淫獣聖戦 偽典 「繭地獄」 12

 葛太夫は、鬼夜叉童子の像に一礼すると、ロープの端を引っ張る。ずるっと美和の女陰から蛇触手が抜け出た。鮮血が太股を滴る。
「天神学園は巫女を養成するというが、ようやく三人目。いや、亜衣と麻衣も入れれば、五人でようやく一人の処女。落ちたものよの」
 美和を引きずり下ろすと、顔を三度叩き渇を入れるが反応しない。
「ふむ、しばらくは使い物にならぬか」
 ぺたぺたと、太夫が歩いて麻衣の繭の前にやってきた。そばに落ちていた、麻衣の薙刀を手に取ると、頭上に振りかぶる。斬られる、麻衣はそう思った。
「やめろ」
 亜衣が叫ぶ。しかし麻衣は、恐怖で声すら出ない。 
 一閃。
 何事も起こらない。と思いきや、まもなく繭に縦一文字の切れ目が浮かび上がる。水圧の掛かる下部からちょろちょろと皇水が漏れ始めた。さらに数秒後めきめきっと音を発し、今度は盛大に繭が破れた。皇水があふれ、麻衣も落下する。
「ふむ、淫売といえど骨まで溶かしては興ざめだからな」
「麻衣、麻衣。大丈夫?」
 床に零れた皇水が、しゅうしゅうと音を立て、白煙を立て始める。麻衣は俯せに倒れ伏した。無論天神軍神装束はおろか、聖なる羽衣も無く一糸纏わぬ姿だ。よく見れば首から下の体毛は全て溶けてしまい、皇水に濡れ滑光る素肌は妖艶な光輝と翳りを映す。
「麻衣」
 再びの亜衣の呼び声に、反応するように、麻衣は震える。四肢に力を入れて踏ん張ろうと思っているのだろうが、それもままならず、生まれたての仔馬よりも無様な態をさらしている。
「ううっ、脚が・・・痺れて」
「起て」
 葛太夫が命じても、事態は好転せず、ずるっと滑り仰向けに倒れる。あるべき陰阜の飾り毛もなく、むき出しの陰裂まであからさまとなってしまう。太夫は、しびれを斬らし、麻衣の頭を、大きな掌で掴むと無理矢理釣り上げる。そのまま、ひたひたと歩き出した。「どこへ連れて行く」
「心配するな、すぐお前の番が来る」
 そのまま何匹かの邪鬼を引き連れ、奥の院を出て行く。
「鬼麿様」
 残された少年を呼んでみたが、身動き一つせず返事もない。そうこうしているうちに、また痒みがぶり返してきた。
「くっ。はああああっん。あっん」
 もはや歯止めも効かず、自ら慰めてしまう。情け無さに歯噛みしながらも、貪ってしまう。
 数度極めた頃、麻衣を連れた葛太夫が戻ってきた。麻衣は一人で歩いてくるが、湯気を上げつつ寒そうに震えている。口を塞がれ、頭を落とした姿は絶望に打ち拉がれた風情を漂わし、上体を髪触手で後ろ手縛りの型に括られた様は、陰の美と言うに相応しい。乳房は上下と中央に張られた触手で括り出され、ぴんと立った乳首と合わさり妖艶さをいや増している。麻衣は躯も柔らかいのか、後ろ手に回した腕が交差する、所謂高手小手になっている。最近体型を変化させた皮下脂肪が、若いながら縄が似合う躯にしている。
「麻衣」
 ゆっくりと首を振っただけで、太夫に引っ立てられてしまう。丹の丸い柱に背中を付けられると、さらに髪触手で結わえ付けられてしまった。今度は亜衣の繭の前に立つ。手には再び薙刀が握られていた。
「ひっ、一思いに、それで突け」
「まだ強がりが言えるか。むん」
 十数秒後、亜衣は繭を脱して床に這っていた。反撃はおろか、上体を起こすのもままならない。
「くっそ、いっそ殺せ」
「ああ、殺してやるとも、死ぬよりも辛い目に遭わせてからな」
 太夫は、邪鬼に床を洗っておけと命じると、亜衣を同じように引き立て、外に出る。そこには井戸があった。傍らに邪鬼が盥とといくつかの桶に水を溜めている。そこに、ざんぶと投げ込まれた。
「ううっ。あっああ」
 鬼獣淫界の井戸も同じなのか、気温から十度程低い。普段の水垢離で鍛えているので、さほど苦痛にならないかというとそうでもない。かぶるのと浸かるのでは随分違う。這い出ようと足掻くも思うに任せない。そこへ。頭上から奔流が襲う。これが数度続いたかと思うと、突然釣り上げ、踏み石の上に落とされた。
「ああ・・・。ああっ」
 歯の根も合わず、大きな震えが来る。しかし、冷たさで幾分感覚が戻ってきた。ただもう逆らう気力は失われ、へたったまま涙を流す。脇から手を入れられ、無理矢理立ち上がらされると、一丈ほどもある白布で、体を拭かれた。冷たさから解放されると、どくどくと動悸が上がり、身体が火照りだした。
 その次は、縛りだ。もはや手向かいできないと観念した亜衣は、声も出さず無抵抗だ。おそらく麻衣もそうだったのだろう。まず胸の上下に触手を打たれ、胸前から首を通して後ろ手に結わえられる。ぐっと締められると乳房が括り出され一回り大きくなったような気がする。そこで高手小手に縛られ、後ろ手縛りの出来上がりとなった。好事家は縄化粧と呼び、それが女の一番美しい姿と言うが、門外漢もこの淫靡な亜衣の様を見れば賛同せずにはいられなくなるだろう。
「行くぞ」
 枯れ果てた思った涙が、牽かれ者となった亜衣の頬を熱くした。



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