淫獣聖戦 偽典 「繭地獄」 11

 谷崎美和が、邪鬼達に運ばれてきた。意識がなく、なすがままだ。
「股を広げさせろ」
 ひーー。邪鬼達は、美和の腰を持ち上げ大股開きさせる。葛太夫はしげしげと覗き込んだ。指で陰裂を寛げる。
「綺麗な女陰よのう。よし、邪鬼共、こやつを吊り下げよ」
 一匹の邪鬼がロープをくわえて、器用に柱をよじ登っていく。鴨居にたどり着くと、滑車にロープを通した。太夫は別の髪触手を使って、美和を縛ってゆく。両足の膝を戒め、胸をX字に括り、後ろ手に結わえる。それをロープの端の金具に引っかけ、逆の端を引く。美和は所謂M字開脚で、やや前傾姿勢になりながら持ち上がっていく。五尺ほど持ち上がったところで、滑車を横にずらした。その真下には、なんと巌の眠りに入った鬼夜叉童子の石像がある。そして、天を突く一本の蛇触手が、美和の女陰に擬された。もし太夫がロープを緩め、一尺も下がれば、石像に貫かれてしまう。すぐにもそうするのかと思えたが、太夫は意外にもロープの端を柱の金具に結わえ付け、美和を空中に固定した。髪触手が体に食い込み、痛みによって美和が覚醒した。
「な、なに、痛い。きゃーーっ。なんでぇーー。縛られてる。たっ、助けて」
 その悲鳴に、まず麻衣が顔を上げた。目を開けたが、夢見心地の余韻がまだ体を包んでいるようで、再び女淫を弄くりだした。
「うるさい」
 粘液で、美和の口が塞がれる。
「ふふふ。お前は、偉大なる鬼夜叉童子様の復活の生け贄となるのだ、光栄に思え。そうだな、亜衣も起こせ」
 邪鬼が、亜衣の顔をぺしぺしと叩いた。
「う、う・・・・」
 亜衣は目を開けた。叩き続ける邪鬼を頭を振って制する。
「やめろ」
「邪鬼共下がれ。起きたようだな、これを見ろ」
 吊り下げられた、美和の姿が目に入る。
「み、美和ちゃん・・・。貴様、何をする気だ」
「見ればわかるだろう。この女を童子様に捧げるのだ」
「やめろ」
 葛太夫が、亜衣の繭に寄ってきた。
「やめるわけには行かぬな。それでは童子様がお目覚めされぬからな。ゆっくりと同級生が貫かれるのを見物するのだな」
「おのれ」
 痺れて言うことを効かない躯を必死に揺するが、繭が揺れるだけだ。
「無駄だ。ふふふ」
 葛太夫が、柱に歩を進めようとしたとき。
「待て」
 亜衣が、太夫を呼び止める。
「なんだ」
「私、私が変わっても良い」
「ふむ。確かに天津亜衣には、童子様も恨みをお持ちだろうからなあ。それにしても、自らの指では物足らず、童子様に貫かれたいとはなあ」
「ちっ、違う。私は美和ちゃんを助けたいだけだ」
「そうか、それではだめだな、自ら望まねば」
「何だと」
 太夫は、下卑た微笑みを浮かべた。
「今から、我が申すことを、その通り言えば考えぬでもない」
「だめよ、おねえちゃん。私が替わりに」
 太夫が麻衣の繭に近づく。
「おまえは望むか?」
「だめだ、麻衣。わかった葛太夫、何でも言う」
「良い覚悟だ」
 太夫は亜衣の繭に傍らに立ち、何事か亜衣に耳打ちした。
「そっ、そんなこと言えるか」
「ならば、麻衣でも、あの女でも、どちらでもかまわぬがな。はははは」
 くっ。亜衣は面差しを俯かせつつ、怒りを噛み殺し、決断した。
「わかった。言う」
「何時でも良いぞ」
 亜衣は、震えながら口を開いた。
「私、天津亜衣は、天神子守衆宗家嫡流でありながら、生来の・・・」
「どうした、続けよ」
「生来のい、淫乱で、今も吊るされながら、牝芯を弄り、しとどに濡らせております」
「それで?」
「本当は男狂いの私ですが、いつも無理して、男嫌いを装ってきました。しかし、もう我慢できません、ああ・・・」
「声が小さい」
 くう。亜衣は真っ赤になり涙を流す。わなわなと唇を振るわせながら続けた。
「ああ、すいません。あ、あの鬼夜叉童子様のたくましいモノで亜衣の孔を貫いて下さい。そして、ぐちゅぐちゅに犯し抜いて、女の歓びを与えて下さいまし」
 亜衣は言い終わると、がっくりとうなだれた。
「おねえちゃん」
 麻衣は見るに堪えないと言った面持ちで、涙しながら顔を背けた。
「聞きましたか、大王様。女子高生の身で、犯し抜いてとは、とんだ巫女もあったものですな。この淫売め、姦婦め。あきれて物も言えぬは。はははは」
 自分で言わせた癖に。なんたるいやな奴だ。しかし、ここで抗弁したら、恥を忍んで淫語を口にした意味が失われる。亜衣は、ようやく思い立ったように顔を上げ、きっと太夫を睨み付ける。
「確かに、言われた通り言いました。美和ちゃんを助けてやって。頼む」
 太夫の下卑た口元は、してやったりと開いた。
「だめだな」
「なっ、なんだと。言われた通り言ったじゃないか」
「考えても良いと言っただけだ」
「わっ、わかった。もう一度言う。別の言葉でも何でも言うから、だから」
「だめだ、お前には資格がないのだ」
「資格?」
 亜衣は驚愕で顔を歪める。
「お目覚めの儀には、不通女を捧げねばならぬ。つまり、お前や麻衣の女淫は使い古しだから、捧げ物にはならぬのだ。ははは」
「使い古し・・・。貴様。初めから・・・騙したな。卑怯者め」
 亜衣は、悔恨の涙を迸らせた。
「何とでも言え、淫乱女に何を言われても堪えぬわ。では始めるとしよう」
 葛太夫は、像の前に立ち印を結ぶ。
「怨吉里吉里婆娑羅、亜魔羅運乾蘇把禍。亜魔羅乾蘇把禍。怨」
 気合いと共に、ロープを引きほどき、ゆっくりと緩めてゆく。
 むーーっ。鼻腔から悲鳴を漏らしながら、美和が暴れようとするが徒労に終わる。
「やめてえ」
 亜衣達が交互に叫ぶも全く無視。ついに、石の蛇触手が美和の陰唇に触る。蛇の太さに陰裂が無理矢理広げられる。そのとき、太夫はなんとロープを放した。
「むぅーーーーぐぅ。」
 姉妹は、ずぼりという音を聞いた気がした。ロープに作った結び目のこぶが滑車に填り美和は五寸ほど落ちて止まった。女淫が完全に開ききり、蛇触手をくわえこんだ。美和は全身を振るわせると、がくりとうなだれた。痛みとショックで失神してしまったのだろう。
 蛇触手を飲み込んだ境目から、紅い光が一筋、二筋と垂れてゆく。それが像の頭に達したとき、像全体がぼうと青い燐光を放ち出した。 



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