淫獣聖戦ZZ 第8章


 脅えた顔を隠しきれない麻衣を、邪鬼は追い立てるようにして前に進ませた。
 時平に嬲られた身体にはまだ力が入らず、足がよろめく。
「ほらほら、しっかり歩きやがれ!」
「ヒヒ、淫らな期待で足が震えているぜ!」
 邪鬼がそう言いながら、麻衣の股間を指でスッと撫でた。
「―――はうぅっ!」
 あられもない声と共に、麻衣がその場にしゃがみこむ。
 邪鬼にちょっと触られただけで悦楽の奔流が突き上げ、麻衣をどろどろに蕩けさせてしまっていた。
「このネバネバした蜜ときたら! 片割れが俺たちに可愛がられてるのを見て興奮してたのか? キキッ、なんて淫乱なヤツだ!」
 邪鬼の指にはドロリとした粘液が付着し、光を反射して濡れ輝いていた。
 見せつけるように指を口に含み、ヌチャヌチャと念入りに麻衣の愛液を味わう。
 麻衣は羞恥に頬を染め、懸命に乱れた呼吸を静めようとしていた。
「休んでないで、とっとと歩きな!」
 屈んで動けずにいる麻衣を鞭打つように、邪鬼が麻衣の丸いお尻を前足でピシャリと叩いた。
「くぅっ」
 麻衣は涙をこらえながら、手足に力をこめて、なんとか立ち上がる。
 抜けるように白い柔尻に、邪鬼の手形がくっきり赤く浮き出ていた。
「イヒヒヒッ、かわいい乳がプルプル揺れてやがる」
 冷やかす声に、麻衣は思わず両手で胸を隠した。
 邪鬼たちの視線が一糸纏わぬ裸身に注がれているのを感じ、麻衣は恥ずかしさにしゃがみこんでしまいたかった。
 だがすぐに邪鬼が胸を覆っている両手を引き下ろし、後ろから小突いて、歩くように促す。
 一歩足を踏み出せば、それに伴って開いた脚の付け根に視線が集中する気がする。
 胸をさらけ出したまま歩けば、乳房がプルンと揺れてしまうのは避けられない。
 麻衣はできるだけ歩幅を小さくしようと、そろりと足を進めた。
 顔をうつむかせ、恥じらいに唇をキュッと引き結んでいる。
 裸体を見られるどころか、時平に犯されて快楽に溺れる姿をさらした後であるのだが、それでも羞恥心を捨てきれない。
 否、喘ぎ乱れる姿を見られたからこそ、余計に恥ずかしいのだ。
 ひとたび意識してしまうと、視線が気になってしょうがなかった。
 邪鬼の淫らな眼に、触れられずに汚されていくようだ。
 額から足の裏までが恥ずかしさに火照り、紅く染まっているように思えた。
 クラクラと目眩がしてきて、背中にじっとりと汗が噴き出す。
 邪鬼たちの視線は、麻衣の大事な部分に露骨に注がれ、絡みついてくる。
 醜い小鬼たちは興奮しきって、眼はギラついた光を放ち、獣のように舌を出して、ハアハアと息を漏らしていた。
 今にも襲いかかられるのではないかという恐怖感が、麻衣の胸中に湧いてきていた。
 全身に蜘蛛のような格好の邪鬼どもがたかり、あの長い舌で舐めまわされる。
 抵抗しても押さえつけられ、亜衣がされたように執拗な陵辱を受ける自分……。
 麻衣は自らの想像におののき、同時にどこかしら期待してしまっていた。
 心の奥底に微かにある淫らな欲望が、首をもたげる。
 さらなる快感を身体が欲してしまっているのだ。
(わたし、おかしい……)
 麻衣は右手で左の肘上のあたりをギュッと握った。肩が震えている。
(だって、こんな……想像で……)
 本当に邪鬼たちに触れられているかのように、皮膚を粟立たせるザワザワした快感。
 熱に浮かされたように瞳が潤み、下腹部に甘い感覚が広がっていく。
 こらえようもなく麻衣の股間から熱い淫液があふれ、内腿をゆっくり伝い落ちる。
 鋭敏になっている耳が、邪鬼の息づかいを、よだれを啜る音を捉える。
 ―――見られてる。
 自分が恥ずかしい想像をして、興奮しているのを知られてしまっている。
 口の中がカラカラに乾き、指先まで意識が張りつめていた。
 羞恥と自己嫌悪が麻衣の心の中をグルグルとかき乱す。
 邪鬼たちの眼が麻衣のきれいな肌の上を這いまわり、まさぐっている。
 隅々まで鑑賞し、余さず堪能しているのだ。
 頭の中で白い裸身を存分に犯し、麻衣の悶える姿を愉しんでいるに違いない。
 麻衣の足が止まった。
 息苦しいほどの緊張で、もう一歩も動くことができなかった。
「キキキ、どうした?」
 麻衣の後ろについて、身を屈めて股間を覗き込んでいた邪鬼が声をかけた。
 麻衣は睫毛を伏せ、耳まで真っ赤にして、プルプルと震えている。
「俺たちに見られて感じちまってやがる。淫らな汁をたっぷり零れさせているぜ」
 邪鬼の卑猥な声が、麻衣を辱める。
 もじもじと合わせられた両脚の間を、愛液が足首まで濡らしていた。
 無意識に麻衣の両手が動き、股間を前と後ろから隠そうとする。
「ケケケケッ、今さら何のつもりだ?」
 動けない麻衣を、邪鬼が不意にドンッ、と突き飛ばした。
「きゃっ!?」
 硬直して突っ立っていた麻衣は、たまらずバランスを崩して手をついた。
 膝をしたたかに打ちつけ、痛みに顔をしかめる。
 だがそのおかげで、麻衣は呪縛を解かれたかのように我に返った。
 顔を上げると、目の前に亜衣の姿があった。
 いつの間にかすぐ近くまで来ていたのだ。
「おねぇちゃん……」
「麻衣……」
 姉妹は顔を見合わせて、言葉を詰まらせた。
 お互いの顔に沈痛な色がありありと浮かんで見える。
 恥辱と快楽にまみれ、鬼獣淫界の淫ら鬼どもに翻弄される姿を、双子の姉に、妹に見られてしまった事実が、複雑な感情を生じさせていた。
 ふたりの視線がどちらからともなく逸らされる。
 麻衣は俯き、自由を奪われ横たわったままの亜衣は横を向く。
 双子なだけに、お互いの胸の内は痛いほどわかっている。
 今はただただ耐える時なのだ。
「ホホホホホ、亜衣、麻衣よ、遠慮せずに話をしてはどうじゃ? これから仲良く淫らの贄となるのじゃ。せめてもの情け、姉妹でしばし語らうがよいぞ。ホーッホッホッ」
 時平が余裕を見せて近づき、ふたりを見下ろした。
 姉妹は時平を無視するようにして、そのままの姿勢でじっと動かない。
 いま口を開いたとしても、新たな嘲りのネタを与えるだけのこと。無闇に反発することは、かえって相手を歓ばせてしまう。
「どうやらすっかり観念いたようじゃな。それとも早く次の仕置きを受けたくて、時間を惜しんでおるのか? 心配せずとも、宴はまだ序の口…さらなる快楽が待ち受けておじゃる」
 無反応の姉妹に失望するでもなく、時平はあくまで上機嫌といった声色だ。
 時平の言葉に反応するように、邪鬼が亜衣と麻衣に手をかけた。
「や…っ」
 麻衣の肩がビクンと跳ねあがった。恐怖で顔がひきつっている。
 亜衣は悔しそうにしながらも、歯を食いしばって無言のままだ。
 2匹の邪鬼が、亜衣が閉じて折り曲げていた脚を、両側に押し開いた。
 麻衣についた邪鬼たちは、麻衣の腕をよじり上げるようにして姿勢を変えさせ、亜衣の姿が正面に見えるようにする。
 麻衣のすぐ目の前で、亜衣が無惨にも股を開き、秘裂をあらわにしている。
「うぅ……おねぇちゃん……」
 誇り高い姉のあまりな姿に、麻衣は涙声で呻いた。
 亜衣は顔を背け、目をつむっていた。
 ついさっきまで邪鬼たちの淫虐にさらされていた亜衣の身体は、まだ快楽の余韻から脱してはいない。
 いや、むしろ肉の欲望がたまらなく疼いている最中である。
 パッカリと開いた割れ目からは、今も次々と愛液が流れ出て、充血した媚肉を濡らしつづけている。
 邪鬼たちが全身に塗りたくった唾液はもう乾いていたが、亜衣の艶やかな玉肌には、吸われ、噛みつかれた無数の傷痕が、赤く残っていて痛々しい。
 麻衣は泣き出したくなるのを懸命に堪え、鼻を啜った。誰よりも辛いはずの姉が耐えているのに、自分が取り乱してはいられない。
「イーッヒッヒッヒッ、じっくり見てやりな! こんなに涎を垂らして待ち構えてやがる。すぐに俺様の角を姉妹そろってくわえさせてやるぜ!」
 亜衣の太腿をさすりながら、邪鬼が舌舐めずりをして笑った。
「実の姉のホトの味、たしかめさせてやるからしっかり味わいな!」
 後ろについていた邪鬼が、ぐいっと麻衣を押し出した。
 強引に押しやられた麻衣は、亜衣の乗せられた台の縁につまずき、よろけて台上に膝をつく。
 邪鬼が麻衣の背中にのしかかり、亜衣の股間に向かって倒れこむように前屈みにさせる。
 腕は背後でつかまれたままで、前傾姿勢で邪鬼に支えられている格好だ。
 肩のあたりで切りそろえられていた髪が、バサッと垂れて左右の視界を閉ざす。
 その髪が太腿に触れそうなほど、顔が亜衣に近づいていた。匂いまでわかってしまうような至近距離だ。
「ケケケケッ、こんなに近くでお姉ちゃんのホトを拝むのは初めてか? ええ!?」
 邪鬼が金属的な声をあげて、麻衣を揺さぶる。
 麻衣の髪が揺れ動いて敏感な部分をかすめると、微かに下腹部が震え、亜衣の口から息がこぼれた。
「ホッホッホッ、麻衣」
 時平が目を細め、麻衣たちを見下ろしながら口を開いた。
「見てのとおりじゃ。そなたの姉はもう我慢が出来ぬと言っておるぞよ。姉思いの妹としては、早く楽にしてやらねばならぬでおじゃろう?」
 時平の言っていることが呑み込めず、麻衣は無言のまま亜衣の秘部に釘付けになっている。
 なぜか目を逸らすことが出来ず、亜衣の陰花に見入ってしまっていた。
「それ、放してやるがよい!」
 扇をパシッと鳴らして、時平が邪鬼に命じた。
 邪鬼が即座に麻衣から手を離す。
「あっ」
 邪鬼によって支えられていた麻衣は、倒れこみながら咄嗟に両手をついた。
 四つん這いの格好で、指先には大きく開脚した亜衣の太腿がある。
 粘液に覆われた肉の花芯から、濃厚な女の匂いが立ち昇って、鼻腔を刺激した。
「憎き我らに同じ顔の片割れが陵辱される姿を見ているのは、忍びなかろう? 麿の情けじゃ。自ら愛する姉を慰めるがよい」
 時平が、さも親切そうな声で麻衣に語りかけた。
 無論その顔には邪悪な笑みが張り付き、言葉には姉妹を玩弄しようという意志がはっきりと表れている。
 麻衣はようやく時平の意図に思い当たり、慄然とした。
(それって、わたしが…おねぇちゃんのことを?)
 スゥッと麻衣の顔から血が引き、背中に嫌な汗が浮いてくる。
 時平の企みのおぞましさに、寒気を覚えた。
「な…なに考えてるのよ!」
 叫び声にハッと我に返ると、さっきまでどんな汚辱にも耐え抜こうと自分を押し殺していた亜衣が、顔を上げて唇をわなわなと震わせている。
 亜衣の顔からも血の気が引き、唇が紫色になっていた。
 姉の瞳に浮かんだ嫌悪と動揺に、麻衣はわずかな胸の痛みを覚えた。
 当然の反応であり、時平に対しての憤りであるとわかってはいるが、一瞬、亜衣の嫌悪が自分に向けられたように感じられたのだ。
「いま申したとおりのこと……亜衣、そなたも妹にならば身も心も素直に委ねられるであろう。いつも仲睦まじく乳繰り合うておるくせに、今さら恥ずかしがることもあるまい。ホホホホホッ」
「世迷い言を! お前たちの乱れた考えで―――はぁぅぅっ!!」
 亜衣の吠えるような言葉が、いきなり官能の喘ぎにとってかわった。
 邪鬼が唐突に麻衣の頭をつかみ、顔面をぐりぐりと亜衣の股間に押しつけたのだ。
 かろうじて落ち着きを取り戻していた亜衣の身体に、再び快楽の炎が燃え上がってしまう。
「イッヒヒヒッ、強がってもムダなことよ! 言葉でごまかしても、身体はそうは言っていないようだぜ! ケケケケケケッ!」
「妹に触られるのが気持ちよくてたまらねぇってツラしてやがる! ヒーッヒヒヒッ!」
「ホレホレッ、もっといい声で鳴きな!」
 邪鬼は麻衣の鼻面を強くこすりつけるようにして、亜衣の秘裂をいたぶった。
「んんんーっ!」
 麻衣が口を閉じたまま、喉の奥で悲鳴をあげる。
「アアァッ! はン……ッあ…!」
 亜衣は隠しきれぬ快楽の声をあげて、腰を逃がそうとした。
 邪鬼はすかさず亜衣の腹に足を乗せ、それを阻む。
「うぐっ……あくぁぁっ!」
 亜衣が苦痛と快楽の二重奏に苛まれて、苦しげに声をもらした。
「ヒヒヒ、しっかり感じてるじゃねぇか」
 邪鬼は麻衣の顔をさらに強く押しつけ、小刻みに揺らすようにする。
「……はっ…んんふっ……」
 亜衣は切なげに顔を歪ませて、邪鬼の執拗な責めに耐えている。
 股間に当たっているのが妹の顔であるという事実が、生じている快感に対する後ろめたさを増幅させていた。
 まったく想像もしたことがない状況に混乱し、どう対応すれば良いかが咄嗟にはわからない。
 亜衣の心のガードが、不意を突かれて崩れつつあった。
「ん…ぷはっ」
 やっと邪鬼の手が離れ、麻衣は顔を上げて息を吸い込んだ。
 鼻と口のまわりが、亜衣の愛液でベチョベチョになってしまっていた。
 右手の甲で、粘つく液体をぬぐい取る。
 スッと、麻衣の顔横に扇が突きつけられた。
「さあ、麻衣よ、自由にしてつかわすゆえ、存分に姉を慰めるがよい」
 時平がそう言うと、邪鬼たちが亜衣と麻衣から離れて、台を下りた。
「………っ!」
 麻衣は苦悩する思いを瞳に揺らめかせながら、金縛りにあったかのように固まっていた。
 自らの手で姉を辱めるなど、到底できることではない。
 だが麻衣がやらなければ、時平たちが次に何をするかを思えば、従わないわけにはいかない。
 過酷なジレンマに板挟みにされ、麻衣は途方にくれた。
「どうした、早ういたせ……天神羽衣淫ら舞い、うまく舞えたら褒美をとらそうぞ! オーッホホホッ!」
 くるくると舞うように回りながら、時平も麻衣から少し離れた位置へと移動する。
「……麻衣…あたしは大丈夫だから」
 動けずにいる麻衣に向かって、亜衣が声をかけた。
 語尾が微かに震えている。
 亜衣の瞳を見つめ返して、麻衣は覚悟を決めた。
「おねえちゃん…ごめんなさい……」
 麻衣はそう呟いて膝立ちで近づき、横たえられている亜衣の上にかぶさるように屈みこむ。
 亜衣の脇腹の横に左手をつき、右手をそっと下へ伸ばした。
 股を広げたままでいた亜衣の左の内腿に、指先が触れる。
 緊張していた脚がピクンと震えた。
「ンッ」
 亜衣の食いしばった歯の間から吐息がもれる。
 鋭敏になっている肌を麻衣の優しいタッチで触られることが、彼女に思った以上の刺激を与えてしまっていた。
 びっくりした麻衣の指が止まる。
「いい…から、続けて」
 亜衣は麻衣から目を逸らして、消え入りそうな小声で言った。
「う、うん…」
 麻衣の指が、亜衣の張りのある太腿の上を、おずおずと滑る。
 股の付け根へ指先が達し、さらに禁断の割れ目へ走る。
「んぅっ!」
 ヒクッ、と顎をのけぞらせて、亜衣が背中を浮かした。
 軽く触れられただけで、頭の芯まで蕩かすような快感が、電流のごとく亜衣を襲った。
(おねぇちゃんのここ、こんなに濡れてる……)
 麻衣は亜衣の女陰の感触に、軽い驚きを禁じ得なかった。
 ついさっき、邪鬼によって顔面を押し付けさせられたとはいえ、いま繊細な指先で感じる秘部の濡れようは、より激しい印象がある。
 熱く火照った濡れ肉が、何より雄弁に、口では言えない亜衣の状態を伝えていた。
 麻衣が、くっと指に力をこめた。
「あぁッ!」
 柔らかい襞々を潰すようにしてこねると、亜衣の口から甲高い悲鳴があがる。
 数本の指で秘裂を押し広げながら、麻衣は指先により強く力をこめた。同時に掌底の部分で亜衣の恥骨の上をぐりぐりと撫でまわす。
 自然に指の付け根のあたりが、亜衣の敏感な肉芽を刺激することになる。
「…んっ」
 ため息のような喘ぎが、声を抑えようと唇を引き結んだ亜衣の鼻から漏れ出た。
 麻衣の手の下で、亜衣の濡れそぼった薄い草むらがザラつく。
(なんかわたしも…おかしな気分になっちゃう。頭がポーッとしてきた……)
 力のこもった麻衣の指先が、ズブズブと秘肉に沈みこんでいく。
「んっ……んん〜っ」
 さっきから快楽の責め苦に翻弄されつつもクライマックスを迎えられなかった亜衣の身体が、一気に昇りつめようと、急速に緊張していく。
 ぐぐぐ、と折り曲げられた脚が宙に浮く。
 気を抜いたらすぐにも歓喜の極みに達してしまいそうだ。
「…ふぅっ!……ん……麻衣っ!??」
 亜衣を追いつめようとしているかのような妹の愛撫に、たまらず抗議ともとれる声を出す。
 麻衣の力がフッと抜け、亜衣はあと一歩のところで解放された。
「ン……はぁぁぁ………っ」
 長く息を吐きながら、力の入らなくなった足を投げ出す。
「ハァ、ハァ、ハァ……んくっ」
 もう少しで頂に至りそうなところまで刺激された肉体が、まだ愉悦の中で浮遊しているかのようだ。
 亜衣の胸が激しく上下している。下腹部が断続的に細かく震え、快楽の激しさを明らかにしていた。
(もしかして、あれだけでおねぇちゃん、イキそうだったの?)
 自分の与えた愛撫によって乱れた亜衣を、麻衣は不思議な感情と共に見つめた。
 いつも快楽に弱い麻衣を叱咤し、鬼獣淫界の陵辱を気丈に跳ね返した亜衣が、他愛ない前戯だけで堕ちそうになったのだろうか。
 麻衣は右手を目の前に持ってきた。
 指の間から手首の方まで、ベットリと亜衣の分泌液が付着している。
(やっぱり、すごく感じちゃってるんだ)
 麻衣の胸に、妖しい揺らめきが波を立てた。
 どことなく気持ち良いような、可笑しいような、何とも言えない気分だ。
 顔を背けて目を閉じている亜衣の睫毛が、虹色に光を反射していた。
 恥ずかしさと情けなさに、瞳を濡らしているのだ。
 麻衣の下半身に熱が生じて、蜜壷から淫らな液体がじわりとあふれ出た。
 勝利感のような感情が湧き起こり、麻衣の胸をざわめかせ、昂らせる。
 いつだって快楽に溺れてしまうのは亜衣ではなく麻衣であり、どんな汚辱にも矜持を失わない姉のことが、ずっとまぶしく、羨ましかった。
 双子だというのに、亜衣にはどうしても敵わない。
 自分はいつも亜衣に甘えて、守ってもらっているばかり……。

『おだまり! あんたは私の言うことを聞いてればいいのよ!』
 以前、亜衣に―――いや、亜衣に化けたスートラに投げつけられた言葉が、不意に脳裏に甦った。
 崩壊したコンクリートの瓦礫の上で、麻衣はスートラの変化した亜衣に押し倒され、禁断のレズ・プレイに引き込まれていた。
 いけないとわかっていながら姉には逆らえず、されるがままに翻弄され、快楽を貪っていた自分。
 舌で愛撫される快感に我を忘れ、懇願されて相手の性器に舌を差し入れることまでしてしまっていた。
 あの時処女だった麻衣は、膣内に淫具を挿れられそうになって初めて抵抗したが、それでも上に乗った亜衣を強引に押し退けることはできなかった。
 心は既に姉に屈していたのだ。

 今は……
 そう、主導権を握っているのは麻衣の方だ。
 麻衣の瞳に陶然とした色がちらついていた。
(だって、わたしがこうしなかったら、もっとずっとひどいことになっちゃうもの…)
 心の中で言い訳をするように呟きながら、麻衣は右手をまた亜衣の股間に走らせた。
「はぁっ……ちょ…っま……」
 新たな快楽の衝撃に、亜衣が声をあげた。
(ごめんね、おねぇちゃん。こうするしかないんだもん)
 麻衣の指が、円を描くように亜衣の花弁を優しくなでる。
 指先が亜衣の顕著な反応をしっかり感じ取っていた。
 不思議な欲求が、麻衣の胸のうちに湧きあがってくる。
 麻衣は右手を離すと、姿勢を変え、亜衣の左脚を自分の両脚で挟み込むように移動した。
「ま、麻衣、なにを?」
 快楽に頭を朦朧とさせながら、亜衣は奇妙な行動をとる妹に問いかけた。
 なぜか麻衣の顔には、うっすらと笑みが浮かんでいるように見える。
 麻衣はすすっと亜衣の太腿をこするように、自らの脚を動かした。
「んっ…」
 すべすべした麻衣の肌に軽く撫でられる感触が、邪鬼たちの力任せの愛撫とは異質な、心地よい快美感を生じさせる。
 くすぐったさと気持ちよさが皮膚の内側を這いまわる。
 じっとしていることができず、亜衣は脚を抜こうとして抵抗した。
「ああんっ」
 抜き出そうと動かした脚が股間に入り、麻衣が甘い声をあげて倒れこんだ。膝上に当たる妹の激しく濡れた陰部の感触に、亜衣はびっくりして目を見開いた。
(なに? この子、こんなにグショグショにしてる)
 亜衣の腿を、麻衣が分泌した蜜が伝わっていく。その量に亜衣は驚いていた。
 麻衣は亜衣の上に重なるようにして倒れ、快感に身を震わせている。
 そのままピタリとふたりの動きが止まった。
 亜衣はおかしな状況に戸惑いながら、麻衣の身体を支えていた。
 妹の柔らかい肢体が、脱力して覆いかぶさっている。重さと体温が直に伝わってくる。
 毎日一緒に入浴し同じ布団で寝ることも少なくない妹の長年慣れ親しんだ皮膚が、こんな時にも奇妙に安心感をもたらしていた。
 麻衣のほんのりと湿り気を帯びた滑らかな肌が、亜衣の上気した肌にぴったりと吸い付く。
 体温が融け合い、同質の感覚を共有するかのような一体感が生じる。
 相手の呼吸も、鼓動も、自分のそれとシンクロして区別がつかなくなっていく。
 完全に体重を預けた麻衣は、腕をまわして亜衣に抱きついていた。
 より強い密着感が生じ、亜衣は心地よさに深く沈みこみそうになる。
 麻衣の柔らかくて弾力のある乳房が亜衣の胸にぎゅっと押しつけられ、ふたりの膨らみが互いに押しつぶされて歪んでいた。
「ふっ……ぁ……」
 どちらからともなくため息のような喘ぎがもれる。
 ただ身体を合わせているだけで、甘い快楽の波が生じつつあった。
 麻衣はぎゅっと力をこめて、全身をより強く亜衣に押し当てた。
(ん……なんか……とけちゃいそう………)
 麻衣は波紋のように広がっていく甘美な感覚に、目眩を覚えていた。
 肌を合わせる感触の心地よさにどっぷりと浸かり、後頭部が痺れていくような朦朧とした快感に支配されていく。
 人肌のぬくもりが、淫鬼どもに虐げられ続けた心身のダメージを、優しく癒してくれるような気がした。
(このまま……おねえちゃんと………ひとつになりたい)
 麻衣の中に、じわじわと幸福感が広がっていく。
 性の快感にも似たそれは、徐々に彼女の心の中を侵食していった。

 亜衣も眠気にも似た気持ち良さに全身がほぐれ、手足から力が抜けてしまっている。
 さっきまで絶え間ない陵辱にさらされ続け、一瞬も気を抜けなかった分、身体がすっかり安心しきっていた。
 亜衣には常に妹を支え、助けてやらなければならないという使命感がある。
 自分の手の届かないところで麻衣が鬼獣淫界の鬼たちに辱めを受けていると思えば、心の休まる隙はない。
 だが今、麻衣と寄り添い、直接触れて妹の存在を確認することで、無意識に警戒が緩められつつあった。
 淫らな視線に晒されていることさえも、ともすれば忘れてしまいそうである。
 頭の中に霞がかかったようになり、フワフワと快い気分に包まれる。
 ほんの数十秒の事が、何分もの長さに感じられるくらい、亜衣は夢見心地の快楽に漂い始めていた。
 しかし、それはほんの短い間の幸福だった。

 さわっ
 いきなり麻衣の手が亜衣の背中をなぞるようにして動き、脇腹をかすめる。
 すすすっ
「あ、ちょ……麻…ぃっ」 
 危機的状況にあることを失念し、つい油断してしまっていた亜衣が、焦りの声をあげた。
 そのまま亜衣のお腹をなぞるようにしながら麻衣の手が伸び、亜衣の柔らかな膨らみに触れた。
 指を広げ、乳房を下から揉みあげるようにして、手の平で包み込む。
 ゆっくりと指に力を込め、こねるようにして豊かな胸を揉みほぐす。
「んあっ」
 亜衣が麻衣の手で与えられた快楽に顔を歪める。
 ゾクゾクした快感が走り、力が抜けていく。
「おねえちゃんの身体、柔らかくてすべすべで、気持ち良い……」
「な、何言って…んくっ……ま、麻衣!」
「キレイな身体……ほんとに天女みたい…」
 夢見るように呟きながら、亜衣の身体を丹念にまさぐっていく。
「ねぇ、乳首、こんなに大きくなってるよ?」
 麻衣がくすりと笑いながら、指で亜衣の突起をつまんだ。
「そ…んなこと……ンッ」
 麻衣がいきなり指に力を込め、固くなった乳首をひねりあげた。
「だめだよ、隠そうとしたって、ほら……」
 充血したかわいらしい突起をくりくりと指の間で弄び、麻衣が耳もとで淫らに囁いた。
 亜衣は艶やかな肌を羞恥で桜色に染め、自分を辱める妹から視線を逸らした。
 誰に指摘されるよりも、麻衣に言われるのが一番こたえる。 
「嬉しい……感じてくれてるんだ……」
 麻衣が喘ぐようにして、かすれた声で呟いた。
(麻衣…やっぱりおかしい! たぶん、鬼夜叉童子に何かされたんだわ!)
 妹の異変を感じ取り、亜衣は警戒心を強めた。
 だがもう既に、身体は言うことを聞かなくなっていた。すっかり力が抜け、麻衣が与える刺激の支配下に置かれている。
「ホホホホホッ、もはや亜衣は俎板の上の鯉ぞ。思う様に料理して、女悦の極みに導いてやるがよい」
 時平が頃合とばかりに口を開いた。
「くっ、この外道! 麻衣に…この子に何をしたの!?」
 亜衣が鋭い口調で詰問する。快楽をこらえているためか、声が震えていた。
「ホッホッ、麿はこの通り、何もしてはおらぬ。何か疑いがあるのであれば、これからじっくり確かめるが良かろう?」
 からかうように時平が声をかける。
 亜衣が殺気を漲らせて視線を飛ばした。
「どこ見てるの、おねえちゃん?」
 責めるような声音で言うと、麻衣がぎゅっと指に力を入れる。
「うぁっ!」
 亜衣は麻衣の仕打ちに、たまらず悲鳴をあげた。乳首が容赦なく押しつぶされ、爪がたてられている。
「ごめんね、もっと…感じさせてあげるから……」
 うっとりした声で麻衣が呟いた。自分の世界に入っているようで、瞳は焦点が合っていない。
「麻衣…?……やっ…ん…」
 亜衣は咄嗟に抵抗しようとしたが、四肢には力が入らない。
 ぐっと麻衣が身を乗り出し、脚を引きつけた。
 倒れこんだ時のまま亜衣の股に挟まれていた脚が、亜衣の股間にグイッと押しつけられる。
「アッ!?」
 再びの強い刺激に、亜衣が喘ぎ声を漏らした。
「こうされるの、好きでしょ?」
 いたずらっぽく言いながら、麻衣が二度、三度と膝上のあたりで亜衣の急所をぐりぐりと嬲る。
「はぅっ……んうぅぅ〜っ!」
 亜衣が首を左右に振りながら、顔を歪ませて悶えた。
 麻衣は今度は腰を沈ませ、自らも股間を亜衣の脚にこすりつけるようにする。
 恥骨の内側から、快い熱と、むず痒いような快感が湧いてくる。
「あふ…」
 麻衣もため息のように、唇から喘ぎをこぼした。
 さらに亜衣に密着しながら、麻衣は細かく前後に動き出した。
 お互いに相手の太腿に性器をこすりつける形になっている。
「ん……そん…っあ!」
 割れ目も、襞々も、敏感な真珠も、麻衣の絹のような肌に強くこすられてしまう。
 さっき一度絶頂に達しそうになっていた亜衣にとって、その刺激は致命的だった。
「止めっ…だ、だめ……これ以上………んんっ!」
 亜衣が切羽詰まった声をあげる。
「ハァッ、ハァッ…もうちょっとなの? おねぇちゃん」
 自らも込み上げる快楽に呼吸を荒くしながら、麻衣が弾むような声を出す。姉の必死の抗議を無視して、かえって動きを速める。
 強く身体を押しつけながら、亜衣の下腹部に、細かい振動を与える。
 断続的な刺激に、潮が満ちるようにして、亜衣の子宮の底からうねるように何かがこみあげてくる。
「や…麻衣!」
 亜衣が本気で拒絶の悲鳴をあげた。
 もう限界だった。
「…め…だめ……もう……っあ……ハアァァッ!」
 カクカクと顎を震わせ、亜衣がひときわ甲高い声をあげる。
 下半身も制御を失い、意思とは関係なく揺れ続けている。
 荒れ狂う快感と、どうしようもなく後ろめたい気持ちがないまぜになって、亜衣を苛んだ。
 しばらくして絶頂の波が去ると、力の抜けた亜衣の目から涙がこぼれた。
 形容し難い感情の渦が、頭の中をかき乱していた。
 すっ、と亜衣の身体にかかっていた重みが消失した。
 麻衣が膝を着き、身を起こしたのだ。
 ゆっくりと麻衣が両手を伸ばし、涙に濡れた亜衣の頬を手の平で包み込む。
 瞳はキラキラと潤み、淫靡な微笑みを浮かべている。
「おねぇちゃん、かわいい…」
 麻衣が嬉しさを隠しきれないという声音で言った。
 誇り高く、快楽をいつも拒絶していた姉が、他愛ない愛撫で自分よりも早く絶頂に達し、自分の下で喘いでいる。
 頬を紅潮させ、目蓋を濡らして息を乱しているのだ。
 たまらなかった。
 もっともっと虐めてあげたい。
 そんな思いが顔をもたげる。
 自分でも知らなかった、意識したことのない感情が、子宮の奥から湧きあがってくる。
 ペロッ
 半開きになった亜衣の唇を、麻衣が舌を出してちょこんと舐めた。
「ま…んむっ……」
 何か言いかけた姉の唇を、今度はしっかりと自分の口で塞ぐ。
 舌を差し入れ、チロチロと唇の内側を愛撫する。
「ンッ……んふ…っ」
 亜衣は快楽に頬を染めながらも、首を振って逃れようとする。
 だが麻衣の手が意外なほどがっちりと亜衣の顔を押さえ込んでいた。
 そのまま数十秒、麻衣は双子の姉の口腔内を丹念に愛撫する。
 チュルッ、と唾液を吸い取る音をたてながら、麻衣の唇がようやく離れた。
 唇が艶かしく濡れて色づいている。
「もっと、気持ちよくしてあげるね、おねぇちゃん……」
 妖しい笑みをこぼしながら、熱い吐息とともに麻衣が囁いた。そのまま頭を下げて、亜衣の首筋へと唇を近づけていく。
(麻衣…! いったいどうしたの!? 早く正気に戻って!)
 大切な妹の変貌ぶりに言い知れぬ恐怖を感じながら、亜衣は心の中で悲痛な叫びをあげていた。


               (つづく)

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