キャラクター紹介(五十音順)
【淫獣聖戦XYZ】
【あ行】
○悪衣
天津亜衣から誕生したもう一人の亜衣。カーマを愛する淫魔の姫。本作XYZにおける真の主人公の一人。
天津天神の巫女として在る為に亜衣がその心に封じてきたあらゆる邪念、色欲、心の弱さ、恋愛に対する憧れの凝縮。
よって、彼女の性質は愛の正反対である“邪”に位置し、それが反転の術の儀式によって初めて淫魔“悪衣”として明確な形をもって誕生したのである。淫魔としての誕生は、彼女にとって最高の形での孵化であり、そしてこれまで最も近しい存在に拒絶され続けてきた自分を全身で愛してくれたカーマに対しては、“天津亜衣”からは考えられないほど想いが強い。
また、淫魔であっても麻衣、木偶ノ坊が大切な存在であることは変わらず、タオシーに再三傷付けないように釘を刺したり、麻衣達と話し合う時の様子からも見て取れる。そしてもう一人の自分である亜衣に対しては激しい憎悪を抱くと共に強い愛情も持っている。
だからこそ、完全に一つになる為に亜衣を陥落しようとしたが、どれだけ責めを受けても誇りを失わない亜衣に完全にそれを拒絶されたことで、二人の亜衣の溝は決定的なものとなる。
時間と共に人格の安定を見せ、戦闘面でも妖力を使い、妖力のチャクラムという亜衣にはない技を使うようになり、熟練の戦士である神藤紫磨には苦戦しながらも勝利した。
最後の戦いにかけ、悪衣は麻衣を倒してでもカーマと共に在る自分の世界を勝ち取ろうと決断し、決戦に臨む。
亜衣の魂の分裂により生じた存在・・・ の筈だが、悪衣誕生のルーツには、天津亜衣の出生と魂に起因する何らかの謎があるらしい。
○麻倉那緒
物心ついた頃から旅館山神の仲居であり、若手の退魔師。学校と言える所には行っていない。年齢は麻衣の一つ下。処女。
おしゃれよりは動きやすい服装を好み、仲居の着物時以外は、ジャージやTシャツ、ジーンズなどを良く着ている。
客商売でありながらぞんざいな口調のプチ不良で、女将の紫磨や若女将の静瑠にすら敬語を使わない。
その実年下の小百合に対する面倒見はとても良く、そして仲間と認めた人間は絶対に裏切らず、ピンチになった時は全力で助けてくれるという好人物さもある。ちなみに不良ぶっているが、部屋の中はかなり少女趣味で、特にチーターのぬいぐるみに対する愛着は強い。
作中ではなかなか語られることは無かったが、彼女は安倍退魔師の中でも特殊部門である【忍者】で、れっきとした現代の【くノ一】。
山中で見せた運動能力、跳躍力、スピードと、斬鬼霊爪という特殊な武器。更には最終決戦において麻衣達に存在を全く気取られないままこっそり同行出来たのはつまりそういうこと。
ただ、安倍流退魔忍者は特殊スキルにこそ長けているものの【戦士】や【巫女】と比べて霊力戦闘においてどうしても劣る。
那緒自身退魔師としてはまだ若輩で邪鬼程度しか倒せなかったが、今回の修業と戦いで一気に【千手】の武神装女にまで出世した。
実は日本でも屈指の重工である山崎重工社長の年老いてからの娘。
しかし風俗嬢である愛人との間の子で、世間体を重視した社長には子として認知されず、生活苦となった若い母親は赤子である那緒を手放し、孤児院に捨てた。そしてその孤児院を通じ、紫磨に引き取られ旅館山神の仲居として、同時に素質も高かったことから見習いの退魔師として育つ事になった。彼女の仲間想いの尋常ではない強さは、こういった過去にも関連がある。
つい最近になり、次期社長候補である社長の長男が出張先の事故で死亡してしまった事で、後継者の居なくなってしまった重工側は、なんとか那緒を探し出し正式に社長の娘として迎え入れたいと旅館にまでわざわざ使いがやって来たが、那緒は激怒してそこら中の物を投げ飛ばし追い払った。
何かと不幸な目に逢う不幸属性があり、特に調子に乗りやすい彼女の性格もあって、調子がいいなと思った直後には何かしらのバッドイベントに直行するというありがたくない特殊な運命線の持ち主。
○安倍薫(タオシー)
那緒と同い年。ショートヘアでスレンダー体型。8歳時に何故か半陰陽症を発症したフタナリ少女。処女。
探偵風の帽子やオーバーオールなど、中世的を通り越して男性的な服装で、サラシで胸を隠し、一人称は僕と、全体的に【男性】を纏うことで強い自分を作り上げ、自分の中の女性を封じている。
千年続いた安倍家きっての天才として産まれた少女。実際に幼少期から自分で式神を作り上げ、それが陰陽学校の授業の中で、先生の式神を圧倒してしまった事すらある。しかしその驚異的な才能が逆に子供の間で孤立を生み、気弱な性格も相俟っていじめの対象になっていた。幼少の頃から唯一の親友であった仁はそういったものから常に薫を守り、そんな仁に対し薫はほのかな恋心を抱いていた。
しかし8年前に彼女の体に起こった【異常】により、いよいよ“忌み子”として疎まれ、そして父は膿を切り落とすかのように、母共々薫を安倍から追い出した。
元々世辞にも強いと言えなかった母は徐々に壊れていき、幼い薫は懸命に商店街の余りもので食い繋ぎながら回復を願い努力をしたが、虚しくも一年後に他界。符術で母の遺体を焼却した薫は警察を経て保護施設に一時収容され、金持ちの中年男に引き取られる事になったが、その男の目当ては薫の体だった。
それまで一度も人に対し使った事の無い式神の力により強姦を受けずに済んだが、その日を境に優しかった薫の心は【何かが欲しいなら力で手に入れられる】ということを知り、やがて安倍、そして人間全体への復讐へと染まっていく。
数年後に独力でカーマを召喚し、主従の契約を結ぶ事に成功。その術式の才能と天才的な頭脳を発揮し、鬼夜叉童子達に己の存在を隠しながらカーマに仕え続け、彼女自身も鬼獣淫界で飛躍的に術の知識を増やし、鬼獣淫界の妖術奇術の知識まで吸収し、次々とオリジナルの術式を編み出していった。
彼女が自分の事をタオシー(道士)と呼ぶようになる。
獣人などの淫魔複製。空間転移による遠距離の瞬間移動。術式陣による邪鬼大軍の狂化などもその一部。
反転の術もまた、かつて鬼獣淫界で失われた秘術であり、それをたった8年の間で復活させたという事実が彼女の天才ぶりを物語る。
【奈落】の直後に始めて亜衣と対面。最初は利用の対象でしかなかったが、悪衣に対してはだんだん心を開いていった。
天岩戸では幻夢で麻衣、木偶ノ坊を征するも、イレギュラーである鬼麿の登場や仁のタフネス、精神力に圧倒され、敗北。
その際これまで表に出さなかった負の感情を発露させ、初めて仁に対し【女性】の自分を見せた。
最終決戦においては、前回の反省を踏まえ、持てる術式、霊力の全てを注ぎ込み、仁との決着に挑む。
○天照(天照大御神(アマテラスオオミノカミ))
日本屈指の知名度を誇る三貴神の一人。やはりここではXYZのみでの天照を紹介する。
他の人や神の心が読めるという能力を持ち、その力に心痛めるも、民衆の心を識り解決することで高天原の平和を守っていた。
兄、須佐之男に対し恋慕の情を持っていたが、自身が鏡をも司る神であるが故に、兄妹である三貴神にはの心が読まれてしまうという力の為、それを悟られることで須佐之男に嫌悪されたくないという一心で須佐之男の元から離れた。
しかし当の須佐之男が高天原へやってきてしまったことで、彼女は自身の能力を封じる天岩戸に引き篭もってしまう。
それにより、神話の通り太陽が出なくなってしまったわけだが、ツクヨミの悪知恵と、純真たる須佐之男の説得により落着した。
天岩戸の鏡の世界では、麻衣に鏡の試練を課し、“真の太陽の加護”を授けた。
○天津亜衣
本編と重なる紹介は省き、あくまでXYZでの亜衣を説明する。
“奈落”後、麻衣を助ける為、カーマから持ちかけられた悪魔の取引に応じ、反転の儀を行うことで、その身を淫魔に変えた。
最初は意志を完全に悪衣に掌握されていたが、麻衣との再会、そして戦闘で、本来亜衣に振り分けられる筈だった霊力を麻衣が送り込んだことで亜衣の意思が復活した。だが、そのお陰で亜衣は何日もの受難を受ける事になる。
抵抗が出来ずにカーマの陵辱を受ける日々。もう一人の自分である悪衣がカーマを愛しているという事実に亜衣は苦しみ続けた。
そして悪衣はそんな亜衣を陥落しようとするが、誇り高い亜衣は、女であることよりも天津の巫女として生きることを決意し、悪衣と同化し生きることを拒絶した。
XYZにおいて、最も受難を受けている一人。
○天津麻衣
亜衣同様、本編と重なる紹介は省く。
今回の戦いで、麻衣は初めて亜衣との姉妹二人ではなく、一人で戦う事を余儀なくされた。
それまでの17年、自分でも当たり前のように姉、亜衣に頼りきっていたが、悪衣との最初の戦い、そして別離を経験することで、麻衣は誰より大事な姉をカーマから取り戻すこと。そして涙を封じる事を深く決意する。
その翌日に、安倍の戦士団総隊長、逢魔仁と出会い、行動を共にする内、だんだんと恋心を抱くようになっていった。
そして、他の安倍の戦士達と出会い、共闘を通して麻衣はこれまでに居なかった【肩を並べて戦う仲間】を得る。
特に麻衣にとって嬉しかったのは、実は那緒という【後輩】を初めて得た事だったりする。
本作のテーマの一つは【麻衣の成長】。
そのテーマ通り、麻衣自身も、天岩戸での試練、葛葉のスパルタ修業を通し、心身ともに着々と力を付けていった。
それが如実に現れたのは、天岩戸を出た後の亜衣との戦いにおいての勝利だろう。
天照大御神の“鏡の試練”を受け、己の闇との戦いを制した麻衣は“真の太陽の加護”を授かり、新たな変身、新たな力を得る。
その一つが鏡の力を使った驚異的な治癒能力で、瀕死の瀬馬を完全ではないが回復させた。
ちなみに隙の多さと快楽への弱さはきちんと顕在で、大浴場の中で静瑠にまんまと食べられた。
○安倍梗子(桔梗姫)
大和撫子の見本と言っていいほど、物腰柔らかな美人。タイプは【巫女】。
天の絹糸を思わせる白銀の艶やかな長髪は安倍人間の中でも葛葉の血を強く感じさせる。
麻衣と同い年の少女でありながら、カリスマ性と慈愛に溢れた、現在の安倍の最高指導者。
術式の天才である薫とは対照的に、生まれついて神聖な霊性と膨大な霊力を有し生まれた、【清らかなる聖女】。処女。
近寄るだけで邪鬼が消滅するその聖浄の力は安倍の中でも大いに喜ばれ、【神子】と持て囃される。
そんな彼女自身。成長と共に、常識では考えられない様々な活躍を成して行った。特に驚くべきエピソードは、淫魔の策略によって断たれた大地の龍脈をたった一人で完璧に繋ぎ直したというもの。
優しき心と強大な力をもった彼女は、男女、戦士を問わず安倍の若き者達に尊敬され、もはや崇拝レベル。
そんな梗子はやがて、桔梗姫と呼ばれ、安倍を統治する姫の如く扱われている(本人は「とても自分はそう呼ばれる器ではないのに」と困惑しているが)。
だがその神聖且つ膨大たる霊性は、肉の穢れを受けると完全に失われてしまう。
亜衣、麻衣同様に、それ以上に安倍を守る存在として、梗子は清らかな体でいなくてはならないのである。
老醜たる全ての悪しき風習、制度を廃し新生した現在の安倍において、彼女に使命を押し付けるような人間はいない。
だが、梗子は誰よりも心優しいが故に悲しい決断をする。
その神聖の力で仲間を、そして全ての人を守らなくてはならない。誰も死なせたくない。その為にはこの力は必要である、というのが梗子の結論で、生涯誰とも添い遂げない事を宣言した。
幼い頃より一緒であった竜とはその時点で既に互いに強く想い合っていたが、現在に至るまでろくに触れ合うことすらない。
数年前に起こった安倍の内部革命の時は仁達と共に革命側に立ち、自分の父母親戚を含む旧体制側を失脚、追放させた。
梗子本人は、自分も旧体制側に深い関わりのある人間として贖罪の為の収監を希望したが、心優しく誰より旧体制の罪業に胸を痛めていた事を知っていた新体制側の若者達は誰一人として彼女を責めず、逆に姫こそが新しい安倍の指導者に相応しいと推した。
そうして桔梗姫は、1000年続いた旧体制から、新たな体制の安倍の指導者として就任し、今も平和に尽くしている。
今回の淫獣聖戦事件と安倍薫については、実は彼女にもそう浅くない関わりがあるのだとか。
○安倍葛葉(葛の葉)
言うまでも無く有名な、安倍清明の母。生きる安倍の始祖。
九尾の一歩手前、8.5本の尻尾を持つ妖狐(妖力的にも年齢としても天狐レベルだが、妖狐の里を自ら出て行ったので位は妖狐のまま)
人間姿の時には8.5本の尻尾は、同じ本数に別れたポニーヘアの髪の形になる。
美しい白銀色の髪は、昔は彼女のコンプレックスだったが、今では彼女の誇りであり、同時に新生した安倍のシンボルカラー。
小さなチョッキに、ジーンズの裾が破れた形の半ズボンという現代的なようでどこか間違えた服装。
ここ数十年の間に、日本のオタク文化にすっかり染まり、今では知識面ではかなりディープなオタクぶりを発揮している。
それに持ち前のムードメーカーを通り越してやや迷惑なほどの明るい性格も相俟って、そのパワーはオタク芸人顔負け。
その齢千年を超えるが、見た目は亜衣、麻衣よりも若くロリ系の体つき。
本人はそれを気にしているが、保名が愛してくれた自分を偽りたくない為、敢えて妖狐の得意な変化で理想の姿になる事はしない。
千年前、信太の森で保名に助けられた事で彼に好意を抱き、正体を隠して彼に近づいたが、正体をとっくに見破られていた。
それを葛葉が知った日、葛葉は森に帰ろうとしたが保名はそんな葛葉に想いを打ち明け、二人は結ばれる。
【人間と愛し合ってはならない】という妖狐族の禁を犯した葛葉は森に帰るのをやめ、保名の妻として暮らした。
半年後に童子丸(後の安倍清明)を儲け、幸せな親子三人での生活が続いていたが、その五年後、他の陰陽師によって葛葉の正体が判明してしまった事で終わりを告げる。
陰陽師である保名と童子丸の生活と将来を己のせいで潰してしまう事を恐れた葛葉は、自分から姿を消した。
その数十年後、保名が死を迎える日に葛葉は再び保名の床に姿を現し、死を超えて再び出会おうと約束し、保名の死を看取る。
実にそれから千年もの間、葛葉は保名の妻として操を守り続ける事を自身に誓った(つまり、千年の間まったく性交をしていない)。
保名の死後、魂が抜けたようになって荒れ寺に住んでいたが、葛葉は金毛九尾のはからいと妹柚子葉の努力で、里から離れた小さな森で生活。しかしそれも、その後の安倍による金毛九尾討伐という事件により、いよいよ葛葉は最期の居場所をも失くす。
己の一族の生き神である金毛九尾を殺した人間の母ともなれば、その存在すら許される筈がない。
葛葉は自分から柚子葉に別れを告げ、それから八百年の長きに渡り、日本中を放浪する孤独な旅が始まった。
永き旅の中で、八百比丘尼。そしてはぐれ妖狐の少年、権(ごん)などと出会うも、最後には常に葛葉は独りになり、やがてその孤独に耐えられなくなって来た、現代より70年前頃。ようやく安倍の使いが彼女を迎え、当時10歳の瀬馬棲胆を護衛、世話人として、葛葉は八百年ぶりに安倍の屋敷で生活をする事になる。
しかし、戦後などによる貧窮も手伝い、大儀を見失い始めていた安倍は、新たな安倍清明を生み出す為に、始祖葛葉を母体にするというとんでもない考えに至る。それをいち早く知った当時青年の瀬馬は、茫然自失となっていた葛葉を説得し、逃がした。
それから葛葉はまた各地を放浪しながら、時には旅館山神に世話になり、という生活を続け(現在旅館にいる面々のほとんどは葛葉がかつてオシメを替えた事がある)現在から数年前に安倍内部で革命が起こり、腐敗を正し、大幅に体制が改革されたことで、ようやく葛葉は安倍の始祖であり母として、正式に安倍に帰ってくることが出来た。
今では若い戦士の修行、指導を担当しつつ、ゆったりと保名を待ちながら生きている。
○安倍 保名(あべの やすな)
後に陰陽師と【安倍】の地位を不動のものとした安倍清明の父であり、葛の葉が生涯愛した唯一無二の夫。
名前は【名を保つ】と書くわけだが、現在に至るまで安倍が日ノ本の国最大の退魔機関として残っている事を考えると成る程である。
当時の陰陽師全体で見ると彼はかなり才能豊かで実力もあったが、息子の清明がケタ違いすぎて歴史上まったく目立たなかった。
ある日、八卦で修業に適した地を探していたところ、信太の森と出たので昼間から術式のおさらいなどをしていたのだが、それが運命の歯車の動き出しとなった。
熱心な彼が夜まで修業に勤しんでいると、やかましい怒鳴り声が聞こえだす。
式を使って見てみると、白銀色の毛並みを持つ子狐が素人らしき狩人に追われているということを把握し、保名はそこで狐を助ける為に一芝居うってみることを思いついた。
そのため最初に気配遮断の術式をかけた布で子狐を隠すが、その際子狐に思いっきり左手首を噛まれてしまう。
しかしその後はさすが清明の父というべきか、見事に話術と幻術を駆使し、狩人達を脅して追い払った。
子狐が逃げた後は一人で帰途に付こうとしたが、そこで人間姿になった少女、葛の葉に手当てを受け、家路まで送り届けられる。
この時点で保名は葛の葉が子狐だとわかっていたが、その時から見惚れ心奪われてしまっていたこともあって、ずっと黙っていた。
それから保名の仮病と、葛の葉との奇妙な付き合いが始まり、しばらく二人は親友から先に踏み込まない日々を続けた。
が、保名がうっかり葛の葉の正体について口を滑らしてしまい。葛の葉が帰ってしまいそうになった所を保名はやや強引に押し倒す。
ここで保名という人間が普段優しく大人しい分こういう時はとても積極的だという事が判明。
そうして二人は一線を超え男女となり、保名の申し出により二人は夫婦となった。
しかしやはり人の寿命。天寿をいよいよ全うしようかというその日に変わらぬ姿の葛葉と再会。
一人先に逝く事をすまないと話しつつ、必ずまた生まれ変わって葛葉に会いに行く、戻ってくると約束をした。
この言葉は葛葉にとって呪縛だったのではないかと思う人間は多いが、葛葉自身は
「そんなことはない、保名の言葉はわしの生きる糧じゃった。あの言葉がなければわしは今の今まで生きておらんかったよ」
と語っている。
○安倍 康成(あべの やすなり)
安倍の歴史上、最も子孫に恨まれ疎まれている男。特に風螺華は彼を最大級に嫌悪している。
安倍清明により一時は繁栄に繁栄を重ねた安倍も、康成の代となると衰退を見せ、【狐の子】という陰口が広まっていく。
この時康成は、安倍は狐の子、妖かしの血という呼称を払拭しかつての勢いを取り戻そうと画策していた。
そんな時、康成は偶然、玉藻前が始祖である葛葉にとって【神】である金毛九尾の狐ということに気付く。
そして康成は玉藻前の真意を確かめもしないまま【玉藻前は妖狐、宮に瘴気を宿らせ災いを呼ぶ金毛九尾である】と言い放った。
玉藻前はかつての葛葉と同じく争わぬまま姿を消したが、これを又とない機と逸る康成は上層に【金毛九尾を放って置けばまた近い内に大きな災いを起こすでしょう】と進言し、万の兵と術師を動員し九尾狩りを行った。
結果として康成は金毛九尾を討ちとり、それにより安倍は再びその勢力を取り戻し、確固たる地位を築いた。
しかしその代償として始祖葛葉は完全に居場所を失い、長い放浪を始める事になる。
葛葉本人は康成の行為も己の責として考え、恨みなど欠片も無いそうだが、特に革命後の安倍では
【そんな事をしてると康成みたいになりますよ】
【えーヤダー。もうしないよー】
というぐらい嫌われている。
康成自体は良くも悪くも(というより完全に悪い方向で)政治家だったと言える。
○逢魔 仁(おうま じん)
年齢20。安倍の主戦力である逢魔部隊の隊長。タイプは【戦士】。ハッキリ言うとまだ童貞。
真面目な性格な上に誠実な性格なので、剣に誘われても風俗どころか合コンやナンパもしない。誠実な性格でいい男とくれば当然安倍の中でもモテるのだが、仁は誰とも付き合わない。それは仁が薫という存在を忘れられなかったことも関連しているだろう。
身長は高めで、理想的な筋肉のバランスと、達人をも凌駕した剣術。そして男の中では珍しい強く研ぎ澄まされた霊力を持つ。
先代の逢魔部隊隊長、逢魔宗源とその妻、巫女の桔梗の間に生まれた。生まれついての退魔の戦士。
父から譲り受けた剣術の才と、母、菫(すみれ)から譲り受けた霊力。
しかしそれを上回って仁は努力型の人間であり、幼少期から厳しい剣術の稽古を受け、その才能を上回る努力でめきめきと力を付けていった。
そして、その幼少期に薫と出会い、親友を経て子供ならではの恋愛感情を互いに抱く。
しかし8年前に起こった事件により二人は離れ離れになり、それが8年後の現代になって、敵である淫魔の配下タオシーとの邂逅という、皮肉的な再会を果たすことになる。
薫が出て行ってからの仁は、すぐにでも薫を探したかったが、その最初の1年は病気の母の看病に費やさざるを得ず、母の死後になってようやく本格的に薫を探しに出た。
しかし13、4程度の彼が独力で年月をかけ探し出せたのは富豪の家だった場所までで、そこは既に無人だった。
その後も仁は懸命に探し続けたが、そこから先の手がかりは遂に掴むことができなかった。
安倍や外野の占い師などにも片っ端から当たったのだが、その答えは皆揃って【探し人はもうこの世に居ない】であり、仁にとっては絶望の答えでしかなかったのである。
更に年月が経つと、仁も逢魔の戦士として前線に立つようになっていく。
薫を助けられなかったという自責の思いからか、仁は自分から進んで前線のより前線へ立ち、己をより苦境へと追いやり、苛め抜いた。
どのような魔との戦いにおいても前線中の前線に飛び込み、敵を屠り、仲間を助け、そして必ず生きて帰って来た。
そんな仁が、他の逢魔を問わぬ安倍の全ての戦士達から尊敬され、リーダとして認められるのにそう時間は必要としなかった。
そうして仁は、16で切り込み隊長。そして18という若さで総隊長に就任する。
しかし、逢魔の隊長となった仁を待っていたのは、より壮絶な死地、地獄とも言える戦いの数々だった。
終わる事の無い戦いの日々。それはいくら仁が身を挺して庇い、守ろうと、どうしても大切な仲間、部下達は死んでいき、守りきることが出来なかった無辜の人々は殺され、陵辱されていく。
一度は助けた仲間が、次の日には肉片に。女の戦士であれば、身も心も陵辱され、死よりも残酷な姿で再会することもあった。
時には敵となった仲間を、己の手で斬らざるをえなかったことすらもあった。
贖罪の為に始めた筈の戦いは、仁にとって、より救えなかった人間と、背負う事になった魂を増やす事になってしまったのである。
しかしそれと同時に、仁自身も、桔梗姫、剣や竜を始めとする多くの部下、仲間に支えられてきた。
そのお陰で仁は正気を失わず、優しく、強く、思い遣りの深い人間へと成長することが出来た。
そして現在から数年前。安倍の内部革命を桔梗姫と共に決起。
人望高い仁に、ほぼ全ての逢魔部隊が彼の味方として共に革命に参加したこともあり、内部革命はほぼ無血で完了した。
その革命の中、父宗源との因縁深い一騎打ちに勝利することで、仁は己の過去との一つの決着を付けることが出来たのである。
そして現在、20となった仁は、占い師の言葉に従い、単身天津の屋敷を訪れる。
それからご存知の通り、仁は麻衣、木偶ノ坊の最も頼れる仲間として共に戦うこととなるわけである。
初期から仁は優しく思い遣りの深い性格を見せ、木偶ノ坊にはできない形で色々と不安定になっていた麻衣を支え、旅館では麻衣が寝られない理由を言い当て、抱き締め励ますことで心の闇を解き放った。
天岩戸では、麻衣、木偶ノ坊の両名が幻術に引っ掛かる中、仁一人だけが早々に罠を見抜き、全ての罠を破壊した上で、ようやく8年ぶりに薫と再会。そこで薫に対する想いの強さだけではなく、戦士としての頭の回転力と、薫の予想を超える凄まじい力と精神力を見せた。だが、感情を発露した薫の心の底からの憎しみの声に動けなくなり、逃走を許してしまう。
その後の試練では、見事にそれに打ち勝ち、“真の剣の加護”こと、“天敢雲”を得た。
翌日の旅館では、薫の夢とリンクし、夢の中で薫の壮絶な過去を知り、薫を救えなかった過去をより深く後悔する。
そして今度こそは絶対に薫を救うことを己に誓い、葛葉神社での修業を受け、いよいよ最終決戦へ臨む。
余談以外の何ものでもないが、もし【底抜けにいい人コンテスト】があれば上位入賞間違いなしだろう。
○逢魔 菫(旧名:美空 菫(みそら すみれ))
作品中では名前だけしか登場しない、仁の母親にして宗源の妻。故人。
それこそ菫の花の化身ではないかと思うほどの、静かな美しさと優しさを持つおしとやかな女性。
代々安倍に属する美空の家の中でも霊力に恵まれた巫女なのだが、幼き頃から病弱であるが故に、生涯を通じて間の討伐に参加できたことは無く、安倍に役立てたのは護符や式神作りぐらいだった。
幼き頃から宗源に恋心を抱いていたが、同じく宗源に恋していた、自分と違い活発で明るく、自分の感情を素直に表現する姉には到底敵うまいと思い。姉を心より応援し自分は身を引いた。
しかし宗源と時雨が参加した20数年前の戦いにおいて、姉、時雨が悲しき形で世を去ってから、彼女と宗源の関係は一転する。
何より大切でなくてはならない存在であった姉の死の影響で菫の病状は悪化の一途を辿ったものの、それでも廃人同然に気力を無くしていた宗源を放ってはおけず、彼の心を癒す為に献身した。
数年を経て、済し崩し的に二人は男女の関係になり、仁が誕生する。
だが病の体で仁を産んだ事はその体に大きな負担を与え、尚且つ菫の心の中に渦巻いていた姉、時雨への罪悪感もあったのだろうか。
年月を重ねるごとに衰弱し、仁誕生から13年後に死去。その遺骨は時雨と同じ墓にあり、墓石には姉妹の名が並んで刻まれている。
○逢魔 宗源
逢魔仁の父親にして、先代の逢魔総隊長。
老眼と近眼の入った眼鏡をかけ、高い身長に、こけた頬。一見細身のようだが、その中身には限界にまで絞り込まれた筋肉がある。
基本は戦士でありながら忍軍のスキルも完全に会得しており、多くの淫魔、妖魔は気付かぬ内にその身を両断され、息絶える。
その余りに情け容赦の無い機械のような冷酷な戦いぶりと惨殺ぶりから、魔の間では【暗殺士】【慙愧羅刹】と呼ばれ恐れられた。
昔は仁と同じように、心優しい少し甘ったるいぐらいの剣士だったが、それを決定的に変えたのが20数年前のある戦い。
淫らなる悪事の限りを尽くしていた事で世界中の退魔に名が知れ渡っていた【情欲の悪魔アスモデウス】。
それが日本にやって来る事を知った安倍は、討伐隊を設立し、アスモデウスを迎え撃つ事にした。
その面々には、当時は若手であった宗源。その恋人であり菫の姉である巫女の美空時雨(みそらしぐれ)。
そして、当時50代後半の瀬馬棲胆。当時10代後半の若娘だった柄爬(がらは)紫磨と、後にその夫になる神藤鵜角(しんどう うずみ)。更には亜衣、麻衣の本当の祖母である天津紗衣もその作戦に外部からの一時雇用という形で参加している。
安倍とその他の全ての退魔は完全にアスモデウスを包囲したつもりだったが、魔王であるアスモデウスはその包囲の隙を突いた。
その【隙】が宗源と時雨であり、突破の際に宗源は重傷を負わされ、時雨は連れ去られてしまう。
それから数日が経ち、安倍がその居場所を突き止められないでいた。時雨の無事を誰より祈っていた宗源だが、その再会は言葉に出来ないほど残酷なものとなる。
ある日の夜中、邸内に木霊する物音と悲鳴に起きた宗源が音の現場に向かうと、そこに在ったのは若き逢魔の訓練生の肢体の山と、その山の上で血塗れで微笑んでいる、淫魔と化した時雨(淫魔としての新名は死愚蠣)の姿だった。
愛する女性が、身も心も淫魔に堕落させられ、アスモデウスの忠実な配下、そして女に変えられた事実に、宗源は発狂しかかる程にまで絶望と悲しみ、憎悪で心包まれた。そして宗源は、絶対にアスモデウスを自分の手で殺すことを誓う。
その次の戦いで宗源と相対した死愚蠣は、死闘の末、宗源の振るう刀の一撃を無抵抗で受け、最期には時雨として宗源の腕の中で死を迎えた。そして時雨のその死に困惑するアスモデウスの胸の【核】に、宗源は己の全てをかけた渾身の一刀を浴びせる。
天にも響く絶叫と共に消え去ったアスモデウス。だが、仇を討ち果たした宗源には虚しさ以外の何も残っていなかった。
その後の宗源は廃人同然で、淫魔を憎悪に任せ斬る時以外は、世捨て人のように無気力でいた。
それに対し献身的に尽くしたのは、前々から宗源に想いを寄せていた、時雨の妹の菫。
年月の経過と共に二人の仲は深くなり、その数年後に宗源は逢魔総隊長になり、同じくして二人の間に仁が生まれる。
しかし残念ながら、宗源はその後も復讐を以って魔と戦う生き方しか最早出来ず、まともな夫婦生活は出来なかった。
元々病弱であった菫は7年前に死去し、息子とろくに会話をすることも無く、それからも宗源はひたすら逢魔総隊長として戦い続けた。
そして現在から数年前、いよいよ安倍を変える為に決起した仁に対し、宗源は旧安倍側として立ち塞がり、真剣による一騎打ちを選ぶ。
序盤は優勢だった宗源だが、懸命に向かってくる仁の姿、その顔に菫と時雨の影幻(かげまぼろし)を見た宗源は、かつての時雨がやった時と同じように、仁の一撃を無抵抗で受け入れ、倒れる(仁はミネでその一撃を入れた為、宗源は死ななかった)。
だが仁の一撃で倒れたあと、それまで無理をさせていた体がいよいよ限界を見せ、長い療養が必要と診断される。
現在は、逢魔総隊長である仁の【身体を休め、回復させろ】という命令に素直に従い、安倍経営の病院に入院療養中。
順調に回復を見せており、仁は折を見てゆっくりと父宗源と話し合いたいと思っている。
○鬼麿(鬼麿・青年体)
XYZでの鬼麿の登場は、淫魔大王消滅後となる。
本編と違い、元の姿に戻った後は眠ったままだったが、後の展開にある通りそれには理由がちゃんと存在した。
瀬馬によって京都は新平安京まで運ばれ、その後すぐに異変が発生。眠ったままの鬼麿は強大な霊力を発生させ、最初は安倍の僧兵を多数動員し当たらせたのだが、それでは手に負えなくなったので、安倍一の霊力を持ち結界作りの能力に長けた桔梗姫が自らその役目を買って出たことで、なんと安倍の最高指導者が直接結界を張ることになった。
それでも天神の末裔である鬼麿の放つ霊力は凄まじく、最後には桔梗姫ですら耐え切れないようになる。
膨大な霊力で新平安京が吹き飛ぶかと思われたその刹那、桔梗姫の結界という卵の中で、その霊力は新たな陽神体へと形を変える。
天神の子、青年鬼麿誕生の瞬間である。
鬼麿の中の淫魔大王という存在が死に、消滅したことで、鬼麿の中の青年の精神は、天神の末裔としての真の力を覚醒させたのだ。
窮地にある亜衣、麻衣を助ける為、青年の鬼麿は安倍の術士達の力を信じ、一気に神通力と霊力の覚醒と解放を行ったということ。
そのお陰で、たった一部屋の崩壊程度で青年鬼麿の登場となった(結果オーライだが、はた迷惑な話である
その後の彼は自力で霊道を通り天岩戸までものの数分で辿りつき、更には薫の【くぐつ】を一瞬で消滅させる圧倒的な強さを発揮。
そこで木偶ノ坊と再会するわけだが、その時に青年の鬼麿は淫魔大王時の記憶も全て覚えていることが発覚した。
罪の意識に押し潰されそうになる鬼麿だったが、木偶ノ坊の心からの励ましに救われる。
そこから先も一緒に戦えればラクだったのだろうが、何ぶん初めての高位術だったこともあり、時間切れによる限界で退場。
少年の鬼麿が起きた時、青年時のシリアスさはどこへという勢いで桔梗姫に跳びつくも、親衛隊によって阻止された。
そして今度は、二人の武神装女、明奈と風螺華が旅館山神まで輸送という形で、いつもの少年鬼麿が登場。
さっそく女湯を覗こうとしたり好き放題だが、結局紫磨に縛られ連れて行かれた。
○小野 小百合
低い背丈に日本人形のような白い肌とふっくらとした頬。処女。
那緒同様、旅館“山神”の仲居であり、学校に行っていない。やはり紫磨に拾われた孤児である。
霊能力は全く無いが、その代わり働き者で、那緒はすぐサボる布団敷き、片付け、お膳運びを小さな体で進んで行う。
名前の通り百合属性があり、静瑠に憧れを抱いているが、当の静瑠からすると食指が動かない相手らしく、中途半端に手を出すのも失礼と考えて、発作を抑える協力を申し出されてもそっち方面では一切相手にしないことにしている。
普段は皆の役に立ついい子なのだが、静瑠関連になるとお世辞にもよろしくない単独行動をしてしまうという困った部分もあり、そのおかげで今回静瑠はしなくてもいい苦戦と陵辱を受けるハメになった。ポジション的にいわゆる逆木偶ノ坊。
著者が新キャラを作ると大概は那緒のように前へ前へ出てきたりするのだが、珍しく彼女はチョイのまま終わった。
XYZきっての出世頭である同じ仲居仲間の那緒と比べるとあまりにあまりといえる。
【孕堕の姫】
○アーミィ(天津 亜美衣)
カーマの要素はどこへ行ったのかというぐらい天真爛漫で無邪気な天使っ子。見た目はむしろ麻衣に似ている。
捕らわれの亜衣が心を保っていられたのは、純粋なアーミィがいたからこそでもある。
兄カイ、母亜衣(悪衣)が大好きで、父カーマもタオシーも嫌いじゃないのだが、アーミィは【私はお兄ちゃんの部下だから】という理由で命令に従っているあたりまったくもって純粋無垢。ちなみに一番好きな場所は柔らかいママの膝で、次が木偶ノ坊の肩。高いから。
術式センスや才能はタオシーを軽く凌駕しているという、幼いながら化け物以上。
実はスートラ並の変身能力の素質があるのだが、肝心の本人が気付いていない。
グラマーで完全に人格が違う大人アーミィだとか、変身時にSEXをしても本来の身体に何の影響も無いとか、色々構想はあったものの残念ながら日の目を見る前に孕堕の姫が終わってしまったので結局お蔵入り。
カイに命じられてタオシーに超短期で空間転移を始めとする高度術式をあっという間に習得。
木偶ノ坊の石化を簡単に解き、ニセの石像を用意。空間転移を繰り返してカイと共に亜衣奪還の手段を探すのであった。
地上会で名乗る場合の名前は天津亜美衣(あみい)。