天津神社、境内

 

「愛媛というと、四国の・・・」

「遠い、ですな・・・」

「そちらの準備が済み次第、すぐにでも行きたいと思っている。・・・君達もすぐにでも出発したいと思っているだろう?」

「・・・でも、それには・・・」

 そう、そこに行くまでの足が無い。徒歩で行くにも、最寄の電車まで・・・

 

「足なら、新幹線までは俺の乗ってきた車で行ける。そこから新幹線へ乗り換えて、また電車・・・という形になるか」

「車・・・?」

「ジープだ。俺の趣味は山道のドライブで・・・ いや、それはどうでもいいことだったな。パワーだけなら最高のヤツだ。山道も、その気になればここの階段も登れる優れもので・・・

ああ、安心してくれ、車はちゃんと階段前で止めてある」

真面目な顔のまま、所々抜けた発言をする仁。

・・・どうやら、天然ボケな部分があるらしい。

 

 

「・・・む、むむ・・・」

 木偶ノ坊は、顔中に皺を寄せている。

 

「どうしたんだ? 木偶ノ坊殿」

 事情を知らない仁には、その理由が分からない。

 

「木偶ノ坊さん・・・ やっぱり、鬼麿様が・・・?」

 そう、木偶ノ坊の悩みの種は、今も神社の奥の寝室で眠り続けている鬼麿だった。

 これまでの戦いで、今この天津神社には、麻衣と木偶ノ坊以外に戦力と呼べる存在は無い。

自分が麻衣様と共に愛媛に赴けば、鬼麿様を一人でこの場に残すことになり、自分がここに残ってしまえば、麻衣様は目の前の男と二人きりで、その神器を探しに行かねばならない。どちらも敵に襲われる可能性が高い以上、どちらか一つを選ぶということは、木偶ノ坊には難しい話であった。

 

「木偶ノ坊さんは・・・」

 麻衣は、耳打ちで仁にかいつまんで説明した。

 

「・・・と、いうことなんです」

「なるほど・・・ それは難しい問題だな」

 仁もまた、眉を寄せて考え込む。

 

 その時

 

『ご心配には及ばないでしょう』

 

 どこからか、柔らかな女性の声が響く。

 

「・・・誰?」

 辺りを見渡す麻衣。

 

 仁は、急いでジャンパーに隠れていたポーチから何かを取り出す。

 それは、リンゴ大の水晶球だった。

 仁の掌の上で、水晶球は蒼い輝きを放ち、その中に一人の女性の姿を映し出す。

 

「こ、これは・・・」

「何・・・?」

 驚く木偶ノ坊と麻衣の二人。

 

 水晶の中に写る女性は、麻衣と同じ位の年頃の少女だった。

 平安の陰陽師を象徴するような、それでいて独特の色調と形をした、格調高い陰陽師の服。ビロードの絹糸を思わせる艶麗しい水色の長髪。白く透き通った肌。そして、黒の中に蒼を見せる、まるで全てを見透かしてしまいそうな瞳。

 全てが、神格化した美しさを持っており。それが光り輝く水晶の中に映っているということも、より幻想的な状況を作っている。

 

 麻衣、木偶ノ坊両名は、ただ、その姿に魅入っていた。

 

「彼女が、現在の陰陽師の頂点を統べる姫、【安倍梗子】(あべ きょうこ)。同時に退魔機関【逢魔】の指導者でもある。・・・俺達の間では【桔梗姫】と呼ばれている」

 そんな二人に対し、仁が説明をする。

 

『【姫】などと呼ばれるような人物ではとてもありませんので、恐縮ですが・・・』

 まるで小さな鈴が鳴るが如く静かな、それでいて凛とした声。

 

『お初にお目にかかります。天津麻衣さん。木偶ノ坊様。

 まず、陰陽師の指導者という立場でありますが故に、この場を離れる訳にはいかなかったとはいえ、直接お会いする事無くこういった形になった非礼をお詫びいたします』

 深々と頭を垂れる姫。

 

「あっ、いえっ、そんな・・・こちらこそ、滅相も無いです!」

 年もそう変わらないであろう相手に、麻衣は委嘱しまくっている。

 

『(クスッ・・・) そうお硬くならずとも、同い年なのですから気軽に呼んで下さい』

「えっ・・・ 同い、年・・・?」

『はい』

 手で口を隠し、鈴が転がるような上品な笑い方や、礼儀正しい喋り方、そして成人した女性にも少ない高貴な雰囲気を纏った目の前の女性は、麻衣には外見が少女であっても、一回りぐらい年が違うのではないかと錯覚してしまう。それが同い年などと言われても、にわかには信じられない。

 

「それで姫、【心配には及ばない】とは、どういう?」

 質問する仁。

 

『あなたは今回、自分一人で全てを解決するつもりで単身向かったのでしょうが・・・ あなたという人間は、決して独りではないということです。今回の戦いで、あなたはそれを思い知るでしょう』

 自愛に満ちた笑顔で、意味深な言葉。

 

「・・・? それは、どういう・・・?」

『私からあなたに送れる言葉は、これぐらいです。そして・・・麻衣さん』

 麻衣を呼ぶ姫。

 

「・・・は、はい?」

『この度の事は、元はと言えば、我々安倍陰陽連の忌まわしき歴史と、古き妄執に縛られた醜き心が引き起こした事。

その結果・・・一人の少女を復讐鬼へと変えてしまい、そして、薫さんは、あなたの姉を淫魔に変えてしまったと・・・ これは、どれだけの生涯をかけても償いきれるものではありません。

麻衣さん。私はあなたに対し、いかなる叱責、罰を言い渡して頂いても受け入れるつもりです。・・・しかし、どうかお許しください。私達は、償いの前に、自らが撒いた種にけじめをつけなくてはならないのです』

 

「姫・・・ そんな、あなたが・・・」

「そ、そんな! 私は・・・」

 仁、麻衣両方が慌て否定しようとする

 

「そして・・・ お願いです」

 それは、姫自身の声に遮られた。

 

「どうか・・・ 仁だけは、信じて・・・共に戦って下さい。彼は、とても純粋な・・・優しい人です。

 あなた達の良い友として、仲間として、頼りになってくれる筈です。どうか・・・」

 そう言って、水晶に映る姫は、指を立て、何の迷いも無く・・・土下座をした。

 高貴であり、大きな役職にある女性のその態度に、その場にいる皆が衝撃を受けた。

 

「姫!! 俺の為にそんな・・・ 止めて下さい!!」

 仁は、悪いのは俺なんですと言わんばかりに姫に呼びかける。

 しかし、姫はその姿勢から、一寸たりとも動かない。

 

「あ、あの・・・ ええと・・・ 梗子、さん・・・」

 麻衣が、恐る恐るながら語りかける。

 

「私も、仁さんはすごく優しい人だと思います。・・・出会ったばかりですけど、それに・・・梗子さんも、すごくいい人だって分かります。・・・姉さんをあんなにしたタオシー・・・薫さんを、そしてその薫さんの人生を歪ませた人達を、憎んでいないって言ったら・・・ 嘘になりますけど・・・

 とにかく、お願いですから頭を上げて下さい。その・・・ 困っちゃいます」

 

 しどろもどろではあるものの、心の底からの麻衣の言葉。

 

『・・・ありがとう、ございます』

 それに対し、ようやく姫は、ゆっくりと頭を上げた。

 

「私・・・行きます。仁さんと一緒に。お姉ちゃんを元に戻しに」

 胸の前でガッツポーズを作り、宣言する麻衣。

 

「・・・・・・・・・」

 木偶ノ坊は、やはり返事を出せずにいた。

 

『木偶ノ坊様』

 そんな木偶ノ坊に呼びかける桔梗姫。

 

「・・・・・・はっ!? 何でござ・・・」

『とりあえず、鬼麿様を連れて、一度仁と麻衣様と共に、階段を降りて下さいませんか?』

「それは・・・ 鬼麿様を連れて行けと?」

『そうではないのですが・・・ 今はそれだけしか言えないのです。すみません・・・信じてくださいとしか・・・』

「は・・・はあ・・・」

 そういう風にお願いされては、木偶ノ坊も首を横には振れない。

 

 水晶の中で、桔梗姫を呼びかける声が響く。

『あっ・・・ 申し訳ありません。もう時間の様で・・・ 皆様、どうかご無事で────』

 唐突に、水晶の映像が、まるでテレビの電源が消されるかの様に

ブツンと音を立て、消えた。

 

境内を一瞬、沈黙が支配する。

 

「忙しい、人なんですね・・・」

「姫には、やることが多すぎるんだ。

・・・ここ数年、安倍内部では色々な事があって。そのゴタゴタの後始末を姫は一人でやろうとしてる。・・・まったく。あの人だけが背負わなくちゃいけない重みじゃないというのに・・・」

仁は、居た堪れない顔でそう言った。

 

 

 逢魔仁と、安倍梗子。

立場や戦う場所はそれぞれ違うものの、互いが互いを思い遣り、信頼している。

麻衣は、その絆を少し羨ましく思った。

 

「(お姉ちゃん・・・・・・)」

 改めて、今は隣にいない姉の事を想う。

 いつも、いつも一緒にいた一番の理解者。一番の親友。

 そして、今や麻衣にとって、唯一の家族。

 

「・・・・・・・・・っ」

 涙が出そうになるのを必死に抑えた。

 泣き虫の麻衣のままで、姉が救える筈が無いから。

 

 

  ◇    ◇   

 

 

 そうして、麻衣は着替えなどの最低限の用意と、今の服の着替えの為。木偶ノ坊も、桔梗姫の【まずは車まで】という言葉の通り、旅の為の荷を一応用意し、寝ている鬼麿を毛布で包み、抱き抱えた。

 

「鬼麿様・・・」

 鬼麿の寝顔は、あれだけの事があった後とは思えないほど安らかだった。

 まるで赤子の様に純粋な顔で、スヤスヤと寝息を立てている。

 

「・・・・・・」

 桔梗姫の言葉どおり、とりあえず鬼麿を抱え、歩き進む間も、木偶ノ坊の心は葛藤を繰り返していた。

 己が生涯護ると決めた主の守護。

 己の非力により救えなかった仲間の奪還。

 どちらを優先すべきなのか、答えは出ない。

 

 ただ今は、歩くだけだった。

 

 

  ◇    ◇   

 

 

 神社の鳥居前で、一人待っている仁。

 彼は一人、神社の木々や色々な景色を、ただゆっくりと見つめ、物思いに耽っていた。

 

「(薫・・・・・・)」

 何年も、必死に探していた一つの名前。

 生きていると信じていた。だから、紙を見た時、そして、薫の現在地が分かったその時は・・・ 嬉しかった。

 だが同時に、その薫が淫魔に組し、天津の巫女を淫魔に変えたという事実を聞いた時は、胸が張り裂けそうにもなった。

 

「・・・見つからない訳だ」

 鬼獣淫界という可能性までは、考えていなかった。

 そしてそれは、単身でそんな所に行ってしまうまで、あいつは追い詰められ、そして深く自分たちを憎んでいたという事になる。

 

 ・・・どこにいるか、何をしているかがわかった以上。迷ってはいけない。

 例えどんな形になろうとも、【あの時】の贖罪のため、けじめのため、薫と決着を付けなくてはならない。

 逢魔の隊長、一戦士として。

 そして、薫の・・・ 親友として。

 

 そんな内省を、何度か繰り返したその時。

 

 

「お待たせ申した」

 先に来たのは木偶ノ坊だった。

 

「その子供が・・・」

 仁にとっては、当然ながら初めて見る人物。

 

「鬼麿様でござる」

「(・・・普通の子供じゃないか・・・)」

 仁は驚きを隠せなかった。

 菅原道真の血と、鬼獣淫界の魔王の血も受け継ぐ、淫魔大王の強い資格を持つ子供。仁が知っているのはそれだけだった。

 しかし、木偶ノ坊に抱かれているその子供は、どこからどう見ても、どこにでもいる普通の少年で、淫魔大王だの、道真だのといった単語など感じられるはずも無い。

 

「しかし、桔梗姫殿は何故・・・」

「俺にもわからない。だが・・・あの人はいい加減なことは一度も言ったことは無い。信じてくれ」

「いや、元より疑ってはおらぬ。そなたも、桔梗姫殿も」

「・・・感謝する」

 

 そこに、パタパタと足音が近づいて来る。

 

「ごめんなさい、待たせちゃって」

 勿論、麻衣である。

 

「いや、そんなに待っては・・・ ・・・」

 言葉を途中で止めてしまう仁。

 

 着替えた麻衣の恰好は、先程までのパジャマから、長袖のシャツと黒ズボン、そして部活動に使っていたのであろう肩掛け型の円筒形バッグという、少女らしい着飾りと言うよりは旅の実用性を優先したであろう実にラフなものだった。

 

 化粧など勿論していないし、シャワーを浴びてもいない。

やったことといえば、着替えの他には、髪を櫛で梳かし、軽く洗顔した程度。

 

それでも、陽光の下、改めて見る天津麻衣の活動的な姿に、仁、そして仁と比べて見慣れている筈の木偶ノ坊さえ一瞬見惚れた。

 

「? もしかして・・・変、ですか?」

 真顔のまま一瞬停止する二人に、まさか急ごしらえの恰好が変だったのかと不安になった麻衣。

 

「あ、いや・・・」

「何も変な所はありませんぞなもし」

 少々慌てつつ否定する両名。

 

「???」

 麻衣は、ただ首を傾げるしかなかった。

 

 

  ◇    ◇    

 

 

 仁を先頭に、階段を下りる三人。

 降りた先には、仁の言う通り、かなり大型のジープが停めてあった。・・・それと、もう一つ。

 

「え・・・?」

 麻衣も生まれて初めて見る、赤色の、どこかで見たような外国風の車。

 隣では、仁の方が驚いていた。

 

「えふ・・・F40!? まさか・・・」

 言い終わるより前に、そのF40の運転席から、誰かが降りてきた。

 

 年齢は70ぐらいだろうか、オールバックの髪型と、蓄えられた見事な口髭は共に白色。その顔、そして掌には長い年月を歩んできた証の様に皺が刻まれており、それとは逆に、その体躯は木偶ノ坊に勝るとも劣らない巨漢であり、黒で統一された紳士服の上からも把握できる筋肉は、見た目の年齢からは考え付けない程に鍛えられているのが分かる。

 

「仁様。天津麻衣様。木偶ノ坊様。お待ちしておりました」

 物腰柔らかな老人の声のイメージをそのまま表したかのような声で、完璧なお辞儀をする老人。

 

「せ・・・ 瀬馬爺!? 何故ここに・・・」

 仁は、その老人を知っているようだ。

 

「・・・どちら様ですか?」

 麻衣は、仁の袖を引っ張り、説明を求める。

 

「あ、ああ・・・ この人は、瀬馬棲胆(せば すたん)。安倍家に長い間仕えてくれている執事さんだ」

 ・・・執事?

 執事が外車に乗って、筋骨隆々?

 

「ははは、仁様は相変わらず説明下手ですなぁ。

 しかし長い説明をしている時間もございません。簡潔に説明いたしますと・・・」

 

 瀬馬という人の説明によると、瀬馬さんは執事業だけではなく、逢魔として安倍の守護も兼ねていた人物で、仁にとっても祖父のような人なのだという。

 そして今回は、単身東京へ向かった仁に対し、黙って後ろから付いて来たのだという。

 

 

「気が付かなかった・・・」

 至極悔しそうに、頭に手をやる仁。

 

「ははは、まだまだ尾行術では負けませんよ」

「(・・・姫が言っていた。【独りではない】というのは、このことか・・・)」

 本当に祖父と孫のような、和やかな雰囲気になる二人。

 

「・・・・・・」

 祖父と呼べる存在がいない麻衣は、その光景に少し羨ましさを感じていた。

 

「それでですな、この瀬馬めがやって来た役目ですが・・・」

 コホン、と。咳払い。

 

「桔梗姫様から事情は伺っております。鬼麿様は私がお預かりしましょう。・・・よろしいですかな?」

 いきなり突拍子もない事を言い出す瀬馬爺。

 

「なっ・・・!?」

 木偶ノ坊は当然驚く。

 

「心配なさらずとも、この瀬馬。病気の看護士資格から介護士資格まで完備しております。食事、点滴、風呂からマッサージまで何でもござれ・・・」

「いや、そういう話では・・・」

 困惑する木偶ノ坊。

 

「まあ、つまりですな。安倍の方で鬼麿様を一時お預かりし、木偶ノ坊様には麻衣様、仁様と共に愛媛に赴いて欲しいのです。・・・まあ、代わりにこの瀬馬めが行っても良いのですが、いくら何でも年頃のお嬢様を知らぬ二人の男に挟ませる訳には行かぬでしょう?

 ご心配ならずとも、カーマ・・・でしたか? 率いる新淫魔勢力には、実質鬼麿様を利用するメリットも考えもありませぬでしょう。」

 饒舌な瀬馬爺の言葉は、実際現実的であり、理に叶っている。

 

「ム、ムムム・・・」

 これには、木偶ノ坊も反対する理由が無い。

 しかし、それでも鬼麿様を他人の手に渡すのは、並大抵の決断で出来ることではないのだ。

 

「・・・・・・」

 麻衣は敢えて、何も言わない。

 正直な所では勿論付いてきて欲しい。しかし、それはあくまで木偶ノ坊さんが決めること。お願いなんて・・・出来ない。

 

「むむ、むむむむ・・・!!!」

 木偶ノ坊は唸った。

 唸って、呻いて、首を曲げる。

 

 そんな最後の葛藤が、何分続いただろうか。

 

 

「・・・瀬馬殿」

 動きを止めた木偶ノ坊は、気力が入りすぎて充血した目で、瀬馬を至近距離で見つめる。

 瀬馬は瀬馬で、そんな子供なら失神しそうな状況下で笑顔を一ミリも崩していない。

 

「鬼麿様の事・・・ よろしくお頼み申しますぞなもし」

 寝間着と毛布に包まれた鬼麿を、瀬馬に手渡した。

 

「木偶ノ坊さん・・・」

 嬉しさをそのまま表情に現す麻衣。

 

「・・・・・・(ニッ)」

 それに気付いた木偶ノ坊は、照れくさそうなはにかんだ顔をする。

 正直とても変な顔になっていたが、麻衣にはたまらなく嬉しかった。

 

「では、責任を持ってお預かりします」

 とても慣れた手つきで、優しく鬼麿を抱き抱える瀬馬。

 頭と腰にそれぞれ手をやり、強くも無く弱くも無く、ちょうどいいぐらいの力の入れ方の抱きかかえぶりには、一切の無駄が無い。

 

「・・・安全運転でお願いしますぞ」

 車と瀬馬を交互に見やる瞳は、不安で一杯だった。

 

「お任せを、こう見えても安全運転には自信がございます。運転免許は大型自動二輪から戦闘爆撃機に至るまで・・・」

「瀬馬爺」

 仁が瀬馬の言葉を切る。

 

「おっと、これはこれは・・・ いけませんな、年寄りになると話が長く・・・。

 鬼麿様はお任せを。 ・・・ああ、忘れるところでした。仁様」

「??」

 急に呼ばれ、?な顔をする仁。

 

「これは新幹線のチケット、JR線その他、愛媛の宿までの道順の簡易表と切符でございます。どうぞ」

 そう言って、持ち運びと取り出しに便利な、透明ビニルの簡易手持ちサイズのバッグが手渡される。

 

「・・・・・・相変わらず・・・すごいな、瀬馬爺」

 その言い口は、感嘆と言うより呆然に近い。

「なんのなんの。ご用命さえあればモロッコ行きであろうとリオデジャネイロ行きであろうと。・・・おっと、またですな。ははは。 ・・・では、事が終わった後にまたお会いしましょう」

 

  言うが早いか、瀬馬はテキパキと、鬼麿をチャイルドシートに固定し、自分も運転席に乗り込むと、狭い道路の中巧みな動きでUターンをこなし、木偶ノ坊の注文通りのゆっくりな安全運転で、角の向こうに消えていった。

 

「・・・すごい人というか、なんていうか・・・」

「・・・まあ、何が言いたいかは俺も良く分かるよ」

 仁もまた、ジープのロックをスイッチで開け、運転席に乗り込んだ。

 麻衣は助手席に、木偶ノ坊は六尺棒を仁の指示通り上に括りつけ、後部座席を占領した。

 

「・・・やっぱり木偶ノ坊殿はでかいな。後方確認が出来ない」

 バックミラーには、ジープの中だというのに身を屈めた木偶ノ坊の顔のみが映っている。

 

「・・・相すまぬ」

 特に反論せず、短い言葉で返事をする木偶ノ坊。

 麻衣はもう既にシートベルトを着けている。

 

「こっちは、安全運転よりもスピードを重視するつもりだが・・・どうだ?」

 二人を交互に見て質問をする仁。

 

 

「・・・お願いします」

 一秒でも早く向かいたいのは、麻衣も一緒だった。

 

「了解」

 一気にギアを引き、アクセルを思い切り踏み込む。

 ジープは大きな咆哮を上げ、道路交通法を無視したスピードを出す。

 

「ぬおおおおおおおっっっ!?」

 シートベルトが嵌まらない後部座席の木偶ノ坊は、その振動や慣性の法則をまともに受ける。

 

「だだだだ、大丈夫ですか!? さすがに・・・」

 シートベルトのお陰であまり衝撃を受けない麻衣も、ここまでとんでもないスピードを出されると不安になる。

 

「問題ない」

 座席の下から何かを取り出したかと思うと、窓を開け、車の天上に貼り付けた。

 

(ファン ファン ファン ファン ファン ファン!!)

 

 どこかで聞いたような音と、微妙な赤色の光が車の天上から伺える。

「あの・・・これって」

「覆面パトカーの貼り付け型ランプだ」

「いや・・・そうじゃなくて」

「心配はしなくていい。安倍は警察と連係をちゃんと取っている。・・・ただ、一々その場を警備している警官たちに一々説明するのは時間が惜しい」

 

「・・・はあ」

 

新幹線まで急いだ。

 

 

 

  ◇    ◇ 

 

 

 

   一方。カーマの寝所

 

 

「んぶっ・・・ くちゅ・・・ はむ・・・」

                                                                      

 寝具の淵に、椅子と同じ様に座るカーマ。

 その両足の間に、悪衣はいた。

 

「んぷ・・・ ふっ・・・ んんっ・・・」

 悪衣は、己の大きく豊かな両胸でカーマの肉棒を包み込み、両手で様々な方向へ力を加え、刺激を与えた。

そして両胸の谷間から覗く先端に、しきりに可愛く小さな口でキスを繰り返し、大きな咥える。

 

どこまでもいやらしい行為でありながら、悪衣の奉仕は、淫艶であり、美しかった。

 

 胸淫・・・即ち、簡単に言うと【パイズリ】である。

 柔らかな胸は、マシュマロのようなふわとした肉の感触で、亜衣の手でぐにぐにと形を歪める。カーマの腹筋は、悪衣の乳首の先の感触を感じ、それが少々こそばゆい。

 

「んっ、んっ、ちゅ・・・ んくっ・・・」

 そうする内、カーマの肉棒の微妙な変化を感じ取り、悪衣はペースを速める。

 

「・・・・・・っ」

 カーマの表情が微小に変化するのと、悪衣の口の中で肉棒が一瞬の膨張を見せたのは同時だった。

 

「ん、んんっ・・・!」

 悪衣の口の中で、カーマの白濁液が爆ぜる。

 それは、タオシーのモノよりもずっと量が多く、男性的な匂いを放つものだった。

 

「・・・ん、く・・・んっ・・・」

 悪衣は、さすがに一瞬眉を寄せるものの、咥え込んだ口を離さぬまま、喉の溜飲を数回繰り返す。

 そして、鈴口から尿道に残る液を吸い、全体を丁寧に舐め取った。

 

「偉いな。きちんと最後まで飲めるようになったか」

 多少芝居がかった口調で、悪衣の頭を撫でるカーマ。

 

「んふっ・・・」

 悪衣もまた、それを素直に受け入れ、猫の様に甘えてカーマに擦り寄る。

カーマの胸に、悪衣が凭れ掛かる形だ。

 

「淫魔になってみて、精液の味はどうだ?」

「けっこう不思議な感覚。霊力や妖力が味覚に感じられるのかしら。

 ・・・カーマの、すごく濃くて・・・」

  人間の感覚からすれば、とんでもなく卑猥な会話であろう。

 

「タオシーと比べては?」

「・・・知ってたの!?」

 悪衣は、軽く驚く。

 

「伴侶の行動ぐらい把握していなければな」

 まったくの自然体で、自信たっぷりにそう答える。

 

「・・・でも意外。あんなにずっと近くにいたのに、手を出してないなんて」

「気になるか?」

「どうして?」

 

「例えば、亜衣はどのような陵辱を受けようと、そう易々とは折れない強い精神を持っている。一方の麻衣は、姉と比べて快楽に負けやすい弱い心もある」

 

「・・・そうね」

 悪衣は、【亜衣】の名を出されると少々ムッとした表情になる。

 

「だが・・・タオシーは、【男】が強引に犯せば心を閉ざすタイプだ。そんな一度限りの愉悦の為に壊してしまうには、奴はとても優秀な人材だからな。あまりに勿体無いというものだ」

「・・・私がタオシーを襲うのも、予想通り?」

 

「反転の術の計画をタオシーに聞いた時から、そういう可能性もあるだろうとは思ったがな・・・ 程々なら、タオシーは筆卸ろしの相手には調度いいだろう」

「ふふ、ひどい人。さすが邪神カーマスートラって所かしら」

 何気なく、そんな台詞を言う悪衣に対し

 

「・・・邪神というものは、どうやって生まれると思う?」

 カーマは、意外な質問をしだした。

 

「えっ・・・」

 悪衣は、少し眉を寄せ考えた後

 

「・・・自然発生、とか?」

「フフフ・・・」

 笑うカーマ。

 

「元々、生まれついての邪神などいない」

「えっ・・・?」

 

「どの神を崇め奉り、どの神を邪神と定めるか、それを決めてきたのは古来から人間だ。宗教戦争の勝者と敗者・・・ かつてのインド神話の神々・・・【ヴィシュヌ】と呼ばれる神は取り込まれ【毘沙門天】になり、【水を護る者】ラクシャーサは、その神に歯向かった事で人を食う鬼【羅刹】と変えられた。

 

そしてカーマスートラも、元は【性】を司どる土着の神だった。発祥の地では今も同名の性に対する知識の経典になっているぐらいのな。

 だが、それを邪神へと追いやったのは、異国から渡ってきた新宗教。それは、【性行為】を穢れとし、そしてカーマスートラはその【神】としての存在自体すら、一般の人間の知識から消され、一部の存在しか知りえない存在へと成り下がった。

 

それでもその地に存在する神としての誇りを持ち、最後まで余所者の神と戦ったカーマスートラは、その結果魂を二つに引き裂かれ、深い闇へと封印された。それが・・・」

 

「カーマと、スートラ・・・?」

 

「ご名答。かつての神々の信仰が薄くなり、【科学】という名の神が信仰され始めた現代、やっと時平の助力を得て、不完全な形で蘇ったというわけだ。

今は随分と善人面をしているが、現在の神社、仏閣が護り崇拝している神々は、俺たちと元は同じ穴の狢。・・・要するに、戦いに勝ったか負けたか、それだけの違いだ。

 宇宙創生の神が浮気者であったことは有名だが、日本が崇める神も、元々は世界で始めてサイコロ賭博をした男だということは知っていたか?」

 

「・・・知らなかった」

「そうだろうな」

 

「ううん。それもだけど・・・ あなたの存在にそういう意味があったなんて、私・・・知らなかった。

 ただ、淫魔は人に害を成す敵だって、そうとだけしか・・・」

 そう、淫魔をただこの世に害を成す【悪】、【敵】として見ていた亜衣。

 しかし、それがどんなものであっても、【存在】する限り、何かしらの理由がある・・・

 

 それが、淫魔であっても例外ではないことを、【天津亜衣】は考えたこともなく、勝手に汚らわしいものとしてだけ認識していた。

 

 だが、【悪衣】という存在である今、そして、カーマから聞かされた事実を聞いて、悪衣はこれまでの自分の軽率な部分を知った。

 

「別に間違ってはいない。淫魔の概念は、人間にとっては只の堕落でしかないのも事実だ。・・・フフ、基本的に違う存在なのだから、当然といえば当然だろうな」

「・・・でも、今は同じ存在ね」

「嬉しい限りだ」

 

 

「・・・昔のカーマ・・・ カーマスートラはどんな神様だったの?」

 ふと、悪衣はそんな疑問をぶつける。

 

「ふむ・・・ 封印の解けた今だからこそ記憶が少しずつ蘇っているのだが、カーマスートラも、封じ込まれる前はもう少し純粋だったらしい。・・・まあ、俺は今の俺が気に入っているがな」

「・・・私も」

 二人は口付けを交わす。

 

「・・・?」

 ふと、お尻に当たる硬い感触に一瞬疑問を浮かべる悪衣。

 だが、その正体は誰にでもすぐに分かる。

 

「・・・もう」

「フフフ・・・」

 カーマは、悪衣の両腿の付け根を掴んだかと思うと、そのまま後姿の悪衣を抱き上げる。

 

「あっ・・・」

 まるで赤子がトイレでやらされるような、無防備な開脚状態。

 大きく持ち上げられたかと思うと、そそり立つカーマの屹立棒の真上に、悪衣の秘所が狙いを定められる。

 先端が亜衣の秘所にキスをし、そのまま、カーマの肉棒がゆっくりと降ろされる亜衣の膣に埋没していく。

 

(ズッ・・・ プ・・・)

 

「はっ・・・あ・・・ んんっ・・・!」

 いわゆる背面座位の抱き上げ形。

 通常は結合が浅い体位だが、それでも咥えるモノがカーマの長く逞しい肉棒であるが故に、実際に悪衣の中を大きく埋め、悪衣に充分な快感を与えている。

 

 そのまま、カーマは前後運動を開始する。

 

(チュクッ、ヂュッ・・・ ズチュッ、ズッ、ズッ)

 

「ふあっ、あっ、あっ、あっ・・・」

 悪衣は、カーマに背中を預けたまま、目を閉じ、全身でその快感を受け止めている。

 大きく揺れ動く豊かな胸。微妙にくねる体。紅潮する頬。開く口から漏れる吐息は艶ましく、まるで桃色に視界に映るようだ。

 体が揺れる度に、艶美しく輝く長髪の間から覗く、美しい悪衣の白桃色のうなじ。

 密着した背後から見える悪衣の姿は全てが美しく、興奮を誘う。

 

「・・・・・・(ニヤ)」

 

 カーマは、亜衣の首筋にキスをし、息を吹きかけた。

「ひゃうっ───!?」

 不意の感触に、悪衣はビクッと震えた。

 

「フフ・・・ 本当に教え甲斐がある。これだけいい反応をされてはな」

「んっ・・・ カーマが、そんな所に息なんか、かける、からっ・・・」

 小刻みに震えながら、かわいい反論をする悪衣。

 

「フフッ、俺のせいか? だが、その一つ一つに感じてくれているのは・・・」

 腿の付け根を支えていた両手を離し、亜衣の腰を腿の上に固定すると、首筋を舌で愛撫し、右手で胸を弄くり、左手で、カーマのモノと結合している場所の真上・・・クリトリスを抓む。

 

「ひゃ、あああっ!!?

 百戦錬磨のカーマの、いきなりの4点攻撃に、悪衣は背を仰け反らした。

 

「これは、悪衣の感度が良すぎるだけだ」

 そう言って、亜衣の首筋を甘噛みする。

 

「あっ! あっ!! こ、こんなのぉ、ずるいぃっ!! こ、こんな・・・ ダメェッッ!!」

 邪淫王の天才的な愛撫、更に4点攻め、しかも相手は自分の体を知り尽くしているとなれば、どんな女性であってもたまったものではない。

 カーマの攻めはそれぞれ独立し、巧みにそれぞれの場所の弱点を把握した上で的確に攻め立ててくる。特に、クリトリスに至っては、包皮を主に擦り、時折不確定なリズムで不意打ちの様に本体の豆を直接刺激する事で、より快感を引き出している。

 

「は・・・あっ、ああっ、やぁ・・・ん!!」

 

「あっ! ああっ!! な、何コレぇっ!? し、ひんじゃ・・・」

 悪衣は、これまでに経験の無い快楽に狼狽している。

 女性の絶頂には段階があり、それは三段以上存在しているといわれている。普段の女性の絶頂は一番序段の段階で、一番上の段階に行くことは滅多に無い。

 

 今回カーマは、悪衣の一番上のオーガズムを引き出そうとしていた。

 

「んあっ!! んんっ!! ふ・・・あ、あああっ!!!

 やぁ・・・っ!! ひんじゃ・・・っっ!!!」

 もはや呂律も回らない。

 カーマの攻めはより激しくなり、快楽神経がオーバーヒートを起こしそうになる。それこそ、本当に死んでしまいそうになるほどに。

 

「はっ、ああっ!! こわ、いぃっ・・!! こわい、よ、カーマ、ぁっ!!!」

 行為中に初めて、カーマの名を口にする悪衣。

 

「怖がらず、イッてしまえ」

 カーマの攻めは、王手を詰む。

 

「ふあっ!? はっ、あ、あ────────────っっ!!!!!!」

 

 これまでに感じたことの無い、頭の中で花火が弾ける様な爆発的な絶頂。

 体がこれまでになく大きく、ビクビクと痙攣し、カーマの上で体を仰け反らしたかと思うと、そのまま力がすべて抜け、ぐったりとカーマの胸板に体を預け切る形になる。

 

 

「ハァ────・・・  ハァ────・・・  ハァ───・・・  ハ──・・・」

 

 まるで魂が飛んで行ったかのように、カーマの肉棒を咥え込んだまま、目は虚ろ、息は絶え絶えで、体中に汗をかき、口の端から涎も垂れている。

 絶頂の余韻がよほどすごいのか、時折体がビクン、ビクンと震えていた。

 

 

「フフ・・・ よほどよかったらしいな」

 悪衣から返事は無い。まだ虚ろの状態から戻っていないようだ。

 

「・・・・・・・・・(ニヤ)」

 カーマはまた、何かを思いついたらしい。

 パチンと、いつかと同じ様に指を鳴らす。

 すると、部屋の隅にあった一枚の鏡が床を滑り、カーマと悪衣の目の前で止まった。

 

 そして

 

「悪衣、亜衣に替われ」

 いきなりそんな命令をする。

 

「え・・・ そんな、嫌・・・よ・・・」

 絶頂の余韻がまだ強い中、それでも本家の人格と交代する事に反対する。

 

5分程度でいい。お前だって、亜衣を苛めたいのだろう?」

「・・・・・・」

 悪衣は、そっぽを向いて黙っている。

 

「断るのなら、今日はここまでだ」

 

「・・・・・・わ、かった・・・」

 少々の葛藤の後、悪衣は渋々目を閉じる。

 

 ドクン、と、悪衣の中で魂が振動するような感触を、接合部越しに感じとるカーマ。

 

「(なるほど・・・こうして替われるのか。 ・・・面白い)」

 暴れだした時の為、亜衣の両手だけを側に置いていた縄で縛り、手首に小型の麻袋を被せ、固定した。

 

 

「見ろ、亜衣」

 そうして、目を閉じたままの亜衣に、語りかける。

 

 

「・・・・・・え・・・?」

 ようやく意識が戻ってきたらしい。

 ゆっくりと目が開く、亜衣。

その瞬間から、目の前にいるのが誠に【亜衣】であると、カーマは感じとれた。

 

 亜衣は、定まってきた焦点で、数歩前にある鏡を見つめ・・・

 

「・・・・・・っ!!?」

 亜衣は、沈黙したまま顔を紅潮させ、驚愕する。

 目の前に映っているのは、カーマと繋がっている自分の姿。

 

鏡は、二人の結合部を明確に映し出していた。

カーマの太く逞しい肉棒を、自分の秘所は完全に咥え込んでおり、そこから溢れ出している愛液は、それを喜んで受け入れている事を如実に現していた。体が少しでも動くと同時に、そこからは粘着的な水音が聞こえる。

 

「あ・・・あ・・・」

 亜衣はわなわなと震えている。

 自分の衝撃的な姿と、それと共にはっきりと脳に浮かんでくる先程までの【悪衣】の記憶。

 驚愕、混乱、絶望感。それと共に、自分の中で確実に、背徳的な興奮が自分の顔を赤くしている事さえ、鏡は一切嘘をついてくれない。

 

 

「どうだ? 刺激的な光景だろう」

 そんな亜衣の心をより苛める様に、カーマは語る。

 

「最初は舌を入れただけで引き千切られそうだったというのに、今はこんなに・・・ 俺のモノを強く咥え込んで離さない。・・・お前のここは、俺のモノを完全に覚えてしまったらしいな」

 より高慢な態度で、亜衣を言葉で攻める。

 

「あ・・・う・・・あ・・・ イヤあぁっ!! 離せ!! はなせ───────っっ!!!!」

 

 亜衣は半狂乱かと思うほどの激しさで、カーマの上で暴れる。

 しかし、腕を完全に封じられた状態では、足も空中を空振りするだけで、結局暴れるだけ、自分とカーマに快感を与えてしまうだけだった。

 

 しかも

 

「ははっ、またキツくなったぞ。入ってるところを見て興奮したか!?」

 実際、亜衣の締めはより強くなっていた。それが性的興奮のためか恐怖感による緊張のためのものかは誰にもわからない。

 

「う・・・ああっ!!?」

 カーマは再び前後運動を開始し、両胸を激しく責めだす。

 更に座った姿勢から尻を浮かせ、より激しく亜衣を突いた。

 

「うわぁあっ!! ああっ!!! ひ、ああっっ!!!!」

いくら抑えようとも抑えきれない快楽の波が、亜衣の理性を押し流そうとする。

 

「いやらしいな、お前は」

「んんっ!! やっ・・・!! そん、なっ・・・ちがっ・・・違うぅっっ!!!」

 必死に否定し、首を横に振る。

 それでも、自分の秘所からは、しきりにいやらしい水音が響き、それは次々と湧き出て止まらなくなっている。膣も自分の意志と反して、カーマのものを捕らえようとさえしている。それが、亜衣を打ちのめした。

 

「や、あぁっ・・・!! ころ、せ・・・っ!! もうっ、ころし、て・・・っっ!!!」

 こんなことは酷すぎる。いっそ、欠片でも戦士としていられる内に死んでしまいたい。

 

「断る。 お前は俺の伴侶だ」

 対してカーマは、実に短い言葉でその弱音を否定した。

 欠片でもどこかに希望がある限り、亜衣は自ら死は選ばない。それを知っているから。

 

 潰れそうなほどに乳首を弄くり、激しく肉棒を打ちつけ続ける。

 

「ああっ!! ああっ!! あ、あっ!!!」

 

「ここまで強く締め付けられては、俺も答えてやらねばなっ!! ・・・受け取れ!!!」

 その言葉と共に、カーマの肉棒が、亜衣の中で一瞬膨張する。

 

「っ!! イヤッ!! やだっ!!! もうイヤ────」

 

 

 

(ドビュ、ビュルビュルビュクッ!!! ドク、ドク・・・)

 

 

「うあ、あああああああ────────────!!!!!!」

 

 何度目の絶叫になるだろう。

 そして、何度目の中出しになるのか、

 もう・・・数える気すらならない。

 

「(あ・・・ 泳いで、る・・・ 私の中で・・・ カーマの、が・・・)」

 膣内を蹂躙する熱さが、亜衣の中でそんな感覚を覚えさせた。

 

 

 そしてまた、亜衣の意識は、識域下の牢獄の中へと、

引きずり込まれていった・・・

 

 

 

  ◇    ◇    

 

 

  一方、麻衣達一行。

 

ジープを駐車場に置き、新幹線、JR線、バス、更に山道を登るバスと乗り継いで、どんどん人里から離れていく。

空が夕闇に染まり始めた頃には、ようやくメモに書かれていた宿に辿り着いた。

 

「ここが・・・」

「宿ぞなもしか」

 旅館は一目見て、おそらく全木造であろうというぐらいの歴史を感じさせる。

 天津神社ほどではないが、100年続いていると言われれば信じてしまいそうなほど、旅館には雰囲気がある。決して古臭いだのボロいだのという事ではなく、旅館全体に風格と言うか、歴史を感じる荘厳な、それでいて柔和な雰囲気を感じさせるのだ。

 

 パッと見た所では、特に大きいということも無く、小さいということもない、何の変哲も無い老舗旅館。

 しかし、周りの自然の多い景色と、日本古風の雰囲気は見事に融合しており、すべての人を分け隔てなく向かい入れてくれそうな優しさが確かにある。

 

「瀬馬爺のメモによると、ここで間違いない」

「良さそうな所ですね」

「・・・しかし、駅からバスで軽く3時間とは・・・」

 木偶ノ坊の愚痴は尤もだ。

 

「仕方が無いさ。例の場所自体がこの地方の山奥なんだから、むしろこんな所で旅館をやってくれている事に感謝しないと」

「・・・ふむ。確かに」

「ええと、玄関は・・・ あ」

 

 麻衣がふと入り口を見ると、着物を着た長髪の女性が立っているのを見つける。

 その女性は、麻衣達を見つけると、上品な走り方でやってきた。

 

「まあまあ、どうもおいでやす〜」

 下駄のカラコロという小気味良い音を響かせて、着物の女性はやってきた。

 

「この旅館“山神”(さんじん)の若女将やらせてもろてます。神藤静瑠(しんどう しずる)言います。よろしゅう」

 静瑠と名乗る女性は、ペコリと挨拶をする。

見た目からして20代前半。スラリと伸びた長身と、着物で隠しきれない大きな胸。

腰の位置まで伸びた茶がかった長髪は手入れが行き届いており、京美人を具現化したかのような美しく整った顔と非常に良く合っている。

 

 

「いやぁ〜、思ぅてたより早ぅ来られましたなぁ。こんな辺鄙な所までお疲れ様どす。

ささ、食事も温泉も準備出来てますさかい。まずはゆっくりお休みなられはって下さいな」

 

見た目の上品そうな印象とは打って変わって、静瑠は実にフレンドリーで多弁だった。

 

「あの〜・・・ 女将さん・・・京都の人なんですか?」

 つい聞いてしまう麻衣。

 

「いやぁー、やっぱりつっこまれてしまいますなぁ。ウチ、生まれも育ちも京都やさかい、中々言葉抜けませんよって。

でも、お客様の中にはウチの京都弁がええってよく来てくださる方も多いんどすえ?」

「はあ・・・」

 

「静瑠さんは、元々安倍所縁の人なんだ」

 急に語り出した仁。

「えっ・・・ そうなんですか?」

「そういう事は最初に説明して欲しいぞなもし・・・」

「え、ああ・・・ 言ってなかったか?」

 表情からして、本気で言ったつもりだったらしい。

 

「ええまあ、安倍でも逢魔でもないんどすけど、そのサポート役みたいな一族ですねん。ウチらは大した霊力も、逢魔の隊長はんみたく体力もないよってに、こうやって封印の地近くの見張りと守護やとか、地味ではおますけど、重要な役割を任うさせてもらっとるんどす」

「そうなん、ですか・・・」

 静瑠の、人を引き寄せそうな笑顔と、明るい口調。そして全身から漂うお姉さま的なオーラに、麻衣はカッコよさを覚えた。

 

「ほらほら、こんな所にいつまでも立っとらんで、早よお入りやす☆」

「わっ、ちょっ・・・」

「ぬぉっ!? 女将殿、力が強いですなっ・・・!」

 静瑠女将に半ば強引に押される形で、木偶ノ坊と麻衣は旅館の敷居を潜り、仁はそれに後ろから付いていく。

 

 

  ◇    ◇  

 

 

 そこからは、それぞれの部屋に通された後、三人で宴会場の一つに集まり、旅館の瞬の料理を食べながら、明日の方針を打ち立てる事になった。

 

3種の神器が封印されているとされる場所は、ここから更に山を登った場所にある。

 とりあえず今日の所は体を休めて、明日・・・朝飯を食べたらすぐにでも出発しようと思う」

 

 と、仁が最初に語り

 

「封印の場所までの道案内は、ウチがさせてもらいます。

 はっきり言うて人の登る所やあらしまへんから、皆さんようさん食べて、ゆっくり温泉入って、たっぷり寝はって明日に備えて下さい」

 

 少しだけ離れたところに座る静瑠は、完璧な正座で、笑顔を絶やさない。

 

「静瑠さん、が・・・?」

 意外、という感情がそのまま口をついて出る麻衣。

 

「心配はあらしまへんよ。ウチやかて退魔のはしくれどすから。体も鍛えてます」

 そう言って片袖を捲り、力瘤を見せようとするが、美しく細い手を披露するだけで、瘤の欠片も見当たらなかった。

 

 

「「「(大丈夫か・・・?)」」」

 食事をしている3人とも、不安を隠しきれなかったという。

 

 

 

 

  ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 ・・・予想外に長くなっちゃった上に変な所でカットです。

 

 新キャラが一気に三人。 これは自分でもビックリ。

 ハハハハ、出しすぎだよ、もう。 何がやりたいんだ僕は  OTL

 あと、静瑠の京都弁には自信が無いので、本気で考証されるのは勘弁してください(汗

 

 次回こそ【激戦】、そして出来る限りエロな内容にしたいです。

 と言いつつ断言しないのは、【参】のコメントで「次回、【別離】!!」とか言っといてそれが【五】に伸びちゃったからです。ギャフン。

 



BACK       TOP       NEXT