰め替えパックがある。

 そして、脱衣所の洗面台の数々には、やはりハンドソープが並んで・・・

 

 

「・・・ハンドソープの、詰め替え?」

「ピンポーン♪ 正解どす。

まぁ、ウチの事は気にせんと、ゆっくりお風呂で疲れ取りはって」

 

静瑠は踵を返し、テキパキとハンドソープの詰め替え作業を始めた。

 

「じゃあ、ええと・・・ 行ってきます」

「は〜〜い」

 静瑠の返事を背中に聞きながら、風呂へと入った。

 

 

  ◇    ◇    

 

 

 

 大風呂の中で、一人湯に浸かっている麻衣。

 温泉は雰囲気が良く、湯も気持ちがいい。

 しかし、麻衣の心は曇っていた。

 

 やはり、姉が隣にいない風呂は、面積に関係なく広く感じてしまう。

 それが温泉となれば、より一層淋しさとも質感は増すばかりだ。

 

「・・・部屋のお風呂に、すればよかったかな・・・」

 悲しい声で独り言を呟く麻衣。

 

 その時

 

 

「お邪魔しますえ」

 

 声の方向に振り向く麻衣。

 湯気を挟んだ擦りガラスの向こうには、どこかのモデルの様にスタイルがよいシルエットが映っている。

 

   (ガララ・・・)

 

 そのシルエットの正体は、引き戸が開いたことで明らかになった。

 

「静瑠さん・・・」

 一子纏わぬ姿となり、桶を片手に持つ静瑠がいた。

 

「はい、静瑠どす♪」

「え・・・ 詰め替えだったんじゃ・・・」

「それならもう終わりました。 何も、ウチお風呂入らへんなんて言うてませんよ?」

 ・・・確かにそうだった。

 詰め替えをしにきたとは言っていたが、温泉に入らないとは確かに言ってない。

 

「ホンマやったら、お客さんがおらん時に入るか、従業員用のお風呂で済ますんやけど・・・

 まあ、今回はこういうのもええでしょ。お背中、お流ししますえ?」

 

「は、はあ・・・」

 麻衣は、完全に静瑠の勢いに呑まれていた。

 

 静瑠は、大風呂の縁に片膝を着くと、充分にかけ湯をして、ゆっくり片足づつ湯船に入る。

 その仕草は、やはり上品で、美しい。

 

「隣、いいどすか?」

「・・・はい」

麻衣のすぐ隣にまで寄る静瑠。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 優雅な顔で真隣にいる静瑠に対し、麻衣は道はなしかけていいものか分からず、ただおどおどしていた。

 静かな時間が、続く。

 

「はぁ〜〜〜・・・ 自分の旅館で言うのも何やけど、ええ湯やねぇ。

 温泉はやっぱり、二人以上で入らな楽しないわぁ」

 静寂を破ったのは静瑠の方だった。

 

「えっ、は、はい・・・」

 急な話題に空返事をしてしまう麻衣。

 

「ウチの温泉の効能はね、疲労、肩こり、冷え性、腰痛、筋肉痛、リウマチ、貧血・・・ まあ、言ってしまえば何にでも効きますねんよ。

何か一つ当て嵌まるもん、あります?」

「ないです」

 特に思い当たるものもなく、正直に答えた。

 

「それはええね。何も無いんが一番よろしゅおすわ。

 ウチはねぇ、冷え性やってんよ。・・・でもねぇ、この温泉で働き出したら・・・ほんまに治ってしもたんやわぁ。

正直、最初京都離れる事になった時は・・・正直嫌やなぁとも思ぅてた。 仁君とか、仲のいい友達と別れるのも淋しいし・・・。

でもねぇ、その日以来、この温泉好きになったんよ。・・・今では、こっちも故郷みたいに感じますわ」

 

 冗談交じりの言い方だが、静瑠という人間の人生を垣間見られた気がした。

 

「そうなんですか・・・ あっ」

 麻衣は急にあることを思いついた。

 

「なに?」

「静瑠さんって、若女将さんなんですよね。ということは、女将さんは・・・」

「ああ、せやねぇ。言うてませんでした。

 女将は・・・ まあ予想がついてる思いますけど、ウチのお母様どすわ」

「・・・でも、見かけませんでしたけど」

「あの人、よく居なくなりますんやわ。麓まで行って麻雀やってたりパチンコやってたり・・・ いい加減なお人で、ウチも随分困ってますねんよ」

 苦笑する静瑠。

 その表情は、本当に母親に困らされているであろう事が伺える。

 

「でも・・・ 静瑠さんには、お母さんがいるんですね。・・・ちょっと、羨ましいな」

 麻衣と亜衣の母親は、二人を産んですぐに亡くなっている。

 物心つく前から母の面影も、手に抱かれる温もりも知らない麻衣にとって、どんな母親であっても、母がいるというだけで、麻衣にとっては羨ましい話だった。

 

「麻衣はん・・・」

 静瑠もそんな麻衣の心情を察した。

 

「・・・楽しい話題、しましょか」

「あ・・・ すいません」

「ええよ。気にせんといて。 そうやね・・・」

 

 そこからは、静瑠の何気ない日常の話が続いた。

 那緒という仲居は、口も悪く不良臭くて、放っておくと禁煙場所でタバコを吸うとか。

 小百合という仲居は、一生懸命な割にドジが多く、よく花瓶を割ったり盆をこぼしたりするとか。

 その他色々、旅館内で起こった珍事件などを、面白おかしく話してくれた。

 

 麻衣も、そんな話を聞いている内に、自然と クスッ と笑うようになっていた。

 

 そんな会話が続く中

 

「・・・・・・・・・」

 チラリと、麻衣は何気なく、偶然静瑠の胸に目がいった。

 

「(うわぁ・・・ スイカが二つあるみたい・・・)」

 改めて近くで見ると、静瑠の胸は大きかった。

 自分より、姉よりずっと・・・ まるでアメリカの巨乳自慢の人みたいに大きい。

 それでいて形もすごく奇麗で、全体的な肌の色に合わせて美しい色白。

 女性の麻衣でも見惚れてしまうほどだった。

 

「・・・? どこ見てますの?」

 静瑠の声に、ハッと我に返る。

 

「あっ! いえっ!! どこも!! あっ、アハハハハ・・・」

「・・・・・・うふふ、変な麻衣はん」

 気のせいか、静瑠の顔は、こちらの思考を見透かしている様だった。

 

 

 湯船に浸かってから、どれだけ経過したろうか

 

 

「・・・さて、そろそろ、しましょか」

 そう言って、その場で立ちあがる静瑠。

 

「え、ええっ!?」

 びっくりして飛び退く麻衣。

 

「何驚いてはるん? 体洗いましょ、言うてますねんけど・・・」

「え・・・ あ、そうですよね。あは、はは・・・」

 ・・・最低。私ってばさっきから何変なこと考えてるんだろう。

 鬼麿様の思考が伝染ったのかも。

 

                                                                

 

 そうして、麻衣は体を洗う為、椅子に腰を降ろした。

麻衣は、普段は毎日お風呂に入っているが、昨日ばかりは書庫髪から洗う。

 

「宣言通り、ウチが背中流させてもらいます」

 そして背後には、スポンジを構えた静瑠がスタンバイしていた。

 

「あの〜・・・ 自分で洗いますから・・・」

 やんわりと拒否しようとする麻衣。

 

「そないに遠慮せんと。ウチに任しといて」

 しかし結局、静瑠の勢いに呑まれてしまう。

 

 静瑠は、スポンジにたっぷりと液体石鹸を染み込ませ、ぎゅっ、ぎゅっ、と二、三回握り泡立たせると、麻衣の背中を優しく撫ぜた。

 

「麻衣はんの背中、奇麗やねぇ」

「そんな・・・ 静瑠さんの方が」

「うふふ・・・ ありがと」

 

 柔らかなスポンジの感触は、麻衣の背中全体を広く撫ぜ回していく。

 

「んあっ・・・!?」

 突如、その感触に、ビクンと震える麻衣。

 

「ふふっ、いややわぁ麻衣はん。背中洗うてるだけで、そんな声出しはって」

 それが可笑しいとばかりに、静瑠は柔和に笑う。

 

「あっ、す、すみませ・・・(なんで・・・? 自分で洗う時は、こんな感触は無かったのに・・・)」

 

 麻衣がそう思った瞬間にも、静瑠の手の動きは、まるで麻衣の弱点を見つけたかのように、麻衣の敏感な部分を撫ぜていく。

 

「んっ・・・ ん、んっ・・・・・・」

 さっきみたいに声を出さないように口を閉じるが、それでも声が漏れてしまう。

 

 スポンジを握った静瑠の右手は、横の脇腹へと進み、そのままヘソの位置へと進入する。

 

「やっ・・・ し、静瑠さんっ! そこは自分で・・・」

 明らかに背中を超えた手の侵入に、さすがに慌てて止めようとする。

 

「ええから・・・」

 しかし、そんな麻衣の言葉を聞かず、静瑠は自分の体を麻衣の背中に密着させた。

 

「やっ・・・!!?」

 大きな静瑠の胸が、麻衣の背中でつぶれる感触が伝わる。

 そのまま、静瑠は舞衣の背中に自分の体を大きく上下に擦りつけ、肩から胸、腹部に至るまで、麻衣の前の部分を余す所無くスポンジで擦り、泡を塗りたくる。

 

「あっ、あ、あっ・・・!」

 スポンジが胸を通り、乳首を擦り付けていくたびに、体が快感を訴えてくる。

 

 次の瞬間には、静瑠の両手は麻衣の形の良い両胸を掴み、捏ね上げるようにして揉みしだき始めた。

 

「うあっ!? やっ・・・ な、なん、で・・・ そんなっ・・・!」

 体を洗うという目的とは全く関係の無い行為に、流されるままだった麻衣もようやく異を唱える。

 

「そやねえ、体にええマッサージや思といて」

 しかし静瑠は聞く耳を持たず、おちゃらけな返事と共に麻衣の胸を弄び続ける。

 全体をこねくり回したと思ったら、指を鋏にして麻衣の乳首を挟み、ギリギリまで引っ張り、離す。

 ぎゅうと引っ張られた胸は、離された途端に勢い良く反動をつけて戻り、プルンと震える。

 

「きゃ・・・っ く、あぅ・・・っ!」

 静瑠の熟練された、蟲惑的な手による攻めは、完全に油断していた事も相俟って、麻衣の精神を快楽で押し流していく。

 既に麻衣の体は興奮し、顔は紅潮していた。

 下半身どころか体全体が熱く火照り、秘所からは早くも滴が垂れ始めている。

 

「(なん・・・で・・・っ 私、もう、こんな・・・っ)」

 自分でも、こんなに早く、体がここまでこうなってしまうのは、いくらなんでも・・・ おかしい。

 

 

 そんな考えがよぎった時、再びスポンジを握った静瑠の手が、背中越しに麻衣の秘所に忍び寄る。

 

「やっ・・・! いいです!! そこは・・・ そこはっ!!」

 狼狽し、手から逃げようとする麻衣。

 

「せやかて、隅々まで洗わんと・・・ ねぇ?」

 おかまいなしに、静瑠はスポンジを擦りつけた。

 

「あああっっ!!?」

 敏感になっていた所に突然やってきた刺激に、麻衣は思わず仰け反る。

 

「あらあ、麻衣はん、まだ生えてませんのやねえ」

「やぁっ・・・ そん、なの・・・ 言わ、ない・・・くぅ、んっ!!!」

 

「ああ、麻衣はん。そんなに動いたら・・・」

 

(ツプッ・・・・・・!)

 

 静瑠の言葉と共に、静瑠の左手の二本の指が、勢い良く麻衣の秘所に突き入れられる。

 

「ひゃああ、あっ!!?」

 突然の侵入に、麻衣は悲鳴を上げた。

 

「ほ〜ら、ウチの指、入ってしまいましたえ?」

 

「ぬ・・・抜い・・・て・・・ くだ・・・さ・・・」

 思考に靄が掛かり始めた状態で、呼吸を荒げながら、お願いをする麻衣。

 

「う〜ん・・・ そう言われてもねぇ・・・ ほら」

 静瑠は敢えて大袈裟に、指を抜こうとする仕草をするが

 

「困りましたなぁ。麻衣はん、ウチの指咥え込んで、離して貰えまへんわぁ」

 

(ジュッ、ジュッ、クチュ、グチュッ・・・)

 

「ふぁあっ!? やぁっ!! 動かさ、ない・・・ でっ・・・!!」

 

 抜けない指を抜くという名目で、縦横無尽に麻衣の肉壁をかき回す。

 静かな女湯の空間の中に、麻衣の秘所から発せられる水音だけが響いた。

 

 麻衣が思うように抵抗出来ないのは、まったくの不意打ちだったからというだけではない。

麻衣にとって、静瑠の攻めは、これまで経験したことのないものだった。

これまで麻衣を襲い、陵辱してきた邪鬼や淫魔達は、己の欲望のままに攻め立ててくる一方的なものだった。

しかし、静瑠の全身を使った愛撫は、女性ならではの・・・ いや、静瑠ならではの暖かさと優しい手つきで、麻衣の体から純粋に快感を引き出していっている。

人に弄られているというのに、まるで自分で慰めているかのように、嫌悪感も拒否感も無い。

ただ、女性同士であるという事に対する抵抗と、自分が天津の巫女として貞操を守らないといけないという思いの二つが、このまま行為が進んでしまうことに背徳感と恐怖を感じさせ、それだけが麻衣の理性を保とうとしている。

 

「あきまへんねぇ。こうやろか? それとも、こう?」

 静瑠の指は、奥にまで突き入れたり、入り口を激しくかき回したり、また奥まで突き入れたりを繰り返す。

 

「やっ、あっ! やんっ、ひゃあうぅっっ!! ダメッ! ダメぇ〜〜〜!!!」

 だが、そんな麻衣の精神的な抵抗も、どんどん進行していく静瑠の攻めの前には、風前の灯でしかなかった。

 激しい指の動きに、麻衣はただ目を閉じ、打ち震えるしかない。

 舞衣の快感のボルテージはどんどんと上がっていき、絶頂が近づいていく。

 

「何も我慢することはあらへんよ。時には快楽に素直になるんも、女には大事どすわ」

「ふぁ・・・ あっ・・・!」

 もう、まともに思考が出来ない。

 頭の中に白い靄が掛かって、静瑠の言葉も半々ぐらいしか脳に届いてはいないだろう。

 

「うふふ・・・ じゃあ、そろそろ・・・」

 そこで、静瑠の指は本格的な攻めに転じた。

 元から見つけていたであろう、麻衣のGスポットを、指を曲げ攻め立て、親指でクリトリスを往復して弾く。

 

「うああっ!!? ふ、あ────」

 突如やってきた強烈な快感に、麻衣は限界を超えた。

 

「おもいっきり声出してええよ。男湯と女湯の壁は防音やさかい」

 ボソリと、絶頂寸前の麻衣にそう呟く。

 

「あっ・・・ うあ・・・ ふぁっ!! あああああああ────────────っ!!!!!」

  

 ビクビクと体を震わせ、麻衣は大きく叫びながら絶頂した。

 脳の中が白く弾けて、気が遠くなる。体から力が抜けていく。

 

「・・・気持ち、よろしゅおした?」

「あ・・・ う・・・」

 静瑠の質問も、絶頂直後の麻衣には返事は到底出来ない。

 

 

「・・・・わた、しっ・・・ なん、でっ・・・ こん、な・・・」

 絶頂したばかりだというのに、体の熱は全く冷めてくれない。

 それどころか、より熱くなっていくようにさえ感じる。

 

「あ・・・」

 静瑠は、自分が持って入っていた、スポンジに使っていた液体石鹸の瓶を見て表情を変えた。

 

「・・・・・・?」

「かんにんなぁ。これ、液体石鹸やのうて、よう泡立つローションでしたわ。・・・ガラナ入りの」

 両手を合わせて【ごめん】のポーズをする静瑠。

 

「ロ・・・ローショ・・・ がら・・・!?」

 ガラナは初耳だったが、ローションが何かぐらいは麻衣も知っている。

 そして、麻衣が知らないガラナというのは、アマゾン原産のツル性の植物で、その実は催淫効果があり、女性に対しては性感神経を刺激し、性欲を高める効果がある。媚薬の原料の一つである。

 

 静瑠は【間違えた】という顔をしているが、勿論そんなものを液体石鹸と間違えるなどするわけがない。

 

「我慢できます? 麻衣はん」

「んぅ・・・っ、んんぅぅ〜〜っ・・・」

 首を振りながら、体を悶えさせている麻衣。

 内から沸き上がる衝動に耐え切れない様子だ。

 

「あらあら、ちょっと横になった方がええどすなぁ」

 

 静瑠は立ち上がると、大風呂の縁に置いてあった桶から、布を取り出し、慣れた手つきでバッと広げ、風呂場の床に敷く。

 

「さ、麻衣はん」

 悶え続ける麻衣を優しく抱きかかえ、そっと寝かせる。

 

「どうどすか? 少しは落ち着きます?」

 猫なで声で優しく語りかける静瑠。

 

「んん・・・ ダメッ・・・! だめ、なのぉ・・・っ」

 麻衣はどんどん息を荒げ、ついには自分の秘所に手を伸ばし、秘所を弄り始めた。

 

(チュク、グチュ、クチュ、チュグ・・・)

 

「やっ・・・あ、指・・・ ゆびぃ、止まらなっ・・・」

 理性ではこんなことはいけないと分かっているのに、麻衣の指は、人前で激しく水音を鳴らしてしまう。

 

「あらあら、これはあきませんねぇ。・・・ウチも手伝わせて貰いますわ」

 そう言うと、静瑠は再び、ローションの瓶を手に取った。

 

「え・・・ なん、で・・・」

 

 麻衣が疑問に思う間もなく、静瑠はそれを蓋ごと外したかと思うと、顔の高さから傾け、自分の体にボタボタとこぼし、もう片方の手で体の前面に広く塗りたくった。

 

 美しく豊満な肉体にこぼれ、かかる白濁の粘液、それを塗りたくる静瑠の姿は、とんでもなく官能的で淫美だった。

 

「え・・・え・・・?」

 麻衣は困惑するが、そんな麻衣の上に、静瑠は無言で、ローションで滑った肉体を、麻衣の上に重ねる。

「!!?」

 舞衣の胸と静瑠の胸が重なり、潰れる。

 

「うふふ・・・」

 静瑠と麻衣の顔が、目と鼻の先になり、静瑠の長い髪が頬をくすぐる。

 

「し・・・ずる・・・さ・・・」

「そんな不安な顔せんと、まかしといて」

 そしてそのまま、静瑠は前後に動き始めた。

 

「・・・っ く、ひゃぁうっ!!? ん、ああぁあっ!!?」

 胸と胸、秘所と秘所同士が擦れ合い、乳首、クリトリスが絡み合う。

 それにより、ローションが互いの体に塗りこめられ、ただでさえ敏感になっている体が、ぬちゅぬちゅと音を立て、快楽を高め合っていく。

 白濁した粘液で互いの体は滑り、曲線の部分は電気の光を反射して、通常にはない鈍い光を放っている。

 女神と天使の性の戯れ、例えるならそんな所か。

 それはどこまでもいやらしく、淫艶で、美しい光景だった。

 

「・・・麻衣はん、こういうの初めてどすか?」

「・・・・・・んんうっ・・・ あくっ・・・! ふっ・・・」

 もう麻衣は何も考えられなくなっていた。

 まるで、静瑠という名の蛇に飲み込まれ、脳を溶かされたかのようで・・・

 

 

「うふっ・・・ どうやら、軽く誰かとはあったみたいやね」

 ・・・確かに一度、麻衣には未遂ながらそういうことがあった。

 

 姉・・・ いや、姉に変化したスートラに弄ばれた事が一度だけ・・・

 

 でも、それと今回とはまるで違う。

 姉の姿をしたスートラの行為は、自分を強く束縛しようとし、強引だった。

 

 しかし、目の前のこの人は、静瑠さんは・・・ 違う。

 今までの自分に、淫魔達が行ってきたのは陵辱であり、強姦・・・レイプだ。

 邪鬼に舐められ、弄られたのも、黒球を咥えさせられたのも ・・・木馬で、純潔を散らされ、後ろの穴を抉られたのも。

 

 静瑠さんは、強制も、束縛もしない。

 ローションなど、まったく強引さがないわけではないが、それでも、逃げようと思えば、逃げるチャンスは実際いくらでもあった。

 今からでも、残った力を使って、走って逃げれば、この人は追いかけない。

 

 それでも逃げないのは、わかってしまったから。

 

 この人の行為は、【愛撫】だ。

 この人は自分なりに、全力で私を慰めて、愛してくれている。

 手や全身、そして言葉から、なんとなく分かってしまった。この人は自分に欲望をぶつけているんじゃなくて、自分を優しく包み込んでくれている。

 

 それがわかってしまったら、逃げる理由が・・・無い。

 自分は初めて愛されている。今は・・・この暖かさから逃げる方が、怖かった。

 

「うあっ・・・ あっ・・・ しず・・・ 静瑠、さぁん・・・っ!」

 麻衣は、自分から静瑠の肩に腕を絡める。

 

「・・・(ニコッ)」

 それに対し静瑠は、優しい微笑みを返し、そして・・・ 麻衣の唇を、奪う。

 

「んむっ・・・!」

 麻衣にとって、二度目のキス。

 

「んん、くちゅ、んっ、んっ、ちゅ・・・っ」

「はぷっ・・・ んん、んぷ、むっ・・・っ!」

 

 二人は互いの唇を求め、積極的に舌を絡めた。

 更に、二人のクリトリス、そして乳首も、互いに擦り付け合う形で、積極的なディープキスを繰り返す。

 いつの間にか、二人は両手を繋ぎ合っていた。

 

「あああっ!! ああっ!! も・・・ ダメっ!! イッちゃ・・・ イッちゃ、うううっ!!!!」

「ええよっ・・・! ウチも・・・っ、一緒に、イク・・・ からっ・・・!!!」

 

 

「ふあっ!? あっ、あああぁあ────────────っ!!!!!!」「はあ、あっ────────────!!!」

 

 手を繋ぎ合ったまま、二人は絶頂した。

 互いの痙攣の振動が、手と、体を通して互いに伝わる。

 

「ふぅ・・・」

 絶頂の余韻を残しながらも、静瑠は麻衣に体重を乗せないように傍らに寝そべり

 

「ふぁ・・・ あ・・・ ふ・・・」

 逆に麻衣は、初めて素直に快楽を受け入れた形での絶頂に、未だに意識が白く霞んだまま、小さく痙攣を繰り返している。

 

 

 

  ◇    ◇   

 

 

 

「付いて来て。楽しい遊び、教えたげますさかい」

「あっ・・・」

 麻衣が落ち着くのを待って、静瑠は最後の遊び場へと麻衣を誘う。

 

 絶頂の余韻冷めやらぬ中、静瑠に手を引かれ、麻衣はジャグジー風呂の中に、静瑠と共に入る。

 

 ジャグジーの中では、前後左右に強い水流が渦巻いていて、油断をしたら足を取られてしまいそうだった。

 静瑠は、その奥の座り型のジャグジーが並ぶ所に麻衣を連れ・・・

 

「このジャグジーは、普通に座ってもええんどすけど、逆に座ると・・・」

「・・・・・・?」

 そう言って、巧みに麻衣を誘導させる。

 

「えっ・・・」

それにより、麻衣は自分でも良く分からないうちに、開脚した状態で、ジャグジーの真前に座らされた。

 

 麻衣の股間が、湯に沈み込む。

 

 それと同時に・・・

 

「・・・んあっ!? はっ、うあ・・・っ!!!

 予想以上に強い水流は、麻衣の秘所全体を強く刺激していく。

 水流に紛れる気泡が、まるで生き物の様に秘所に刺激を与え、人の手には出来ない快感が、全くの不規則な形で与えられていく。

 

「はっ、ああっ、くぁっ、あ、んっ・・・!!!」

 麻衣にとって、今までに感じたことの無い、未知の快感だった。

 

「うふふ・・・ 気持ちええでしょ? でも、それだけやないんどすえ?」

 静瑠は麻衣の左肩にアゴを乗せ、両手を麻衣の秘所に伸ばすと

 

「えいっ♪」

 静瑠は、いきなり麻衣の小陰唇を大きく開き、麻衣の腰をジャグジーの噴出溝ギリギリに密着させる。

 

「えっ・・・? あ、うあっ!!? きゃ、ああああっ!!?」

 入り口を大きく開かれた途端、水流は狙いを定めたかのように、麻衣の膣内を襲った。

円筒形の水流と、数百はあろう気泡が、まるで形の無いディルドーが侵入してきたかのように麻衣の中を駆け巡る。

 

「ああっ! ああっ!! ひあ、ああんっっ!!」

 快楽の刺激の群れに、麻衣は大きく仰け反る。

 

「すごいでしょ。ナカまで届いて、そしたらナカでお湯が逆流して・・・ なぁ、麻衣はん? ・・・お湯に犯されるって、どんな感じ?」

「ひああっ!!? ふあっ!! やっ・・・お腹が・・・おなかの中、がっ・・・ あつ・・・っ」

 

「・・・うふふ、麻衣はん、ホンマかわいおすなぁ。・・・ウチ、本気で食べてしまいたいわぁ」

 そう言って、麻衣の首筋を、かぷ と甘噛みする。

 

「ふぁっ────!?」

 その感触に驚き、仰け反る麻衣。

 そのまま背中や首筋に、静瑠はキスを繰り返した。

 

「あっ、あ、ああ、あっ────!!!」

 前から来る強烈な刺激と、後ろから来る甘美な愛撫が、麻衣の脳を痺れさせていく。

 

 そんな痺れが、どれだけ続いたろうか。

 

「はっあっ ああああああああああ────────────!!!!!」

 

 麻衣の3度目の絶叫が、風呂の中に響き渡った。

 

 

 

◇    ◇

 

 

 

 

「うふふ、まだまだ修行が足りませんねぇ」

 行為の後、二人は、露天風呂の方で隣り合っていた。

 

「そっ、それは、静瑠さんが・・・」

 今にしてみれば、どうしてあんなにまで乱れてしまったのかと恥ずかしくなる。

 天津の巫女として、おばあちゃんに合わせる顔が無い。

 

「でも、気持ちよろしゅおしたでしょ?」

「う・・・・・・」

 顔を赤くし、口ごもる麻衣。

 

「すっとした?」

「え?」

 

「暗い顔してはったからね。

胸の中に悪いモン貯めてる時は、パーッと発散するのが一番どすわ」

優しい笑顔を向けてくれる静瑠。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 胸にジンと、その笑顔と言葉が染みる。

 

「明日はお互い頑張らなねぇ」

 そんな静瑠に

 

「ぐすっ・・・」

 麻衣は思わず涙ぐんだ。

 

「あらあら、何泣いてはるの、もう」

「ぐす、ぐす・・・っ」

 静瑠は、優しく麻衣の頭を撫でる。

 

その光景は、まるで母親と娘だった。

 

 

  ◇    ◇ 

 

 

「憑きモン取れたみたいで安心しました。

 ・・・ほな、ウチもう上がりますさかい。ごゆっくり」

 

 静瑠は、シャワーで体のべとつきだけ落とすと、引き戸を開けた。

 

「え・・・? 体、洗うんじゃ・・・」

 

「あぁ、ウチねぇ、本当はもうお風呂入っとったんよ。・・・かんにんな♪」

 両手を合わせて、ペロッと舌を出す静瑠。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ポカ〜ン・・・)」

 口を開けたまま、呆然とする麻衣。

 

静瑠は、手を振り風呂を出て行った。

 

 

「(・・・・・・あの人には、一生勝てなさそう・・・)」

 残された麻衣は、がっくりと肩を落とした。

 

 

 

 

  ◇    ◇   

 

 

 

 静瑠は一足先に着物に着替え、脱衣所を後にしていた。

 

「・・・うふ♪」

 上機嫌で女湯の暖簾の裏を通り、廊下を歩く。

 

 そこで

 

「お楽しみだったみたいじゃないか」

 背後からの呼び声に、ピタリと立ち止まる静瑠。

 そして無駄の無い動きで振り返る。

 そこにいたのは・・・

 

「お母様・・・」

 静瑠の母にして、この旅館“山神”の女将。神藤 紫磨(しんどう しま)である。

 手に持った扇子でもう片方の手をポンポンとはたきながら、静瑠の方へと歩み寄る。

 

 年は40代前半といった所か、黒髪の長髪、女将専用らしき着物は黒蝶の柄をし、濃い目の化粧と口紅を塗ってある顔は、女将と言うよりはどこぞの悪の組織の女幹言われた方が良く似合うほど悪魔的な美人顔で迫力がある。パッと見は年増だが、見れば目元に皺がある程度で、それでも熟した女性ならではの美しさが見られる。

 

「アンタも悪い癖が抜けないねえ。ったく、一体誰に似たのやら」

 

「お母様こそ、どこ行ってはったんですか? 旅館をウチや他の皆さんに任したまま放っぽらかしはって」

「ハン、長い年月を経て再びあの場所へ行って神器の封印を解こうってんだ。・・・故あれば、あたしだって本腰を上げるのさ」

 キセルの煙草を噴かす紫磨。

 

「それはそれは・・・ ご苦労様どした。道理で山の霊気が清浄になったと思いましたわ。

 ・・・でも正直驚きやねぇ。一銭にもならへんことはせぇへん主義や思てましたけど」

 

「馬鹿言ってんじゃないよ。そりゃ金は大事だけどね、退魔の一族の宿命まで忘れたりしないよ。

 それにどちみち、お前もアタシも頑張らなけりゃ、どれだけ金貯めても意味が無くなっちまう。

 ・・・まったく、癪な話だよ」

 

「・・・・・・そやね」

 一族の宿命。守らなければならない人の世。

 遊び人の母でさえ本気にならねばならないほど、状況は悪い方向へ行っている、ということになる。

 

 

「静瑠こそ、天津の巫女のお嬢ちゃんにまで手を出すなんて、いよいよもって見境が無くなってきたんじゃないのかい?」

「あら、ええやないですか。あの子もちょっと気負い過ぎやったみたいやし、発散が必要やったと思いますよ」

「・・・フン。そうでなくとも、会った時から食っちまおうと思ってたんだろ?」

 

「ふふふ、いややわ〜。・・・当たり前やないですか。

あんな美味しそうな可愛い子見てしもたら、食べてしまいたい思います」

 その時、静瑠の目は、蛇のような妖しさがあった。

 

「・・・我が娘ながら、お前の趣味にゃ付いてけないよ。

 ったく、お前もしかして、淫魔として生まれて来る筈だったのが手違いで人間に生まれてきたとかじゃないだろうね」

 

 自分の娘に対して、随分なジョークを言う母。

 

「ウチもそう思いますわ。どっちか言いますと淫魔の方が性に合うてる感じがしますさかい」

 静瑠もまた、冗談には到底聞こえない返しをする。

 

「ふふふふふふ・・・」「はっはっはっは」

 異色な母子は、仲良く笑い合った。

 

 

「明日は荒れそうやね・・・ ウチも明日に備えるとしますわ。お母様、旅館は頼みます」

 しずしずと、自分の部屋に戻っていく静瑠。

 

「静瑠」

 それを、紫磨は一言呼び止めた。

 

「何どすか?」

「・・・明日はせいぜい気を付けな」

 静瑠の方は向かず、キセルをふかしながら、静瑠に、実にあっさりとした激励を言い放った。

 

「・・・おおきに、お母様」

 静瑠は、嬉しさを素直に表情に出す。

 

「ハン」

 照れくさいのか、邪魔臭いのかも分からない言い方で、短い返事をする紫磨。

 

 静瑠は、母に会釈をし、曲がり角の向こうへ消えていった。

 

 

 

 

 

  ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 予感的中。麻衣×静瑠だけで一話近く・・・ 

 ・・・怖い、静瑠の台詞や行動の時だけ勝手にタイプの指が動いている気がする。

 

静瑠「まだまだ活躍させてもらいますえ〜」

 

 ヒエエエ。 ((((・Д・;))))

 

 

 

 麻衣の下着、細かい所なんですが、知り合いが言うに女性側からすると今時パンティっていうのはNGワードなんだそうで

 その知り合い監修でショーツにしました。

 

 あと、知らない人へ。

 ディルドーというのは張型(はりかた)っていう意味です。簡単に言うと動かないバイブです。

 



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