淫獣聖戦 偽典 「繭地獄」 10

「おおう。大王様も。だいぶん興奮されたご様子。しかし、この歳の御姿では、精を戴くことは叶いませぬなあ。かと言って真の御姿を顕されては、この太夫の手にも余ります。この上は」
 太夫は振り返り、鬼夜叉童子の像に近づく。傍らの高坏に手を伸ばすと、札を取り上げた。すうっと、手が回り鬼麿の額にそれを貼り付けた。そして印を結ぶ。
「怨、吉里吉里・・・・・鬼獣淫界の主鬼夜叉童子の名に依りて・・・・阿毘羅吽欠裟婆訶・・・喝」
 うう。鬼麿が鼻で呻く。どうしたことか、骨がきしむ。節々が痛む。筋肉がまるで他人のように痙攣し震える。すると体が青白く発行しだした。なんらかの力場が生まれたのか、邪鬼達を弾き飛ばす。しかし、鬼麿は余りの痛みに、思わずへたり込み、床に蹲ってしまう。そうやって耐えていると、やがて、葛太夫の詠唱が止んだ。怖々目を掛けると、変化した身体が見える。手が腕が、少し前の自分とは違う。明らかに大きい、ごつい。粘液も何処へ行ったのか、口が開く。
「なんだ、これは」
 そう言ったが、耳を疑った。黄色い声ではなく野太く低い。思わずのどに手を当てると、突起が手に当たる。喉仏だ。はっとして、視線を下げると、男根が屹立している。以前のように皮など被らず完全に剥けきって、隆々と天を突いている。信じられないほどの充実感だ。
「麿はどうなったのだ」
 思わず、葛太夫に問い掛ける。
「淫魔大王様は、天神の企てに依りまして、成長が著しく遅れております。それでは射精できても身籠もらせるには至りませぬ。そこで、暗黒邪来の力を借りまして、少し歳を取っていただきました。まあ一時的にではありますが」
「歳をとっただと」
「そうです。丁度、亜衣、麻衣と同じ歳でござります。何時でも種付け戴けます」
 はっとなって、姉妹の方を見る。どちらも苦悶の表情を浮かべつつ、深く熱い息を吐きながら、体を捩らせている。思わず、また陽根に力が漲る。目を瞑り、自らの野心を祓う。
「く、くるしそうじゃ。二人を放してやれ」
「これはしたり、亜衣と麻衣は歓んでいるのです。自らの女淫を弄くり回し、随喜の涙を零しておるのでございます」
 麻衣は、はっはっと短く息を付きながら、浅ましく女啼きを迸らせ、陰部をまさぐっている。亜衣は、震える手で胸と女淫を塞いでいるが、断続的に白い喉を見せ顎を突き上げる様は、心ならずも快感を貪らずには居られない、そう言う状況に追い込まれている。ついぞ流したことのない、涙を絶え間なく零している。まあ零しているのは両の目だけではなく、陰裂もしとどに濡らせているだろう。
 鬼麿の目にも、そう見えた。しかし。
「放してやれ、放してやれというのが聞こえぬのか」
「これは、困りましたな。如何に大王様の仰せとは申せ、鬼夜叉童子様、お目覚めのみぎりまで、鬼獣淫界のことは、この太夫に任されております。勝手は通りませぬぞ」
「だまれ」
 そう言った鬼麿は、漲った力で邪鬼達を蹴散らし、ずんずんと繭に近づいて行く。
「致し方有りませんなあ」
 何かが足に巻き付く、葛太夫の髪触手だ。引き絞られるともんどり打って倒れてしまう。
「何をする」
「誠に恐れ多きことながら、大王様には童子様目覚めの儀式に、ご協力戴きます」
「やめろ。はなせ」
 があっと再び、白い粘液で口を塞がれる。
「何、ご心配には及びません。儀式が終われば、亜衣と麻衣、好きなだけ犯して戴いてかまいません。どうでしょう。童子様と並んで、姉妹を尻から抉るなど。さぞや壮観でございましょうな」
 そう嘯いたとき。
「鬼麿様に何をした」
 亜衣だ。
「ほう。まだ他人を気遣うほどの、余力があったか。さすがは天神子守衆宗家嫡流だけのことはある。ふふふ。ついでに手を止めてはどうだ」
 あからさまな揶揄だ。
「この液、この液がいけないんだ。これさえなければ。ああん」
 そう言いながらも、二度と手は止められない。
「ふん。皇水がなければどうだというのだ」
 亜衣は、数度気をやったことで、ようやく葛太夫に食って掛かるだけの余裕を得た。恐るべき精神力とも言える。
「決してこのような・・・無様な・・・姿は、ああーううん」
「何を言っても、女淫を弄りながらでは説得力がな」
 亜衣は浅い快感の漣が、何度か軽い絶頂に押し上げながらも、憎まれ口を聞くことで精神のバランスを何とか取っていた。
「はあ、はあ。・・・何とでも言え。これは液で、薬で体が狂ってるようなものだ。別に恥でも何でも・・・」
 亜衣は実際そうは思っていなかった。しかし、強弁することで、そうに違いないのだと自分で自分を説得した。なんとかその考えにすがりたかった。
「ふふふ。語るに落ちたな」
「なんだと」
 そのとき麻衣の繭がぶるぶると震えだした。繭を見ると、なんと浅ましい光景だろうか。両手でゴシゴシ・・・そう表現するのがふさわしいほど、麻衣は荒々しく女淫を擦っている。もはや、淑やかさや女の慎みなど、昇華してしまっていた。あっあっと生臭い息を吐きながら、あえぐ姿は、もはや女子高生には見えない。
「ああーーああ。いっちゃう。いっちゃうの。ああーーーっ、イクぅ」
 麻衣は数秒間歓喜の表情を湛えながら伸び上がった。無色なはずの皇水が黄色く染まる。そして糸が切れたように、面を伏せた。手も止まっているところを見ると、気を失ってしまったのだろう。
「失禁して果てたか」
「麻衣っ」
「ふふふ。麻衣の方は素直でいい。おまえのように弁が立つだけでは、物の役には立たぬ」
「貴様」
「ああ、先程おまえを歓ばせるために、わざと嘘を言った。実は皇水には痒みを催す効果はあっても、催淫効果などはない。おまえは気を遣りたかっただけ。その格好の言い訳を与えれやれば、欲望をむき出しにして簡単に食いつきおる。男嫌いを気取っていても、結局生まれついての好色。淫乱女だ。はははは」
「うそだ、うそだ・・・そんな馬鹿な。そんな、あ、あ、護符が、護符が。ああああ。だめ。だめなのに。ううん。ああーーーーーっ」
 亜衣は、滂沱の悔し涙を流しながら、一際高い女啼きを轟かせて失神した。もう逃げるしかなかったのだろう。そこにしか心の平安がなかったのだから。
「ふふふ。大王様。あの亜衣が絶頂してしまいましたぞ」
 葛太夫が振り返る。
「なんと。大王様も気をやってしまいましたか」
 成長した鬼麿は震えながら丸まって横臥していた。床に盛大に放った白い精をのたくらせて。
「見るだけで出してしまわれるとは、少々・・・ふむ床に零してしまわれては、これは使えませぬな。やや、目論見が狂いましたが、何の。そのお歳ならば、いくらでもつるべ打ちが効きましょう。手順を入れ替えると致しましょう。それ、女を引っ立てよ」



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