それから、一時間ほど後。

 

 

(ヌッチュ、ヌッチュ、ヌッチュ、ヌッチュ!!!)

 

「はぁっ、あんっ、あんっ、あっ、あっ!!!」

 儀式という用途が終わり、静寂に支配された部屋の中で、一人の女の嬌声と、肉と肉がぶつかり合う水音が響き渡っている。

 

(チュック、チュっク、チュック、クチュッ!!!)

 

「ああぅっ!! はあっ!! いいっ!! カーマの・・・ 太くて・・・っ!! 奥までぇぇっ!!!」

 かつての面影を失った淫魔の女は、自ら男根を求め、淫らな言葉を口にし、まるで伴侶のような呼び方で、カーマの名を出した。

 

「フフ・・・ お前の膣(なか)も、俺のモノにからみついて、締め付けて離さん。

 素晴らしいぞ悪衣。数々の女を抱いたが・・・お前が一番の名器だ。・・・最初にお前を貫いた時から思っていたが、俺たちの相性は最高のようだっ!!」

 より激しく突き上げるカーマ。

 

「はあぁんっ!!? そんな、激し・・・ふあぁあっ!!!!」

 より高さを増す嬌声。それはカーマの突き上げのたび発せられる。

 

ふっ・・・ あの、時と、同じ・・・強引、でっ・・・」

 悪衣は、カーマに初めて貫かれたあの時の事を言っていた。

 当然ながら、まるで別人格の様に見える悪衣も、記憶は全くの共通なのだ。

 

「ふふ・・・ でも、知ってる、かしら・・・っ」

「何をだ?」

「あの、ときっ・・・ 私、嫌がってたけど・・・っ、あふっ・・・ 感じては、いたの、よっ・・・」

 さらりと語られる言葉。

 悪衣を亜衣として知っている人間がそこにいたら、耳を疑っただろう。

 よしんば本当にカーマの、初めての男根の挿入に対し、女として体が反応し背徳的な快楽を受けていたとしても、亜衣なら口が裂けてもそんな事は言わないし否定する。

 

 だが悪衣は、明らかに愉しみながらその台詞を言ってのけた。

 それは、悪衣の心が天津の巫女ではなく、淫魔のものである証としては充分すぎた。

 

「フフ・・・」

 そのギャップが、その淫艶なる魅力が、カーマの淫欲を最高潮に刺激する。

 

「あっ・・・!? すごっ・・・ 更に、硬く・・・っ!!! ああぁあっ!!!!」

 ビクンと一際大きく体を跳ねさせる悪衣。

「可愛い事を言うからだ。・・・お前が根を上げるまで、休む事無く責め続けてやろう」

「あんっ!! はうっ!!! 嬉し・・・」

 

 

 そこへ

 

(コン、コン、コン、)

 

「失礼します」

 遠慮をしながら木戸を開け、入ってくる一人の少年。タオシーである。

「・・・・・・」

 部屋に入るや否や、少年は驚き、軽くたじろいだ。

 

 部屋の中では

 カーマは仰向けの姿勢で、激しく腰を動かし突き立て。

 悪衣も、それに応えるように合わせて腰を動かしていた。

 その姿は獣の様でもありながら、官能的な絵画のようにも見える。

 

「ああんっ!! はあっ!! いいっ!! すご、いぃ・・・っ!! ふぅんっ!!!」

 少年の記憶の中では清純なイメージで固定されていた女性は、暴れ馬に乗っているかのように激しく、全身を大きく揺らし、二人の結合部分からは、何度も射精した後であろう、粘液の厭らしい音が絶えず響いていた。

 俗に言う、騎乗位である。

 

 大きく形の整った胸は不規則に上下に揺れ、よく見ると、全身には余す所無く白濁液が掛かっている。その姿はどこまでも妖艶で、ついさっきまで穢れを知らぬ処女だった女には到底見えない。

 

「(・・・なるほど、儀式が終わってから休み無く・・・ ずっと愛し合っていたわけですか・・・ 

カーマ様からすれば悲願が叶ったわけですから無理もないですが・・・ それにしても、反転の効果は凄まじい)」

カーマの配下でありながら、タオシーはこういう場面にはウブだった。

 

「タオシーか、愉しみを邪魔するな」

 タオシーの方向を見ず、腰の動きも止めないまま言い放つカーマ。

「は・・・ しかし、重要な話ですので、麻衣さんについて・・・」

 

「・・・麻衣?」

 それまでカーマとの性交にだけ没頭していた悪衣が、タオシーの方に初めて振り向く。

 

「・・・・・・!?」

 その事実にタオシーは驚いた

淫魔、退魔師両方において、歴史上の記録では淫魔に反転した人間は、精神まで淫魔として反転するため、それ以前の全てのものに興味をなくし、いずれは忘れる。

 だが、麻衣の名を聞いた瞬間の悪衣の顔は、紛れも無く妹を想う姉の亜衣の顔だった。

 

「(・・・驚いた。さすがは天津の・・・)」

 驚くと同時に、タオシーは一抹の不安を抱いた。

 天津亜衣という存在を、いくら反転させたとはいえ、それだけで手放しで安心しては危ういかもしれない。

 後顧の憂いは断っておくのが、カーマ様に大恩ある身として、そして軍師の任を仰せつかった身としての責務である。

 

「(・・・カーマ様のご機嫌を損ねない様に、二、三手を打っておかなくては・・・)」

 

 

「それで、麻衣は?」

 カーマの男根を膣内に咥え込んだまま、強い視線でタオシーを見つめる悪衣。

「は、その・・・亜衣様とお伸びするべきでしょうか」

「悪衣、と呼んでほしいそうだ」

 代わりに答えるカーマ。

「悪衣様・・・ですか、わかりました」

「・・・麻衣は? どうなったの?」

 苛ついた口調で再度問いかけられる。

 

「え、ええ・・・ 約束どおり、無事に帰しました。驚いたことに、木偶ノ坊さんまで生きていまして、一緒に・・・」

 それを聞いて、悪衣は安堵のため息をついた。

 

「んっ・・・」

 さすがに続ける気はなくなったのか、カーマの肉棒を引き抜き、立ち上がる。

 膣内からは、大量に注ぎ込まれたであろう精液がとろりと流れ落ちている。

 タオシーはすぐさま、悪衣にタオルを手渡した。

 

「・・・・・・それで?」

 行為を中断されたカーマは機嫌が少し悪い。       

 

「その後、姉妹の失踪に気付いた時平、淫魔大王、スートラは、僕が用意したカーマ様の影と共に麻衣さんを追いました。今頃は・・・」

 そこで、タオシーの手に持っていた人型の紙が揺れる。

 

「どうしました? ・・・はい、・・・そうですか。ご苦労様です」

 タオシーは、揺れる紙に向かって話し始めた。

 

「・・・何? あれ・・・」

 カーマに問う悪衣。

「式神というやつだろう」

 不機嫌な顔のまま答えるカーマ。

 

「・・・カーマ様。式神からの連絡です。その・・・信じられないことですが・・・淫魔大王。時平。そしてスートラ。その全員が、麻衣さんと木偶ノ坊さんにやられました。全滅です」

 

「麻衣が・・・?」

 驚く亜衣に対し

 

「・・・ほう、やはりな」

 カーマは落ち着き払っている。

 

「わかるの?」

 不思議そうに尋ねる悪衣。

 それに対して

「カーマ様とスートラは、邪神カーマスートラの化身です。片方の肉体が死ねば、魂はその片方に戻ります」

 タオシーが代わりに答えた。

「へえ・・・」

 

「本来の力が戻るまでには少し時間差がありそうだが・・・」

「でしょうね、お二方が半身に別れて長いですから」

 

「詳しいことを教えて」

 タオシーに渡されたタオルで、体についた精液を拭きながら、タオシーに聞く悪衣。

 

「何らかの理由で、麻衣さんに巫女の力が戻り、更に木偶ノ坊さんの決死の行動、そして仕掛けた聖竹の罠・・・ それにより、スートラとカーマ様の影が死に、淫魔大王は人間の姿、に戻り、時平は次元の狭間に飲み込まれました」

 

「・・・・・・」

 悪衣は顎に手を当てて俯き、何事か考える仕草をする。自分なりに事を推測しているのだろう。

 

「・・・ふん、好都合ではあるな」

「スートラは妹じゃないの? なんだか冷たいわね」

「(・・・まただ、こと麻衣さんの名や妹となると目の色が変わる・・・)」

 表面では平静を装いつつも、タオシーは不安を大きくする。

 

「タオシーの言ったとおり、俺達に単体の死は意味がない。スートラの肉体が死ねば俺がカーマスートラになり、俺が死ねば逆だっただけの事だ。それに・・・」

 いきなり悪衣を、背中から抱き寄せるカーマ。

「女はお前だけいればいい」

 悪衣の大きな、弾力のある胸を揉みしだき、乳首を強く抓む。

 

「あんっ・・・ そんな・・・ いきなり・・・」

 それまでの亜衣であったら全力で抵抗していたであろう行為。

 しかし、悪衣は、目を閉じ、顔を紅潮させ、その悦楽の行為に身を任せている。

「フフ・・・ こんなに乳首を硬くして、すっかり淫らになったな」

「んぁ・・・ それは・・・ 生理・・・はんのう・・・で・・・」

 

 それを見ていたタオシーは、その妖艶な美しさに一時目を奪われた。

「(考えすぎだといいんですけどね・・・)」

 そして

 

「あ〜・・・ ゴホン。問題は、淫魔大王と時平が消えたことによる、鬼獣淫界の地上界からの剥離です。これは避けようがありません」

 そう、地上における鬼獣淫界の侵食は、淫魔大王と時平の作用である。

 それが両方とも欠ければ、侵食が剥離され、鬼獣淫界は元に戻るのは自明の理。

「かまわん、お前に任せる」

 悪衣への愛撫を続けながら、ぶしつけに答えるカーマ。

 

「はっ・・・では、この社のみを結界で隔離し、鬼獣淫界に移動させます。

 それと、もう一つ・・・

 麻衣さんと木偶ノ坊さんが、こちらに向かってきています」

 

「!!」

 悪衣はまた、麻衣の名に反応する。

 

「・・・今からおよそ15分ほどでやって来ます。

おそらく・・・いや、確実に悪衣様を取り戻しに来たのだと思います。勿論、結界が完成するまで全力を以って撃退する所存・・・」

 

「麻衣には手を出さないで」

 強い語気でタオシーの言葉を遮る悪衣。

 カーマの愛撫の手から離れ、タオシーの目の前にまで歩み寄る。

 

「は・・・ しかし、相手が襲ってくるのでは・・・」

「麻衣の相手は私がするから。それと・・・木偶ノ坊さんも殺したら駄目よ」

「そ、それはちょっと・・・」

 それではこちら側がやられ放題だ。いくらなんでも認めるわけには・・・

 

「フ・・・ いいではないか」

 カーマが鶴の一声を放つ。

「要は、結界が発動するまで時間を稼げばいいわけでしょ? 簡単よ」

「俺も出るから心配は要るまい」

 微妙に息の合った、二人の言葉。

 

「・・・御意、です」

 こうなるとカーマ様は言うことを聞かない。

 軍師としてはあまり良い判断ではないが、それ以前に自分はカーマ様の従者。

 

「全ては、カーマ様のお心のままに」

 ぺこりとお辞儀をすると、タオシーは部屋から出て行った。

 

 

 後に残るは、悪衣とカーマ。

「・・・・・・」

 悪衣もまた部屋から出ようと歩き出す。

 だが、その手をカーマが掴んだ。

 

「まあ、そう急くな」

「・・・まさか、まだやるつもり? あと10分ぐらいしか・・・」

「なあに、一回程度の時間はある」

「そんな・・・あっ・・・」

 カーマはいきなり、悪衣の秘所に指を二本挿入する。

 

(クチュクチュ、クチュ、チュクッ)

 

「やっ・・・ あっ・・・! そ、こ・・・ ダメッ・・・」

 前後左右、回転。不規則な指の動きで、悪衣の秘所をこねくり回す。

 幾度にもわたる(まぐ)わりで、カーマは悪衣の弱点を全て理解していた。性感帯の位置と数。Gスポットの場所、どの部分がどう気持ちがいいのか。

 それをカーマは、一時間近くの交わりで完璧に理解した。今のカーマはおそらく・・・いや、確実に悪衣本人よりも亜衣の体を知っているだろう。

 ・・・ただ、一箇所を除いて。

 

「はっ・・・ や・・・っ くぅんっ・・・!!」

 体をくねらせ、カーマの指使いに反応する悪衣。このまま弄れば指だけで悪衣を果てさせるだろう。

 

(ヌチュプ・・・)

 

 しかし、カーマはあっさりと指を引き抜いた。

 カーマの指には、亜衣の愛液と己の精液が混ざったものがべとべとに絡みついている。

 

「あっん・・・ ・・・もう、終わりなのぉ・・・?」

 自分から時間がないと言っておきながら、雌のスイッチの入った悪衣は切ない目でカーマを見る。その顔は、カーマの被虐心をそそった。

 

「フフ・・・ 勿論、終わりじゃないとも」

 そう、攻略していない場所が一つだけある。

 言い終わる間もなく、べとべとになった指を・・・

 

(ズブッ!!)

 

「きゃっ・・・!!?」

 悪衣の尻の穴、いわゆるアナルに突き入れた。

 間髪を入れず、アナルに挿入した二本の指を激しくこねくり回す。

 

「あ、あぁっ!!? あぁあっ!!! お尻がぁ・・・ お尻の・・・穴が・・・めくれるぅ!!!  あうぅっっ!!!!」

 ホト魚に一度侵入されて間もない後ろの穴。カーマにとっては唯一攻略していない場所である。

 粘液をローション代わりにし、指で攻め立てると同時に、満遍なくアナルに塗りたくる。

「・・・充分か」

 ボソリと一言呟くと、指を勢いよく引き抜く。

 

「は・・・・・・」

異物感が消え、ため息を吐く悪衣。

しかし

 

(ズッ・・・プ!!!)

 

「あっ・・・く!!? か・・・は・・・っ!!!!」

 カーマの剛直が、後背位の形で悪衣の後穴を深く貫く。

 それは二本の指はおろか、ホト魚よりもずっと太く、そして深く悪衣の腸を抉った。

さすがに悪衣も、初めて体験する本格的なアナルファックに、一瞬呼吸困難になる。

 

「や・・・苦し・・・ 抜い・・・」

 それまでカーマのどのような愛撫、攻めをも受け入れていた悪衣も、本当に苦しそうに、息を吐きながら目に涙を溜め訴える。

 

 カーマがいきなり、悪衣の後ろを奪ったことに大した理由はない。ただ、妹に会うのなら、その前に、精神も肉体も、悪衣の全てを自分のものだと誇って見るのも面白いと思っただけのこと。

 

「フッ・・・ それがだんだんよくなる。新しい悦びを教えてやろう」

 激しく、早く、カーマは動き出した。

 

(パンッ! パンッ!! パン!! パン!!)

 

「あっ・・・ ぐっ、うぅっ!! はっあ────!!!」

 強引に開かされた穴。それは、とんでもなく太く硬い排泄物が、腸の穴を出たり入ったりするかのような強烈な感覚。カーマの腰と悪衣の桃尻が激しくぶつかり合い、何かの楽器のように、肉と肉のぶつかり合う音を生み出す。

 

 これで本当に悪衣の体には、カーマに犯されていない場所は全て無くなった。

 悪衣の口も、秘所も、後の穴に至るまで・・・

 

「俺のものだ・・・悪衣!!!」

 更に激しさを増す、カーマの攻め。

 

(パン!! パン!! パン!! パン!! パンッ!!!)

 

「はぁあっ!! あぁぅっ!!! ・・・は・・・」

 途中から、亜衣の反応がだんだんと変わりだした。

「は・・・うっ・・・ ん・・・っ! くふ・・・」

 苦痛を訴えていた呼吸は、それを淫らな吐息に変える。

 

「フフ・・・ハハハハ!!! もう感じ始めたか!!! 素晴らしい!!! やはり俺とお前の体、最高の相性のようだな!!!! ハハハハハハハハハ!!!!」

 狂ったように笑いながら、激しく己の欲望を悪衣に打ち付ける。

 

「はあぁぁんっ!!! やぁあっ・・・ 擦れて・・・ 擦れて気持ちいいのぉっ!!! お尻の、お尻の穴なのにぃっ!! ウンチする所なのにぃっ!!!」

 未知の快感に、悪衣の理性は吹っ飛んでいた。

 口の端からは涎が垂れ落ち、目は焦点が定まっていない。

 

 そして

 

 

 「あんっ!! はっ・・・あああああああああああ────────────!!!!!!!!!

 

(びゅるっ!! びゅるるっ!!! どくどくどくっ・・・)

 

 悪衣が達すると同時に、悪衣の腸内に、カーマの征服の証である精液が大量に注ぎ込まれる。

「やっ・・・あつ・・・ 熱いぃ・・・」

 それは、まるで煮えたぎる溶岩の如く、悪衣の中で暴れまわった。

 

「はっ・・・ん・・・」

 その場で崩れ落ちる悪衣。

 男根という栓が抜かれた穴からは、本来流れる筈の無い白濁液が、トロトロと漏れ流れていた・・・

 

 

 

  ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 カーマとラブラブ(?)な亜衣・・・いや、悪衣ですが。

 タオシーは色々余計なことを考えだしましたし、さてどうなることやら・・・(おい作者

 四は戦闘メインかと。

 

 次回、【別離】。

 



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